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胡錦濤中国国家主席の早稲田大学来訪について

2008年5月8日の胡錦濤中国国家主席の早稲田大学来訪は、

@学内での事前の告知や広報が一切なされずすべて秘密裏に準備が行われたこと(正門閉鎖等の掲示があったのは当日の朝)、
A参加者がきわめて限定されており、その選出基準も定かでなかったこと、
Bキャンパスの奥深くまで警察官を立ち入らせたこと、

など、早稲田大学においてこれまで開催された国家元首クラスの要人の講演会等としては、きわめて異例な運営が行われました。「早稲田の再生を目指す会」は、このような講演会の運営・警備体制は大学の自治および学問の自由にとって見過ごすことのできない深刻な問題があるものと考えます。そのため、5月31日付で、本会の石川代表は下記の質問状を総長及び理事会に対して送りました。(下記文書のPDFファイルはここをクリックするとご覧になれます。)

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2008年5月31日

早稲田大学総長 白井克彦殿
早稲田大学理事会御中

「早稲田の再生を目指す会」      
 代表 (法務研究科・法学学術院教授)
石川 正興     

胡錦濤中国国家主席の早稲田大学来訪に伴う警備体制および
講演会等開催の方法等について(質問)



 5月8日に大隅講堂等で開催された胡錦濤中国国家主席講演会および日中青少年友好交流年の日本における開幕式等(以下、「胡錦濤氏講演会等」と呼ぶ)は、早稲田大学での同種の講演会開催に関する従来の慣行に反したかたちで挙行されました。

 これに対し、既に5月14日には総長も出席された法学部運営委員会では、こうした異例の開催方法について総長・理事会はきちんと説明責任を果たしてもらいたい旨の要望がなされました。しかしながら、本日現在未だ総長・理事会がこの説明責任を果たしておられないようですので、以下のとおり、改めて問題点を指摘するとともに、質問いたします。

【T】問題点の指摘
(1)今回の胡錦濤氏講演会等は、

1. 学内での事前の告知や広報が一切なされず、すべて秘密裏に準備が行われ(正門閉鎖等の掲示があったのは当日の朝)、さらに5月2日の学術院長会でも一切審議されないなど、適正な学内手続きを経ずして挙行されたこと、

2. これまでのクリントン米大統領、金泳三韓国大統領、江沢民中国国家主席など、国家元首クラスの講演会等においては、聴講を希望する学生を公募し、抽選で聴講者を決定するなど、学生の機会均等を保障していたのに対して、今回の胡錦濤氏講演会等においては学生および教職員の参加者がきわめて限定されており、公募もなされず、選考基準も定かでないこと、

3. 大隈銅像を目前とするキャンパスの奥深くまで多数の警察官・機動隊員を立ち入らせたこと(「資料1」および「資料2」参照)、
など、早稲田大学においてこれまで開催された国家元首クラスの要人の講演会等としては、きわめて異例な運営が行われました。

(2)本学の学生が国際社会における指導的人物の講演を聴く機会を持つことは、教育上多大な有益性を持つものと考えます。しかも、国家元首クラスの要人をお招きする以上、十分な警備体制を講ずる必要があるのは当然のことであり、一般論としては通常より厳重な警備体制が敷かれることそれ自体には合理的な理由があるものと考えます。

 しかしながら、その一方で、大学においては言論と思想信条の自由が最大限に尊重されなければならず、さらにそこで学ぶ学生には機会均等が保障されなければなりません。これらの教育と言論に関する大学の存立にかかわる条件が満たされて初めて、正門を封鎖したり、講義に支障が出るなどの重大なデメリットも許容されるものであると考えます。

 このような観点に立って、今回の胡錦濤氏講演会等の準備・運営体制および警備体制を評価すると、上にあげた必須の条件は確保されなかったと言わざるを得ません。

(3)それに加えて、今回大学当局はキャンパス内の奥深くへの多数の警察官の導入を容認しましたが、導入前の正門付近構内での学生等の動向から判断すると、警察官導入を必要とする程の「明白かつ現在の危険」があったとは思われません。

 それにもかかわらず、警察官導入に踏み切ったことは、学問の自由と大学の自治を侵害し、本学の建学の精神の柱である「学の独立」の理念に明白に抵触するとともに、教育の場としての責務を放棄したものと言わざるを得ません。

【U】質問
 今回の胡錦濤氏講演会等の事実関係を明らかにし、責任の所在を明確にさせるための前提として、以下の点を質問いたします。

(1)胡錦濤氏講演会等の開催決定手続きに関して

1.胡錦濤氏講演会等の開催場所としては、当初東京大学が有力な候補として検討されていたと仄聞する。それが何故早稲田大学に変更されたのか、またいつごろ早稲田大学での開催が決定されたのか。

2.今回の講演会等の開催に関しては、従来の慣行に反し、学術院長会等学内の教学機関において一切審議を行わなかったと聞くが、その理由は何か。

(2)胡錦濤氏講演会等の開催方法に関して

1. 胡錦濤氏講演会等が早稲田大学で行われた以上、早稲田大学はその開催方法に深く関与しているはずであるが、今回の講演会等の主催団体はどこであり、早稲田大学はその中でどのように位置づけられているのか。

2. 早稲田大学において今回胡錦濤氏講演会等の準備、招待者の人選、運営等に中心的な役割を果たしたのはどの部局か。また、責任者は誰か。

3.何人の学生が招待されたか。どの教職員が招待されたか。招待された学生および教職員の選考基準は何か。

4. 招待を受けた学生に対して、合宿や講演会または交流会、懇親会等の場で、「チベット問題や人権問題等については発言するな」等の示唆もしくは指示が予め出されたとも噂されているが、これは事実か。

5.胡錦濤氏講演会等(5月5日と6日の軽井沢合宿を含む)の費用総額はいくらで、主催・共催者間でどのように費用分担がなされたか。

6.胡錦濤氏講演会等の実施に伴う、授業および大学の通常業務等への支障の内容や程度はどのようであったか。当日学生や教職員等からの苦情はどのような体制で受け付け、また受け付けた苦情の内容はどのようなものか。苦情に対してどのような対応をしたか。教室の変更やカフェテリア閉鎖等はどのように周知され、代替措置はどのように行われたか。

(3) 警察官の学内導入に関して
構内への警察官導入を決定した理由、時期、ならびに決定を下した者は誰か。

以上の質問に対し、誠意あるご回答をお願いいたします。なお、回答は文書でお願い申し上げます。

以上

資料1(資料1と資料2につきましては、PDFファイルをご覧ください)


資料2