岩 村 研 究 室

早稲田大学大学院経営管理研究科

(早稲田ビジネススクール)

教授 岩村充(いわむらみつる)


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私がかかわった著書(編著や監訳を含みます)についての感想です。著書以外の論文などについては、大学HPの研究業績一覧を参照してください。

 

中央銀行が終わる日

    新潮社 2016

 

 2010年の下記『貨幣進化論』の続編という位置付けもこめて書いた本です。この本では、ビットコインという「新しいタイプの通貨」が現れ、実際にも使われるようになったという現在の状況を踏まえて、これまでの金融システムにおける常識だったとも言える「金融政策を行う中央銀行」という位置付けが変るのではないかという問題意識に挑戦した本です。本の内容については新潮社のHP、あるいはレビューなども載っているアマゾンのHPを参照していただければと思うのですが、なお、この本の最後の章のむすびの文章をそのまま掲載させてください。

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江戸期の日本には「秤座」という団体がありました。度量衡の一つである重量、それを測る「秤」を統一し、当時の活発な経済活動を支えた団体です。もちろん、秤座にも様々な事件があり人間模様もあったようです。しかし、彼らが提供する「秤」は常に人々に安定した基準を提供し続けていました。それは江戸期における日本の経済を支えた見えない基盤だったことは間違いないようです。

中央銀行たちもやがては「秤座」のようになるべきかもしれません。安定した尺度の提供は人々の前向きな経済活動に不可欠の基盤の一つのはずだからです。でも、彼らがそのことに気付かず、金融政策を担うのだと言って物価や景気を操ることをいつまでも夢見ていれば、本当に「中央銀行が終わる日」が来てしまうこともあり得ないことではないでしょう。そんな日が来ることのないよう私は願っています。

 

 

コーポレート・ファイナンス−CFOを志す人のために

    中央経済社 2013

 

 この本は、ファイナンスとりわけコーポレート・ファイナンスについて考えようとする人たちのためのものです。ファイナンスと言えば、資本市場での価格形成から企業の資金調達あるいはファンドの投資戦略まで、個人や会社の金融的な活動に関する問題全般を扱う経済学の一大分野ですが、それに対して、コーポレート・ファイナンスとは、プロジェクトの価値評価や資本政策など企業の財務部門がかかわる問題を扱う理論と方法論の集合体ですから、その実質は研究分野と言うよりも実務を支えるための知恵の体系と言うべきでしょう。このコーポレート・ファイナンスが、企業の経営者や経営スタッフを養成することを目的とする経営専門職大学院いわゆるビジネス・スクールでのファイナンス系科目の主体となるわけです。そこで、この本も、まずは自分が教職にある早稲田大学のビジネス・スクールにおける講義や演習に基礎的なストーリーを与える教科書として使うことを意識して書きました。

ところで、ビジネス・スクールの教科書と言うと何だか難しそうですが、そんなことはありません。私たちの大学院への入学者の多くは、企業や金融機関の第一線で活躍中の皆さん、あるいは第一線で活躍することを目指して奮闘中の皆さんですが、当然のことながら、そのバック・グラウンドはさまざまです。また、そうした多様なバック・グランドを持つ皆さんが集うところにこそ、ビジネス・スクールの意義があるのではないでしょうか。私たちの目的は、実務の第一線で活躍する人たちの間で分かち合うべき「知の共通基盤」を提供することで、狭い意味での研究者や専門家を養成しようとするものではありません。ですから、そうした場での対話のために書いたこの本が、単なる教科書の枠を超えて、金融あるいは財務の現場にいて理論と実務との交錯に悩む皆さんや、そうした方面での将来の活躍を望む学部在学中の皆さんに対しても、ファイナンス的な「考え方」を理解して頂く一助になってくれれば、それは著者として十分以上に本作りの目的を果たしたことになります。

一読頂ければ分かることですが、この本ではファイナンスに関する計算練習の類を取り入れませんでした。実際に計算をして答を見つけることは、知識を実務に応用するために必要な「技」であることは確かなのですが、そうした技自体は「知の共通基盤」ではないからです。ファイナンスの技をどう使うかは時代とともに変化します。ほんの数年前まで、ファイナンスの計算と言えば、関数電卓という名の道具が不可欠でした。しかし、今ではそんな道具を使う機会はほとんどありません。基本的な数値計算ぐらいなら汎用の表計算ソフトで誰でも実行可能ですし、結果を表にしたりグラフにしたりすることも簡単だからです。また、それらの使い方に関しても、インターネットを少し検索すれば、ソフトの進化に応じて最新にして細心の解説が豊富に提供されています。正直を言うと、例のエクセルのヘルプには私も脱帽の思いがすることしばしばです。大抵のファイナンスのハウツー本よりも、エクセルのヘルプの方が優れていると言ったら言い過ぎでしょうか。ですから、そうした計算の実技に関しては、新しい環境を活用して最も自分にあったやり方を自分で探して頂いた方が効率的だと思います。

私がファイナンスという科目の講義をする際に特に気を付けているのは、それが経営者の責任に代わる自動判断公式らしきものを教えることになってはいけないということです。ビジネス・スクールでファイナンスを教えることの目的は、ファイナンスにかかわる経営判断を担う人たちが心得るべき論理の構造を明らかにし、錯覚や誤解に基づく決定から企業と社会を守る方法を教えることだからです。そして、それが本当に行われていれば、何度も何度も繰り返されてきたバブルや金融危機の歴史も少しは違ったものになったはずです。本書のタイトルに「CFOを志す人のために」という一言を加えたのも、そうした気持ちを込めたものとご理解ください。本の内容については、出版社である中央経済社のHP、あるいはレビューなども載っているアマゾンのHPを参照してください。

 

 

貨幣進化論

    新潮社 2010

 

 2008年に下記『貨幣の経済学』を出したら、翌2009年の暮れに新潮社さんから、「さらに分かりやすく」をキーワードに今度は選書という枠組みで書き直してみないか、というお誘いをいただきました。一度書いたテーマを2年もしないうちに書き直すというのは私にとっては初の経験で、うまく書けるかどうか自信は無かったのですが、担当のSさんに励まされているうち、やればできそうな気がしてきて「貨幣は何処から来て何処に行くのか」という私のとっての年来のテーマに再挑戦したのがこの本です。何を書くか、何が書けるかについて、最初は迷いもあったのですが、貨幣の起源について寓話的な説明を考えたり、歴史文献を当たったりしているうちに、前の本では気が付かなかったことに気が付いたり、新しい発見があったりして、結構楽しみながら約半年ほどで書き上げることができました。本の内容については新潮社のHP、あるいはレビューなども載っているマゾンのHPを参照してください。

私としては、自然利子率という概念の確立を通じて現代の物価理論に大きな貢献をしているスウェーデンの経済学者クヌート・ウィクセルの伴侶だったアンナ・ブッゲという女性が非常に立派な人だったらしいこととか、最近の国際通貨体制をめぐる議論でも台風の眼のようになっているSDRについてオーストリア学派を代表する経済学者だったフリッツ・マハループが辛辣かつ的確な批判をしていること、あるいは、いわゆるヘリコプターマネーに関するベンジャミン・バーナンキ連邦準備制度議長の発言はどうも彼の論旨とは違って伝えられているように思えることなど、本の構成上ではエピソードとかディテールとも言うべき事実の発見が面白く、それを楽しみに文字を書き連ねたようなところもあるのですが、いざ本を出してみると、読者の方々の関心の多くは、日本の状況を改善する手段としてのマイナス金利の実現可能性と、長くデフレ圧力がかかり続けたエコノミーが変調したとき何が起こるのかという問題とに向かっていただいているようです。今さらながら、お読みいただいた方々の真摯な問題意識に頭が下がりました。

ちなみに、マイナス金利の話ついては、ダイヤモンドオンラインさんにインタビュー記事を掲載していただき、何と記事の末尾に投票コーナーまで設けていただきました。ご投票いただいた方、どうもありがとうございます。また、デフレ圧力がかかり続けたエコノミーが抱えるリスクについては、この本がきっかけとなって週刊エコノミストなどにも短い記事を書いたりもしたのですが、仲間内から評判が良かったのは池田泉州銀行のシンクタンク自然総研さんの広報誌に掲載していただいた「円は相転移するか」というエッセイです。もしご関心があったらリンクを張っておきましたので、お目通しいただければ幸いです。

今、改めて感じるのは、この本を出すことを薦め、完成まで本気で付き合っていただいた新潮選書出版部の編集者Sさんへの感謝です。彼の励ましとアイディア提供がなければ、この本は出来上がらなかったと思います。編集者への謝辞は本の「あとがき」に書くのが普通なのですが、この本の場合、「あとがき」には本の内容の続きのようなことを書いてしまったので、この場を借りてSさんに感謝の言葉を記しておこうと思います。Sさん、ありがとうございました。

 

 

貨幣の経済学

    集英社 2008

 

 物価理論については、2004年に『新しい物価理論』(下記で紹介しています)というタイトルで一橋大学の渡辺努教授と一緒に本を出しているわけですが、あの本が数式とモデルが中心だったのを改めて、そういう発想に至るまでの思考過程(FTPL的な観点から日本のデフレ問題を考察してみようという思いに至るまでの思考過程)を、今度は研究書ではなく一般書として多くの方に読んでもらえるようにまとめてみたのがこの本です。このタイプの物価理論(学界ではFTPLと呼ばれています)は、これまでの貨幣数量説タイプの物価理論になじんだ人々には一種の逆転の発想という面があるので、まだ教科書で取り上げられるようにはなっていない現状で一般書として世に送り出すのには正直言って迷いもあったのですが、案外すんなりと読んでもらえているようで「目からウロコが落ちた」というような嬉しい感想を、これは初めての方からもたくさん頂きました。もちろん、なかには、単なる拒絶反応に近い意見もあったのですが、いずれにしても、多様な方々から多様な感想を頂けたこと、とりわけ、これまで機会のなかった方々と本の出版を通して多くの知己を得ることができたことは、一般書での新物価理論の展開という試みにちょっとばかり苦労しながら挑戦してみたことのご褒美かなと思っています。なお本の内容については集英社のHPを参照してください。

 

 

企業金融講義

東洋経済新報社  2005

 

 企業金融の本を書くのは、 1994年の「入門企業金融論」(日本経済新聞社)、2001年の「企業金融の理論と法」(東洋経済新報社) に続いて3度目ですが、前の2冊が金融についての予備知識や経験のある読者を意識したものだったのに対して、今度は、大学での講義に教科書あるいは副読本として使うことを意識して、金融について予備知識や経験がない読者にも分ってもらえるよう、構成と内容を全面的に整理して拡充しました。私としては経済学部や経営学部あるいは商学部の学部学生諸君にも十分に理解してもらえるよう理論の前提から始めて丁寧に書いたつもりなのですが、それが裏目(?)に出て、出版元の東洋経済新報社の評価では高度な本と分類されてしまい、結果として定価もいささか高くなってしまいました。でも、著者としては、予備知識のない読者を意識して、企業金融論の前提となっている理論のエッセンスを解説しているから難しそうな印象があるだけで、読んでもらえればやさしく書いてあるということが分ってもらえるはずだと、ここは頑固に思い込んでいます。

【お詫び】なお本書第1版には多少の校正漏れが残ってしまいました。読者の方々には申し訳ないのですが、正誤表をアップしておきますので参照してください。

 

新しい物価理論―物価水準の財政理論と金融政策の役割(共著)

   岩波書店 2004

 

  一橋大学経済研究所に経済研究叢書というシリーズがあるのですが、そこに一橋大学の渡辺努教授と一緒に、二人で考えてきた物価理論についての成果を書いたものです。内容としては、長期的な物価水準の決定要因としての財政の役割を重視する経済理論(これを「物価水準の財政理論:FTPL」といいます)を軸に、バブル崩壊後のデフレ現象について考察を加えたものですが、数式が多くて難しいという感想を何人かの方から頂いてしまいました。数式が多いのは研究書というシリーズの性格上やむを得ないのですが、数式の前後にはその現実的な解釈を書くよう努力はしているので、そう言わずに前後の文章をつなげて読んでいただけると嬉しい、というのが著者の気持ちです。なお、本書執筆の過程で、早稲田大学の大先輩である石橋湛山や、戦後高度成長のイデオローグともいうべき下村治などの議論を読む機会を得て、日本にも海外の理論を借りてくるだけでない優れたエコノミストがいたのだということを痛感させられたのも私にとっては大きな収穫でした。

 

 

電子株主総会の研究(共編著)

   弘文堂 2003

 

 本書は、 20012月から20024月まで、財団法人トラスト60においておこなった株主総会電子化に関する研究活動の成果を取りまとめたもので、編集作業は東京大学の神田秀樹教授にご一緒いただきました。研究会で取り上げたのは、インターネットのような情報メディアを使って株主総会そのものを電子化できないかというテーマですが、議論をしていくうちに会議とは何か、合意形成とは何かという基本的な問題について考えることになりました。その意味でも学ぶことの多かった研究会であり、また編集作業だったなという気がします。 

 

金融システムの将来展望(編著)

   社団法人金融財政事情研究会 2002

 

  本書は、 20014月から同年7月にかけて、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で実施した講座「金融システムの将来展望」で行われた講義の記録です。この講座は、20006月に設立50周年を迎えた信金中央金庫の寄附講座として設置されたもので、講師陣には早稲田大学内のみならず外部からの論客や研究者をお迎えして、日本の金融機関がおかれている状況と、そうした状況を打開する方策についての議論を展開していただきました。

 

企業金融の理論と法(共著)

   東洋経済新報社 2001

 

 企業金融論の基本的な骨組みを、それを律する法律の構成に関連付けて、日本銀行金融研究所(当時)の鈴木淳人さんと一緒に整理したものです。本書の前半では、主として経済学的な視点から投資リスクや企業価値などについて考察を加え、後半では、その背景であり結果でもある法体系についての議論を試みています。企業の資金調達や会社組織についての法制は日本の法制度の中でも急速に変化し続けている分野ですから、執筆のときは数年先の制度改正まで視野に入れたつもりだったのですが、それでも、この分野の法制度は本書執筆時の見通しを上回る速さで変化し続け、結果として、本の完成後 3年もすると内容がやや古くなってしまいました。それが、上掲の「企業金融講義」という本を書こうと考える動機にもなったわけですが、そんなことからも、世の中の変化というものの速さを実感させられた思いがします。

 

特別講義 IT革命を読み解く (編著)

   技術評論社 2001

 

  この本は、 20011月から2月にかけて開講した講義「情報社会特論」の記録です。この講義に出講していただいたのは、慶応義塾大学教授の国領二郎さん、アジアネットワーク研究所代表の会津泉さん、東京大学教授の石黒一憲さん、早稲田大学教授の前川徹さん、弁護士の牧野二郎さん、株式会社ネオテニー社長の伊藤穣一さんの各氏です。 情報社会あるいは情報技術革新といっても、それに何を読むかは多様なのだなということを、講義シリーズの責任者としても本の編著者としても再認識した作業でした。 

 

サイバー エコノミー

   東洋経済新報社 2000

 

大学院で情報技術の問題を講義するようになってから、情報技術と市場や経済活動との関係をまとめたものです。内容としては、急速な進展をみせた社会の情報化について、その背後にある新しい情報通信技術の仕組みを概観し、そうした技術的な仕組みが実は新しいエコノミーの本質に深く関係するものだということを論じました。サイバーとはサイバネテックスつまり電子計算機技術のことで、エコノミーは経済社会という意味ですが、書名としては分かりにくいというコメントを何人かの方から頂きました。情報技術社会論というような書名の方が良かったかなと、少しですが反省しています。

 

レバレッジド・バイアウト― KKRと企業価値創造 (監訳)

   東洋経済新報社 2000

 

 この本は、KKRすなわちコールバーグ・クラビス・ロバーツというLBOファームについて米国の二人の学者が行った記録と分析の翻訳です。KKRが開発し精緻化したLBOすなわちレバレッジド・バイアウトという企業買収手法は、今では多くの人に知られるようになりましたが、当時は金融界におけるM&A担当者ぐらいしか知る人のない手法でした。本書の翻訳は、当時、金融再生法による特別公的管理の下にあった日本債券信用銀行のスタッフと一緒に行ったもので、その意味でも感慨が深いものがあります。

 

電子マネー入門

   日本経済新聞社(日経文庫) 1996

 

 1995年から96年にかけて話題を集めたのが電子マネーでした。今から思うと、その背景には、紙から電子へと貨幣制度の技術基盤が変わることで、停滞していた金融システムに新しいインパクトが加わることを期待する人々の気持ちもあったのではないかと思います。本書は、そうした関心の盛り上がりのなかで、電子マネーについての解説的な入門書をという求めに応じて書いたものですが、肩の力を抜いて書いたのが良かったのかもしれません。部数の出ない私の本の中ではよく売れた本になりました。

 

銀行の経営革新

   東洋経済新報社 1995

 

 日本銀行主催の研究会で私が行った基調報告を1冊の本としてまとめ直したものです。研究会のテーマは、バブル崩壊で銀行への信用が揺らぐなか、金融業の未来を、情報処理技術革新の文脈から見通そうというものでしたので、本書は、その問題意識に、金融のアンバンドリング、すなわち、これまでの金融業で一体とされてきた様々な機能を、もっと個別の構成要素に分解し再設計する具体的方法を探る、というスタンスから答えようとしたものです。アンバンドリングという考え方は現在では常識ですが、当時は必ずしも当然のようには考えられていなかったような気がします。

 

入門 企業金融論

   日本経済新聞社 1994

 

 この本は、日本銀行の業務のかたわら早朝や週末の時間をつぎ込んで書いた私の最初の著書です。企業金融の理論について分りやすく説明したいと気持ちと、いくつかの誤解を正したいという気持ちから書いたもので、個人的には思いのこもった本ですが、今から読み返してみると、もう少し良い説明の仕方ができそうな箇所ばかりが気になります。本書の内容は、もっと整理し充実させて 2005年刊行の「企業金融講義」の中に取り込んでおきました。

 

 

 


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