研究会の歩み

 当研究会は、一九九三年に設立された。この年、瀬野精一郎氏は、『鎌倉遺文無年号文書目録』を完成させ、東京堂出版から刊行した。竹内理三先生にご報告したところ、研究会設立に話が及んだとのことである。一二月に第一回の例会が開催され、以降年間ほぼ一〇回のペースで例会が開かれて、現在に及んでいる。

 一九九八年四月には、雑誌『鎌倉遺文研究』創刊号(吉川弘文館)が刊行され、春秋二回の発刊が定着した。刊行を通じて鎌倉遺文による研究を深化させるとともに、東寺文書の未収録史料の翻刻と、白河本東寺文書の原本校合を進めてきた。

 また、一九九九年四月には、『鎌倉遺文研究T 鎌倉時代の政治と経済』・『鎌倉遺文研究U 鎌倉時代の社会と文化』(東京堂)が刊行された。この二巻では、「刊行史料整理の必要性」・「国家支配と文書」・「荘園支配と権門」・「中世寺社と経済」・「在地社会の様相」・「家系と身分」・「信仰と文化」の七つのサブテーマのもとに、二九本の論文が載せられ、鎌倉時代の研究を新たな段階へと導いた。さらに、本年五月には、『鎌倉遺文研究V 鎌倉期社会と史料論』が刊行される。この巻では、「鎌倉期の政治と法」・「列島社会の在地論」・「史料論の多様性」というサブテーマのもとに、一七名の執筆者が歴史事実の解明を目指す。

 以上のような状況を踏まえて、本年三月二三日の第七九回例会では、シンポジウム「鎌倉遺文研究の現在」を開催し、瀬野精一郎氏から「竹内理三先生と鎌倉遺文研究」という基調講演をいただき、現段階における鎌倉遺文研究会の課題を明らかにすることができた。瀬野氏が提示した『鎌倉遺文』を史料的に究明すべき点は、十一点に及ぶ。(A)未収録文書の抽出、(B)合併文書の抽出、(C)無年号文書年号比定の再検討、(D)収録重複文書の抽出、(E)文書名の再検討、(F)人名比定、傍注の再検討、(G)底本の再検討、(H)本文の校合校訂の必要性、(I)句読点の再検討、(J)便宜合叙文書の再検討、(K)要検討文書の抽出、である。さらに討論の過程で、「(L)典拠」が付加された。また、瀬野氏は『鎌倉遺文』に収録された文書が約三万五千点、未収録文書が推定約一万点であることを明らかにし、未収録文書三千点については目録データーベースができつつあることを報告された。今後、鎌倉遺文研究会としては、これらの課題を達成すべく努力していかなければならない。

                                     二〇〇二年四月十日


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