好熱菌由来耐熱性酵素の低温高活性化




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 個々のタンパク質は、それぞれ独自の極めて正確で効率的な機能を発現する。特に酵素は、無機触媒と比較して特異性が高く、 高効率な触媒作用を示す。よって、酵素の産業利用は、低エネルギー化、低コスト化の切り札として期待されている。しかし、自然に 存在するタンパク質や酵素が、必ずしも我々が欲する性質をすべて兼ね備えているとは限らない。たとえば、多くの酵素は熱に弱いと いう弱点がある。一方、好熱性細菌が持つ耐熱性酵素の多くは通常の温度では活性が低く、十分な触媒活性を引き出すには 高い反応温度が必要である。しかし、反応槽の温度を上げることは、それだけ余分なエネルギーを必要とし、酵素利用の利点で あるはずの低エネルギー化の効果を相殺してしまう。つまり、酵素の産業利用を目的とした場合には、高温に強く、かつ低温でも十分な 活性がある、理想的な酵素を創り出すための技術開発が必要となっている。
  生物は地球上の至る所に生育している。そのなかには、我々が足を踏み入れることもできない高温環境も含まれ、そのような場所 には好熱菌が生育している。好熱菌が持つタンパク質は非常に高い温度でも変性しない。この高温にも耐えるという性質は工業的 応用の点で魅力的であるが、反面、穏和な条件下(たとえば常温)では活性が低いという欠点もある。この欠点を克服するために、 好熱菌酵素の低温(常温)適応化を行い、高温に強く、かつ低温でも十分な活性がある、とびきり理想的な酵素を「進化工学的手法」 により創り出す。


関連文献

Sugii T, Akanuma S, Yagi S, Yagyu K, Shimoda Y, Yamagishi A.
Characterization of the low-temperature activity of Sulfolobus tokodaii glucose-1-dehydrogenase mutants
J. Biosci. Bioeng. 118(4), 367-371 (2014)

赤沼哲史、山岸明彦
進化分子工学を利用したタンパク質分子育種技術
「進化分子工学 -高速分子進化によるタンパク質・核酸の開発-」、エヌ・ティー・エス、343-353 (2013)

Hayashi S, Akanuma S, Onuki W, Tokunaga C, Yamagishi A.
Substitutions of coenzyme-binding, non-polar residues improve the low-temperature activity of thermophilic dehydrogenases
Biochemistry 50, 8583-8593 (2011)

Sasaki M, Uno M, Akanuma S, Yamagishi A.
Random mutagenesis improves the low-temperature activity of the tetrameric 3-isopropylmalate dehydrogenase from the hyperthermophile Sulfolobus tokodaii
Protein Eng. Des. Sel. 21, 721-727 (2008)





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