花田達朗研究室
ゼミナール




2008年度 花田ゼミ第三期生 卒業論文集・「はしがき」

 諸君は後世歴史に記録される年、2008年に大学4年生を過ごした。就活をし、卒論を書き、学生最後の時間を過ごした。この年、米国の低所得者向け住宅ローンのサブライムローン破綻、そして大手証券会社リーマンブラザーズの破綻を切っ掛けに世界は未曾有の金融危機に陥った。市場原理への無批判な、過度の信頼は裏切られ、資本主義という生産様式の欠陥が再び露呈し、そしてその資本主義の連鎖がまさにグローバルに広がっていることを人々に見せつけた。リーマンブラザーズの破綻の2,3日後には、日本に住む自分の近親者がその余波に直撃されたという話をゼミで聞いて、みんなで驚いた。その後「派遣切り」が繰り返し新聞の見出しとなり、「非正規労働者」の大量解雇が続き、「正規労働者」の身分も危うくなってきた。年末には日比谷公園に「派遣村」が登場した。

 われわれはいまどのような世界で生きているのだろう。さまざまな社会現象が現れては、通過していく。注目されては、消えていく。そうした膨大な社会現象の背後にはどのような仕掛けや構造があるのだろうか。そういうことを見えるような眼を養うのが諸君の所属した社会科学専修の教育プログラムの目的であった。卒論のなかには、2008年という時代状況に敏感に反応し、アクチュアルな社会問題を対象化した論文がいくつかあった。その社会現象の実際の場に自らを運び、フィールドワークという名の社会的関わりを論文のなかに取り込んだものもあった。そうした論文を書くことを通じて、われわれは社会現象を単に眺めて過ごす傍観者ではなく、この時代を生きる当事者なのだという感覚を得たのではないだろうか。

 社会とは社会関係のことであって、それは自己と多くの他者、自分とは異なったたくさんの他者が織り成す関係の織物である。その織物に織り込まれた自己をしっかりと見極めるために必要なのが「教養」である。そして一人の人間として考え続ける態度である。諸君がが卒論で感じ取った感覚をベースに、この社会のなかで、埋没することなく、粘り強く眼を開いて生きていってほしいと思う。


 2009年1月17日 卒論公開審査会の日に

         
                                                     花田 達朗


 
2008年度 花田ゼミ第三期生 卒業論文集・題目一覧

井川 大輔   【フットボールの力と社会への引用】

石木 碧     【結婚を選択しない若者たち
               〜「恋愛スタイル」を切り口に見る「現代社会」〜】

井本 香織   【都市における「個室化現象」とネットカフェ難民
               〜現代都市と若者に関わるー考察〜】

大下 直哉   【まちづくるとハレ、地域振興における相互の交接点】

大谷 具史   【地域コミュニティの希薄化と『モンスターペアレント」の出現
               〜新興住宅地浦安を例に〜】

長田 洋平   【美味しさの社会学
               〜なぜ、日本人はラーメンが好きなのか〜】

川田 洋平   【地球温暖化に脅かされる雪国の暮らし
               〜対策の検証と計画の提案〜】

小山 聡太   【ネット心中に見る生きづらい時代のアイデンティティの形
               〜仮想現実という名の理想郷〜】

榊原 菜々   【持続可能な世界遺産の実現
               〜オリンピック化する世界遺産、マスメディアの機能不全を超えて〜】

實川 祐美   【少年事件報道のあり方
               〜少年法は表現の自由を制約しているのか〜】

津村 麻友   【読者モデルブームから読み解く消費者心理
               〜成熟消費社会における同質化と差異化のジレンマ〜】

戸塚 絵莉子  【Web2.0時代のコミュニケーション
               〜変容する「つながり」観〜】

中尾 圭佑   【「萌え」の大衆化とテクノロジーの変遷】

生田目 翔   【北朝鮮による拉致問題を考える
               〜解決を阻む元凶とは〜】

沼野 真梨子  【就職活動にみる現代若者論
               〜不安な群集〜】

星野 巨衣    【ポリフォニー映画としてのドキュメンタリー】

宗藤 美奈    【「貧困」の想像力
               〜NPO法人自立支援センター<もやい>の現場から〜】

森 明日香    【「ジェンダー・バックラッシュ」以後のテレビドラマに見るジェンダー観
               〜「進化した女性像」の行方〜】

和田 朋也    【「受益圏・受苦圏」論で考える原子力の今】

小林 剛     【メディア文化がもたらす対話の可能性
              〜台湾における「日本」を例に〜】












2007年度 花田ゼミ第二期生 卒業論文(CD-R版)が完成しました。
ここに「はしがき」と卒業論文題目一覧を掲載します。



2007年度 花田ゼミ第二期生 卒業論文集・「はしがき」

 第2期生の卒業合本は第1期生のそれと比べれば薄い。6人しかいなかったからである。これにはやむを得ぬ事情があった。その人数のせいだったのか、正直いって、ゼミの議論は活発だったとはいえない。討論なりディスカッションというものがどれだけ実現できたのか、心もとない。モノローグが多かった。相互の討論のエンジンがいつかかるのかと待っていたが、ついにエンジンはかからなかったといってよい。これはほんとうに人数のせいだったのだろうか。私は人数のせいにすることはできないと思う。私が学部のころに出ていたゼミは5人だったが、我先に発言の機会を狙った。

しかし、である。それぞれに卒論は書いた。そこでやっと苦しんだ。おそらくその段階でほんとうのゼミは始まったのかもしれない。自分と討論しなければならなかった。そして、文章にまとめあげた。いま、頭のなかはどうなっているだろうか。卒業するときになってはじめて、ああー、もっと深く真っ向から討論に関わればよかったと思っているのではないだろうか。「その時」という時は待たない。

しかし、である。時は待たないという認識を今後に活かしてほしい。その時、その時と全力で関わっていくべきではないか。もしそういう認識を諸君がもったとしたなら、それが卒論を書くことを通じて得られた大きな成果であろう。「その時」と真摯に関われば、それまで自分の知らなかったものが向こうからやってくる。それが新しい認識であれ、新しい知見であれ、新しい旅であれ―。これから多くの機会のなかで、諸君の健闘を祈りたい。

2008年1月22日

                                                           花田 達朗



2007年度 花田ゼミ第二期生 卒業論文集・題目一覧

野原 裕史  【未来を拓く投票活動〜一票の価値〜】

岩田 巧   【新しいテレビ局―崩壊する既得権益と新しいビジネスモデル―】

花田 耕佑  【何故ペンは剣に屈したか〜戦前戦中の報道から〜】

三木 真一  【ケータイ小説にみる、読書の電子化】

渡辺 洋平  【子どもに根ざした教育改革プロセスの構築へ
                  〜現在の教育改革プロセスにおける諸問題の検証〜】

佐野 静穂子 【ストリート文化の歴史的意義を探る〜ストリートからのメッセージ〜】












2006年度 花田ゼミ第一期生 卒業論文集(CD-R版)が完成しました。
ここに「はしがき」と卒業論文題目一覧を掲載します。



2006年度 花田ゼミ第一期生 卒業論文集・「はしがき」


 ここに収録された卒論を執筆した学生諸君は、まれにみる数奇な運命をたどった。2年生の秋に林利隆さんにゼミ生として採用され、しかし彼が病に侵されたため3年生になってゼミの担当者は変わった。林利隆さんが依頼した林香里さんである。3年生の間に、林利隆さんは再発したガンのため9月16日に不帰の人となった。無念の最後だった。彼の後任として私は早稲田にやって来た。時期的に急だったため、学生諸君に伝えられたのは3年生も終わりだった。そして、2006年4月から私と学生諸君の「卒論の旅」は始まった。

 学生諸君はゼミという旅の案内人を3人もったことになる。それが良かったか悪かったかは学生諸君自身が判断するだろう。しかし、私は人生のなかで多くの人に出会うことはいいことではないかと思う。出会いとは運命そのものだ。

 出会いとは卒論のテーマにおいてもそうである。自らの問題意識を抱え込み、研ぎ澄ましつつ、構えを作っていれば、テーマとの出会いがある。向こうからテーマが自分のほうへやって来る。それもまた運命的な出会いだ。

 そして、卒論を書いた。それは言葉との格闘だ。言葉が出てこずに、苦しいこともあったかもしれない。ただ、真剣であればあるほど、それは美しい格闘だ。言葉を紡ぎだし、織物を作る。それが完成したとき、自分の認識は以前の自分のものではないはずだ。経験をひとつ確実に積んだ。一回り大きくなった自分を感じるだろう。そこにこそ卒論の価値がある。

 最後に、卒業する諸君に言葉を贈ろう。これから、諸君の次の人生の旅が始まる。

                「諸君よ、紺いろの地平線が膨らみ高まるときに
                 諸君はその中に没することを欲するか
                 じつに諸君はその地平線に於る
                 あらゆる形の山岳でなければならない」

                            (宮沢賢治「生徒諸君に寄せる」より)

      

2007年1月20日

                                     

花田 達朗






2006年度 花田ゼミ第一期生 卒業論文集・題目一覧

五十嵐 隆浩  【社会部記者の精神とメディア規制の時代】

岩崎 あんり   【デリバラティブ・ジャパンを目指して〜ポーランド・モデル分析と市民の声のダイナミズム】

上田 一豪    【小さなメディアが人を動かす〜芝居のメディアとしての可能性】

打田 麻衣    【フィクション映画におけるジャーナリズム機能〜宮崎駿作品からの考察】

大島 希和子  【オタク女子の社会学〜サブカルチャーの発信源の研究】

岡田 啓示郎  【エロス的メディア論序説〜エロティックメディアのポリティカル・エコノミー分析】

奥野 真由    【今、劇場に出来ること〜社交場としての可能性】

梶原 稔敬    【メディア・リテラシーの教育実践】

粕谷 昭大    【ジャーナリストとしてのチャップリン】

鈴木 倫人    【プロ野球団経営のこれから〜地域との連携の必要性】

須藤 英一    【現代人の思想と行動〜ウチ論への自閉、カーニバルへの参加、他者の忘却】

谷口 裕美子  【現代社会と流行〜現代ではなぜ可愛い服が流行るのか】

田上 順一    【ドーピング・メディア】

千葉 裕之    【権力・芸術音楽・マスメディア〜旧ソヴィエトにおけるショスタコーヴィチの音楽活動からの
           考察】

土谷 滝     【ジャーナリズムの質と経営〜新聞社は両立できるのか】

新川 瑛子    【国民大衆雑誌『キング』と「靖国神社」にみる類似性〜メディア・イベントと物語の観点から
           の考察】

野上 慎平    【女子アナ時代とテレビ・ジャーナリズム〜視聴率から視聴質へ】

野田 枝里子  【プロ野球の新たなビジネスモデル〜スポーツ・メディア・ファンの三極構造の構築】

原田 桜     【隆盛するパブリック・リレーションズ〜PRと対峙する私たち】

廣瀬 友香    【マスメディア報道が与える株価への影響〜「ヒルズ族問題」から考える】

森 吉庸     【ナノメディアコントロール】

田中 洋平    【ニュース価値判断と検証〜「なぜ、それがニュースになるのか」という疑問:
           「秋田・小1男児、長女殺害事件」を事例として】