早稲田大学・松代連携講座

早稲田松代塾

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早稲田松代塾とは

「早稲田松代塾」とは、早稲田大学と松代早稲田協力会とが連携し、早稲田大学の教授陣により十日町市松代地域において年間を通して開講している新潟県下の社会人対象の講座です。


ご挨拶

塾長あいさつ



早稲田松代塾 塾長 平澤茂一

早稲田大学は昭和61年10月30日,松代・蒲生の地に「松代セミナーハウス」を建設・竣工しました.以来,多くの学生・教員がこの地を訪れ,セミナーハウスに宿泊してゼミ合宿・スポーツにと利用してきました.

早稲田大学には,松代の他,軽井沢追分・伊豆川奈・信州菅平・安房鴨川にセミナーハウスがあります.スポーツの菅平,海の幸の鴨川など,それぞれの特徴があります.しかしここ松代は,雪掘り・田植え・自動車部練習の他,マンドリン楽部コンサート・落語列車の開催など,年間を通じ教育・ボランティア・サークルの多彩な活動を実施し,地元の方々と交流を深めてきました.

平成21年,松代との交流30周年を記念する行事の一環として,「早稲田松代塾」を開講しました.その際開講の理念の一つとして,これからの地方の時代に向け,郷土を担う豊かな教養を持つ人材の育成を掲げています.単に興味を満たすだけの講座内容より,学問として正統で普遍性を持つ講義を主体に考えています.これは講師となる早稲田大学の教員にとっても,大学生を対象とする以上に社会との接点を意識するという貴重な経験になるのです.

開講当時私は,大学を定年退職したのを期に木戸さんから主として大学とのパイプ役を仰せつかりました.務まるかどうか不安の中,木戸さんの松代に対する熱い思いと,特に奥様幸子さんの強い郷土愛に背中を押され微力ながら努力を続けています.

地元のニーズを満たすよう大学と交渉するのは,必ずしも簡単ではありません.しかし,この地に早稲田大学の文化が根付き,少しでも地域活性化に役立つよう心がけていきたいと思っています.

松代のますますの発展を祈念しています.

主催者あいさつ



有限会社 松代早稲田協力会 代表取締役 木戸一之

首都圏一極集中の昨今、自然豊かで人情細やかな地方の役割が見直されつつあります。国土がバランスよく発展しなければ、国の将来は期待できません。そのためにも、地域づくりを自主的、自立的に進めているそれぞれの地域の人々にとって、広い視野と高い見識が何よりも大事になってきています。そこで、「学ぶ」という観点からこれを考えた時、都市に比べて地方ではあまりにもその機会が少ないことは明白です。一方、「向学心」という観点から見ると、地方では学ぶ機会が少ない分、向学心は都市よりも大きいと言えると思います。このような状況のもと、地域を担い、且つ、向学心に燃えた人々を対象に、早稲田大学の知を伝播することによってその要請に応えようと企画したのが、この「早稲田松代塾」です。 平成21(2009)年,早稲田大学の松代校地がちょうど30周年を迎えたのを機に、これを記念し今後継続していく事業として開講しました。この塾の塾長には、私の同期であり親友でもある平澤茂一さん(早稲田大学名誉教授)にお願いしました。

この塾の特長は、次の通りです。

  1. 講義の内容は、早稲田大学で行われている授業そのもの、或いはそれに近いもの(大学生または大学院生のレベル)
  2. 早稲田大学の先生が講義します。
  3. 1年間同一テーマの通年講座。当面、年間1テーマでスタートしますが、徐々に年間テーマを増やしていきます。
  4. 受講生の最小講義人数の制限はありません。

  5. 新潟県下をはじめとする多くの志ある方々の受講を主催者としてお待ちしています。


    開講の趣旨

    地方の再生は、国の喫緊の課題であり、地方が生き生きとしてこそ国の将来があることは論を待ちません。「地方の時代」はいずれ必ずやって参ります。しかし、地方創生の議論は始まったばかりであり、また、道州制など国の根幹となる施策は遅れています。 一方、国の施策を待つのではなく、私達地域の一人一人が自治意識をもって日頃行動することが今、何よりも求められます。地域を活かす取り組みに積極的に関わっていくことなどもその一つです。このように自立して活動していくためには、まず、それぞれがしっかりとした個を確立しておかなければなりません。その一助となることが、この塾の目指すところです。

    「早稲田松代塾」は、十日町市松代地域において、年間を通して早稲田大学の先生方にいろいろな分野で講義をしていただき、新潟県下をはじめとする受講生の皆さんの素養の充実を期して参ります。受講生におかれては、広い視野と高い見識を涵養していただき、併せて、それぞれが住んでおられる地域社会において、新しい時代の地域づくりに向けてそれを活かしていただくことが期待されます。

    以下、この「早稲田松代塾」の教旨を掲載します。

    以上

    教旨


    1. 来たるべき「地方の時代」に先駆け、新潟県下の人々が自らを高める学びの場として開講するのが、この「早稲田松代塾」です。
    2. 早稲田大学は、建学の理念の一つとして、学問によって社会の発展に寄与することを掲げています。 「早稲田松代塾」は、この理念のもと、早稲田大学と協力して幅広い分野で講義を行い、この地で郷土を担う人々に豊かな素養を育んでいただくことを期します。
    3. 郷土の将来は、すべて人にかかっています。人を得たこの地から、時代にさきがけ新しい郷土を模索・開拓し、広く発信しようではありませんか。


    早稲田松代塾のこれからと地方の時代

    早稲田大学が新潟県十日町市松代(旧松代町)に大学の校外施設を開設したのは昭和54(1979)年であり、今年でちょうど40年になる。今から10年前の平成21(2009)年、松代校地開設30周年を記念してスタートした事業が「早稲田松代塾」の開講であり、この塾は今年で10周年を迎えたことになる。この塾の開講の経緯については、早稲田学報2010・4(1180号)54,55頁に執筆させていただいたが、この機会に改めてこの塾の意義について触れ、これからの展望とこの塾が目指している「地方の時代」について述べてみたい。

    首都圏一極集中の現在、地方において大学が開いている社会人教育の場は少ないのが実状であるが、幸い松代には早稲田大学のセミナーハウスがあり、この環境によって、私共松代早稲田協力会が長年夢見てきた早大の先生方による社会人向け講座が30周年を機に実現したものである。開講にあたり、「早稲田大学・松代連携講座」という名称のもと、同期の平澤茂一名誉教授が塾長となってスタートしたが、開講早々から非常な盛況ぶりで、知の伝播に対する地方の渇望がこのように強く、その反面、このような機会が余りに少なかったことを改めて思い知らされたのである。早稲田大学には「早稲田講義録」を70年間にわたって発行し続けたという歴史がある。明治の時代にも、全国津々浦々に向学心に燃えた大勢の人々がいたのであり、現在もなお、その状況は変わっていない。この早稲田松代塾は新潟県下に限定されてはいるが、早稲田大学の先生方が講師として自ら遠路足を運ばれ通年で講義していただけるという、地方にとっては大変得がたい社会人教育がなされているのである。

    ところで、この塾は単なる知識の習得だけを目的としたものではない。首都圏一極集中が続く中、地方の再生は国の喫緊の課題であり、地方が生き生きとしてこそ国の将来があることは論を待たない。国も地方創生の施策を進めてはいるが、首都機能の一部を地方に分散し地方を積極的に活かすという視点には至っていない。このような状況の中、地方に根を下ろす私共としては、私共が「地方の時代」と呼んでいる時代がいずれは必ず来ると確信しているところである。それは、食住の環境、自然環境のいずれをとってみても地方の方が優れているからであるが、唯一、就業の場が少ないことが今までは超えられない障壁であった。地方の過疎化が進んだのは、正にこの原因に尽きる。しかし、今や科学技術の進歩によってそれも解消されつつあり、仕事は大都市圏であろうと地方であろうと場所を選ばない時代になりつつある。大都市圏におけるテレワーク(在宅、モバイル、サテライトオフィス)・リモートワークの普及や大災害に対する予防的、事後的措置などが、地方への人の移動を加速させることになると予想される。一方、地方においては、それに呼応して新しい形の産業を速やかに創出しなければならない。ここで新しい形の産業とは、大都市圏と連携し、次世代通信規格:5Gによって地方においても可能となるあらゆる産業分野がその対象となる。5G通信インフラが全国的に整備されることによって、大都市圏と地方との間の地理的距離が企業活動上はなくなり、近い将来、両者が一体となって地方の環境や人材が組み込まれた産業構造が新たに構築されることになる。それによって地方においても、大都市圏と連携した新しい形の産業が創出されるのである。それを担うのは、他でもない進取の精神に満ち溢れた地方の一般市民である。この市民レベルの自発的、創発的な活動こそが地方を生き生きとさせるのである。そのためには、地方の人々が知的素養を充実させ、広い視野と高い見識を育むことが必須であり、ここに地方における社会人教育の大きな意義が生じるのである。

    このような目標を定めた教旨のもと開講した早稲田松代塾は、早大の多くの先生方の熱意溢れる講義と向学心旺盛な受講生達によって大変充実した10年間を経てきた。この塾は当初、十日町市民を対象にスタートしたが、今や新潟市など遠隔地からの受講生も多く(市外は約半数)、2ヶ月に1回、3時間、定員80名の社会人が熱心に受講している。通年講座として年間を通して一つのテーマを掲げており、この10年間では、近代日本の思想と文化、日本古代史の謎に迫る、私たちにとってアジアとは何か、国際問題と日本の外交、憲法改正論議と世界の憲法、多元文化論、東洋の宗教/思想、地球の環境と資源、と大変多岐にわたっている。

    さて、これからの展望については、まず、この塾はその名が示すように十日町市松代の地で開講しているが、上記の通り遠隔地からの受講生も多い一方、遠くて通えないという声も聞かれる。そこで、新年度から県内の遠隔地における巡回講義をスタートさせたいと思っている。早稲田大学でも昔、巡回講話を行った歴史があるが、講師の先生方や私共主催者にとってはかなりの負荷がかかるため、少しずつ実現していくことになるだろう。次に、通年講座のテーマについては、ここ数年来、学部学科の先生方が学科全体をあげて全面的にご協力いただけるケースがほとんどとなっており、大変感謝申し上げているところである。当初からこの塾は、大学の講義をそのままこの地に再現することを目指しているので、学科単位でテーマを設定できれば、大学の講義の再現としては正に理想的である。テーマの選択にあたっては、これからの地方を担っていく年齢層の人々に注力していきたいと思っている。また、早稲田大学との一体感を受講生に実感してもらうために開いている大学での講義(本校講義)を今後もっと頻繁に開講していきたい。更に、これからの10年を見通すとすれば、将来、独自の施設を持つことになるが、この施設は、複数の年間テーマを掲げて常時開講している早稲田松代塾の拠点となるものである。同時にこの施設は、大都市圏と地域とを結ぶ新しい事業の拠点としても機能し、地方における新しい産業の創出をサポートするものである。

    この早稲田松代塾は、開講以来まだ10年しか経っていないささやかなものではあるが、早稲田大学の伝統のもと引き続き大学のご協力を得つつ、新潟県下の社会人教育を一層充実させ、広めていきたい。そして、この塾をベースに、大都市圏とも連携して新しい産業の創出に取り組み、地方の時代の先駆けを担うべく尽力していきたいと思っている。このような取り組みが全国規模で広まることを期待している。

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