祖先型設計法による耐熱性タンパク質の創出


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産業利用に有利なタンパク質を開発するうえで、タンパク質の耐熱化設計は重要な課題である。タンパク質を耐熱化するために、 立体構造を参考にしたS-S結合の導入、分子表面へのイオンペア、イオンペアネットワークの導入、分子内部の疎水性の増大、 サブユニット間相互作用を強化するアミノ酸置換の導入などの方法が提案され、実際に試されてきた。しかし、このような耐熱化 法は必ずしもすべてのタンパク質の耐熱化に有効なわけではなかった。一方、我々は相同タンパク質のアミノ酸配列の比較だけに 基づいて耐熱性タンパク質を設計する方法として祖先型設計法を開発した。祖先型設計法は、祖先生物が(超)好熱菌であっ たことから、祖先生物が持っていたタンパク質も耐熱性を有していたはずである、という考えに基づいている。実際に、いくつかの好 熱菌酵素について、進化系統解析により推定した祖先型アミノ酸を、アミノ酸置換として野生型酵素に導入することでさらに耐 熱化できることを明らかにした。さらに、配列全長が丸々推定した祖先型アミノ酸であるタンパク質を合成したところ、好熱菌酵素 と同等かそれ以上の耐熱性を有するタンパク質の合成に成功した。
 今後は、この祖先型設計法を用いて、産業に利用可能な多くのタンパク質の耐熱化設計に取り組む予定であり、すでに、リグ ニン分解酵素等を標的として選んでいる。


関連文献

赤沼哲史
祖先型設計法を用いた耐熱性タンパク質の配列探索
生物物理 307 128-133(2013)

Akanuma S, Nakajima Y, Yokobori S, Kimura M, Nemoto N, Mase T, Miyazono K, Tanokura M, Yamagishi A.
Experimental evidence for the thermophilicity of ancestral life
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Akanuma S, Iwami S, Yokoi T, Nakamura N, Watanabe H, Yokobori S, Yamagishi A.
Phylogeny-based design of a B-subunit of DNA gyrase and its ATPase domain using a small set of homologous amino acid sequences
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赤沼哲史、山岸明彦
好熱菌のタンパク質はなぜ熱に強いか
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