RASP (Reduced Amino acid Set Protein) プロジェクト




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現存のタンパク質のほとんどは、20種類かそれに近い種類のアミノ酸で構成されている。しかし、タンパク質が地球上で初めて誕生したときに、すでに20種類のアミノ酸によって構成されていたとは考えにくい。進化は、単純なものからより複雑なものへと向かうとすれば、初期のタンパク質は20よりも少ない種類のアミノ酸で作られていただろう。つまり、初期には現在よりも少ないアミノ酸種からつくられたタンパク質が機能していたと推測できる。もしそうだとすると、次のような疑問が生じる。

最低限の安定性と機能を保持した程度のタンパク質の立体構造形成には、20種類ものアミノ酸は必要ないのではないか?

もしそうだとしたら、いったい何種類のアミノ酸が必要なのか?

環境への適応のため、進化の過程を通して高度に特殊化した機能を持つ、現在のタンパク質には、やはり20種類の アミノ酸が必要なのではないか?


上記の疑問は考えてみることはあっても実際に検証されることはほとんどなかった。しかし最近、このようなタンパク質の 極めて基礎的でかつ難解な問題を解くための手法として、RASP、つまり、タンパク質の構造と機能を壊すことなく、アミノ酸 の種類を10種類程度にまで減らした単純化型改変体を効率よく作製する方法を開発した。そこで、実際にいくつかのRASPを 作製し、様々な物性を元のタンパク質と比較することによって、どのような物性をどの程度維持するかを明らかにすることが可能になった。 このような研究は、アミノ酸配列に含まれる立体構造形成・機能発現に関する「情報量」、それも「過剰な情報量」を推 定するための有力な手段になるばかりか、タンパク質の初期進化、特に生命誕生直後、あるいはそれ以前のタンパク質やタンパク質合成に 関する手がかりをもたらしてくれるかもしれない。


関連文献

赤沼哲史
祖先型再構成タンパク質を用いた原始アミノ酸組成の探索
生物物理 59(1)、23-25 (2019) 日本生物物理学会 J-Stage

Shibue R, Sasamoto T, Shimada M, Zhang B, Yamagishi A, Akanuma S.
Comprehensive reduction of amino acid set in a protein suggests the importance of prebiotic amino acids for stable proteins
Sci. Rep. 8: 1227, doi:10.1038/s41598-018-19561-1 (2018) Springer Nature

Akanuma S, Kigawa T, Yokoyama S.
Combinatorial mutagenesis to restrict amino acid usage in an enzyme to a reduced set
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 13549-13553 (2002)

赤沼哲史、 黒田裕
アミノ酸配列に含まれる情報量の実験的検証:タンパク質立体構造構築原理と分子進化の観点からの考察
生物物理 41, 224-229 (2001)





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