![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
||||||||||||||||
![]() |
![]() |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() |
![]() |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
||||||||||||||||||||||
私たちが内部通報対応規程に反対する理由内部通報対応規程は「学の独立」を脅かす包括的密告制度です 早稲田の再生を目指す会
|
1.「内部通報対応規程」は、学部・大学院の自治と早稲田大学の自由闊達な教育研究の伝統を破壊し、学の独立を内部から崩壊させる恐れがあります |
「学の独立」とは、大学が国家権力等の外部からの不当な干渉に対して独立でなければならないことを意味するとともに、学部・大学院・学術院などの学内各箇所および大学の構成員(教員、職員、学生・生徒)が、外部や上からの不当な干渉に脅かされることなく自由闊達に議論や研究教育をすることによって、教育研究の質を高め学術文化の発展に寄与していくことをも意味しています。そして、学部・大学院・学術院など、各箇所の自治は「学の独立」を実現するための基本中の基本です。 最近の早稲田大学では、「学の独立」とは正反対に本部の統制色が強まりつつあることを否定できません。たとえば、2006年夏に文学学術院のある教授が、査問等の手続きを経ることなく、訓戒処分を受けるという不当処分事件がありました。その処分に際して本部の担当理事からの圧力があったことを示唆する発言を、当時の文学学術院長が述べたと、その教授は語っておられます。また、今回の内部通報規定の制定に際しても、大学本部は深刻な手続き違反を犯し、私たちはそれに対して強く抗議いたしました。 今回の内部通報対応規程案のような杜撰で統制色の強い制度が実施されてしまうと、学部・大学院等の自律性がますます損なわれていきそうです。私たちはそのことを何よりも恐れます。そして、その結果学内の重要案件を本部が一方的に発案し、十分な審議や意見交換の機会などもなく、学部側にはほとんど何も知らされないままに新しい方針や案件が決まってしまうといったことが、現在よりもずっと頻繁に起こるようになる可能性があります(現在でも「本部主導」の風潮はどんどん強まっております)。 もちろん大学といえども社会の一員ですから、無際限の自由が許されることはありえず、一定の社会的規制に服さなさなければならないのは言うまでもないことです。しかし、教育研究の発展のため、学内には可能な限り最大限の自由が確保されていなければなりませんし、自由な環境の中で、箇所間、あるいは教員間で、建設的な切磋琢磨が行われることはとても大切なことです。抑圧の中で学問や文化は萎縮してしまいます。自由と独立が学問や文化が大きく花開くための基礎的条件であることは、歴史が証明していることです。 内部通報制度の下で、教職員は自分の私行や、教室等での言動、あるいはちょっとした過失などが、同僚や学生などによって通報されてしまうかもしれないという不安を抱えながら、日々の教育研究を行っていかざるを得ないでしょう。もちろんたとえ通報されたとしてもすべてが本格的調査や懲戒の対象になるわけではないでしょう。しかし、「通報されるかもしれない」という恐れ、それ自体が教職員を萎縮させてしまうのです。 多少の失敗やフライングは許すという寛容さ、大らかさが、125年間にわたって早稲田に活力をもたらし、多彩な早稲田人を生み出す原動力になってきたのです。そのような自由で伸び伸びした早稲田の伝統が、創立125周年が間近ないま徹底的に破壊されようとしていることを、私たちは危惧しています。 |
2.「内部通報対応規程」は、教員と学生・生徒間の教育的信頼関係を破壊し、伝統ある早稲田教育を崩壊に導く恐れがあります |
内部通報規程改正案(12月1日に学術院長会で発議されたもの)では、被通報者(「密告される人」)から学生・生徒は除かれましたが、通報者(「密告する人」)は、「教職員等」と「等」がついていますので、相変わらず学生や生徒による通報は可能です。内部通報制度と「大学教員の勤務に関する規程」(以下、「勤務規定」)や、第4項で問題点を説明する服務規程などの学内規程等が連動すると、実にさまざまな内容の通報が可能になってきます。たとえば、 「**先生は開始時間ぴったりに授業を始めない」 「○○先生は休講しても補講しない」 などです。 学生によるクレームは、形の上では先生への批判のようにみえても、全てを額面通りに受け取れないことがあります。つまり、学生自身が抱えているさまざまな悩みや、自分の人生上あるいは人間関係上の問題、さらにはカリキュラムや大学の管理体制への不満等々が、特定教員への不満や批判などの形で顕現することは、経験上よく見受けられることです。特に、近年、うつ病やその前期症状などをはじめとするメンタルな問題を抱えた学生が増えてきていることは、教育の現場で日々学生と接している教職員ならば誰でも感じていることでしょう。 これまでも学生がその種のクレームを学部や大学院に対して行うことはよくありました。その場合に学生担当教務主任などを中心に、教育上の配慮を意識しながら問題解決が図られてきました。たとえば、学担主任は、訴えてきた学生との面談でむしろ問題の本質はその学生のメンタル面にあると判断すれば、親御さんなどと連絡を取りながら、適切な精神的ケアを施し、学生と共に彼ないしは彼女が抱えている困難の解決を図ってきたのです。 内部通報制度が発足して、今例示したような学生が、見かけ上は規約違反を訴える形で、通報窓口に訴えてきたらどうなるのでしょうか? 通報窓口は教育にかかわる組織ではありませんし、窓口の担当者のほとんどは事務職員や弁護士など、教育を本務にしている人々ではありませんので、そこでの適切な教育的配慮は期待できません。 仮に窓口担当者が教育的対応のためにその学生の所属学部の学生担当教務主任や指導教員などに連絡を取ろうとしても、規程第23条で窓口の担当者等には厳格な守秘義務が課せられていますから(そしてそれを課すことは必要なことでもあります)、教育上の配慮で彼らが当該学生について学担教務主任や指導教員等に連絡を取ることは許されていません。最悪の場合、内部通報窓口の対応が冷たいものだと感じた学生が孤独感を強めて自殺や自傷行為に及ぶ、といった恐れもないわけではありません。 このような問題が生じ得るのは、第5項で詳しく述べるように本来労働者の雇用関係(つまり経済的関係)を前提に構築される内部通報制度の枠組みの中に、教育的関係で大学や教職員と結ばれている学生を含めようとすることに、そもそもの無理があるからなのです。 |
3.「内部通報対応規程」は、弱者に厳しく、強者に甘い、人権侵害の制度です |
この制度の中核に位置する組織である「内部通報対応委員会」の委員は、総数10名のうち7名が実質的に総長・理事会任命もしくはそれに準ずる方法で選出されます。 (規程第3条)。(注1) このような構成の委員会が、公正に機能することを私たちは果たして期待できるのでしょうか? 仮に総長や理事会等に関する通報があった場合、この委員会の下ではたして通報は適切に処理されるのでしょうか? その一方で、この制度が出来ると一般の教職員は、自分が突然「密告」の標的にされる不安を抱えながら仕事をしていかなければなりません。つまり、この制度は一般教職員などの「弱者」に厳しく、総長・理事などの「強者」に甘い制度なのです。 ・人権という面からも、今回の内部通報制度にはさまざまな問題点があります。とりわけ、調査委員会の権限として、被通報者(「密告された人」)の利害関係者との接触禁止、保全を必要とする場所への接近の禁止が規定されていますが(13条3項。なお、14条3項にも同種の規定があります)、どのような人もしくは場所への接触や接近を禁止しているのかが不明確であり、嫌疑だけで調査を受けている被通報者の人権(教育研究の自由・プライバシー)侵害になる恐れが多分にあります。 (注2) 調査結果への不服申し立て制度(15条)も不適切です。被通報者は調査結果への不服申し立ての権利は一応持っています。しかし、その申し立ての妥当性を判断するのは、何とその調査結果を出した調査委員会自身なのです。調査委員会が、自分が出した結論の誤りを認める可能性は実際上低いでしょうから、この制度の下では、被通報者はいったん調査委員会で「クロ」と結論付けられたら、たとえ冤罪であろうともそれを覆す手段は無いに等しいのです。 |
4.「内部通報対応規程」によって、教職員のプライバシーが衆目にさらされる恐れがあります |
12月1日の学術院長会で付議された改定案では、「通報対象事実」に、「本学の教育研究活動または運営に係る法令および本学の規約(努力義務に係る規定を除く。以下同じ。)に違反する事実」(第2条第5項)と、「本学の教育研究活動または運営に係る」という限定が付きました。 しかし、この限定は形式的なものでしかありません。改定案の下でも、「教員の服務に関する規程」(以下「服務規程」)などの大学の内部規約との連動で、実際にはプライバシー等にかかわる事柄も通報できるのです。 たとえば、服務規程第6条には、「教員は、正当な理由なく、大学の名誉または信用を失墜させる行為をしてはならない」とあります。ですから、 「**先生は、長期にわたって不倫をしているので、これは大学の名誉を傷つける」 「○○先生は、テレビで総長や大学を揶揄するような発言をしたので、これは大学の信用を傷つける」 というような理由での内部通報が可能なのです。 その結果、各事案の処理プロセスにおいてプライバシー等の情報が、通報窓口の職員や内部通報対応委員会の委員たちをはじめとする、多数の関係者の目に晒される可能性が高まります。「人の口に戸はたてられない」というたとえ通り、いくら守秘義務などの縛りを課したとしても、プライバシー情報等が本人の知らないところで密かに噂され、次第に「知らぬは本人ばかり」になるというリスクは、経験上避けることができないものと思われます。 |
5.「内部通報対応規程」は、外部通報制度と内部通報制度を混在させた欠陥制度です |
一般に内部通報制度は、文字通り組織の「内部者」による通報制度です。ですから、たとえば企業における内部通報制度の構築にあたっては、「内部者」である労働者と取引業者などの「外部者」は明確に区別して考える必要があると言われています。実際、「公益通報者保護法」では、公益通報を行う者(通報者)は労働基準法第9条 に規定する「労働者」に限定されています。 (注3) (注4) 要するに一国の法律が外国に及ばないのと同様、雇用関係で縛られている労働者に適用すべきルールの効力を、企業の外部者にまで及ばせようとするのは無理な話だということなのでしょう。実際、いくら内部通報のルールで通報者の保護をうたっても、組織の外部者まで実効性のある形で保護するのは難しいでしょう。あるいは、通報者に誹謗中傷や悪意の通報を戒めても、外部者はそういう戒めを馬耳東風と聞き流すでしょう。 ところが、早稲田大学の「内部通報対応規程案」では、内部通報制度を構築するはずのものであるにもかかわらず、「外部者」が堂々と通報できる制度になっているのです。 まず、第30条では、「本学の教職員等でない者からの通報等について」も教職員等による通報に準じて取り扱うことが規定されています。つまり、大学に関係のないどんな人でも、プライバシーに関する問題を含めて通報することができ(しかも匿名でもかまいません。匿名では外部か内部かの判断もつきません)、それが単なる誹謗中傷であろうと、被通報者を貶めることだけを目的にしたものだったとしても、いかなるペナルティを課すこともできないのです。 これに加えて、「内部通報対応規程案」は、もう一種類の「外部者」の通報を許しています。それは、「学生(大学院生等を含む)と生徒」です。学生・生徒の場合、大学の中で学んでいるという意味では「内部者」という側面も持ってはいます。しかし、少なくとも「雇用関係」という面では学生・生徒は外部者であり、雇用関係の規律で学生・生徒を律することはできません。 たとえば、学生・生徒が教職員への誹謗中傷目的で誣告したとしても、それを罰するすべはありません。もちろん学生・生徒は、学則などの教育的ルールで規律付けられておりますが、教育的ルールは教育上の目的遂行のためのルールなのですから、それで法人の運営に関するルールである「内部通報対応規程案」を学生の規律付けに使うことはできないでしょう。万一そういうことをしてしまえば、第2項でも述べたように、教員と学生生徒間の教育的信頼関係は、徹底的に破壊されてしまうことになるでしょう。 |
6.「内部通報対応規程」は、特定の勢力による根拠薄弱な乱訴を触発し、私たちが多大な困難を乗り越えて取り戻した学園の平和を崩壊させる恐れがあります |
第4項で述べたように、内部通報対応規程と服務規程や勤務規定などを連動させると、授業や教員のわずかな発言などを理由に、学生や学外者(30条の規定に基づく場合)は自由に対応委員会に内部通報することができます。 しかも、たとえ根拠薄弱で悪意に満ちた通報であったとしても「証拠が不十分であることのみを理由として通報等が悪意に基づくものと判断してはなら」ない(25条3項)と規定されていますから、悪意であるかどうかの認定は絶望的なほどに困難です。 しかし、特定の意図を持った政治勢力等が標的にした教員等について、意図的に内部通報の集中砲火を浴びせる恐れなどは、これまでの経験から考えて十分のありうることです。 もちろんさすがに対応委員会も、こういう訴えは予備調査で打ち切り、本調査に持ち込まない可能性は高いでしょう。しかし、その場合にも内部通報対応規程案の第18条第3項は予備調査結果の内部通報者に対する通知を義務づけているのです。しかも、この規程案では通報者への結果の通知を義務付けているだけで、結果の通知に際して被通報者の名誉やプライバシーに配慮した取扱いをせよ、という規定はありません。ですから、意図的な乱訴の場合、通報者はこの規定を手玉にとって、執拗に回答を引き出そうとしたりするかもしれません。 このようなリスクもこの規程案には内包されているのです。 |
7.「内部通報対応規程」は、本部への情報の集中を加速させ、早稲田大学を中央集権的な「密告社会」に変貌させます |
今提案されている内部通報対応規程案のように、本部主導型で内部通報制度ができてしまうと、教職員のプライバシーにかかわる事項を含むありとあらゆる問題が本部に集積していくことになります。しかも本部から箇所への連絡が必ずしも義務付けられていないので、学部長などの箇所の責任者は問題を知らないままに過ぎていき、いわゆる「蚊帳の外」に置かれる可能性が大きくなります。 このことは単に蚊帳の外におかれるという、それだけのことを意味しているわけではありません。「情報の中央への集積」が独裁者の権力維持の手段として使われることには、古今東西あまたの例があります。情報管理社会は、時間の経過と共に、批判勢力を許さない独裁的な社会へと移行して行きます。組織においても同様で、批判勢力のない独裁的組織は荒廃して行き、その構成員は活気を失い、全般的な知的退廃が組織を支配するようになるのが通例です。このこともまた、歴史が私たちに教えてくれる事実です。とりわけ、「知の共同体」である大学で知的退廃が進行することは、私立大学の雄とされる早稲田大学に取り返しのつかない損害をもたらすことになるでしょう。 私たちは、早稲田大学がそのような危険を冒すことを黙って見過ごすわけにはいきません。次なる125年間においても、早稲田が日本の知性を代表する人材を輩出し続けるためにも、私たちは内部通報対応規程案に反対して、この大学に自由の風を巻き起こし続けなければなりません。 |
(注1)「内部通報対応委員会」の10名の委員の内訳は、@学術院等の持ち回りで選出される3名の教員、A部長会で選出される3名の専任職員、B本学の専任教職員でない者のうちから総長が指名する者2名、C総務担当常任理事(1名)、D監査室長(1名)です。このうちB〜Dの委員は当然に総長・理事会任命です。各教員は形式的な任命権者は総長ではあっても、実質的には各教授会の人事で選ばれていますから、総長・理事会への独立性は保たれています。しかし、事務部長については総長・理事会が人事を行うわけですから、事務部長の集まりである部長会が選出した委員は、少なくとも間接的には総長・理事会任命だと言えます。このように、@を除くA〜Dの委員はすべて総長・理事会との独立性が保てない状態で選出されているのです。 戻る (注2) なお、研究室等の関係する場所への調査委員会の立入調査権については、内部通報対応規程には定められていません。しかし、大学の施設管理権を根拠に当然に認められるとの見解なのだろうと思われます。(起草者はわざわざ規定する必要もないと考えているのかもしれませんが、本部・当局者またはその任命による調査委員による研究室への立入調査権は、学問の自由の保障の下に、従来は認められないと考えられてきたのではないでしょうか)。 また、その場合に、被通報者の了解なく研究室の私物の調査を行えるのか(これを実施すれば、最判平成7年9月5日判例タイムズ891号77頁の判例に違反する可能性が生じます)、貸与(大学の所有物)を根拠に研究室内のコンピュータの内部データの調査ができるのか等々、この制度では強制的な調査権が認められているだけに、その範囲と限界について大きな疑問が生じます。私たち教職員の思想信条の自由や教育研究の自由とも密接に関連するため、是非とも、本部当局者の見解をうかがいたいところです。 戻る (注3) 労働基準法第9条:「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」 戻る (注4)たとえば、弁護士でもある浜辺陽一郎教授は、その著書『内部通報制度』(東洋経済新報社、2004年)において、「[企業における内部通報制度の構築にあたって、通報者に取引業者を含めることは]内部通報制度にはそぐわない」(p119、[ ]内は引用者による補足)と述べております。 戻る |