このページでは、学生諸君に、けっこう面白いと思われる本を紹介しています。
但し、網羅的ではなく、あくまで20代前半くらいの読者を対象に、
しかも、当方がこの数年のうちに読んだり再読したりしたものを中心に。
また、コメントは随時追加してゆく予定です。
【海外の文化や旅行記・滞在記を集めて】
四方田犬彦:モロッコ流謫(新潮社)
→ アメリカ出身でモロッコに住んだ作家・作曲家、ポール・ボウルズをめぐって記されたボウルズ論と旅行記。
四方田犬彦:ソウルの風景(岩波新書)
→ ‘70年代ソウルに滞在し『われらが「他者」なる韓国』(平凡社ライブラリー)を上梓した著者が、20年後にあらためてこの地で起こっている変化を記す。
内田洋子:破産しない国イタリア(平凡社新書)
→ これを読んでいたおかげで映画『ハンニバル』が一層面白く観ることができた。イタリア好きのみならず、ヨーロッパの不思議さの一端を知るために。
橋口健二:ベトナムの微笑み(平凡社新書)
→ 漠とした「イメージ」のみのベトナムが、幾分かでも輪郭をもってきたのは映画『青いパパイアの香り』『夏至』と、この本のおかげかもしれない。
野村進:アジア定住(講談社+α文庫)
→ どんなふうにしてひとはよその国に滞在することになるのか。拙著『アライヴ・イン・ジャパン』にも共通しているテーマがここに。
山口文憲:香港世界(ちくま文庫)
→ 返還前で、いささか古くなっているかもしれないが、『香港 旅の雑学ノート』(新潮文庫)とともに、香港に関心を持つひとには一読を勧める。
島尾伸三:中国図案見学(新潮文庫)
→ ご存知、作家・島尾敏雄&ミホ夫妻のご子息は、写真家であるとともに、名文家、さらにキッチュなものへの愛情をたっぷりもった方である。
さとなお:沖縄やぎ地獄(角川文庫)
→ 軽い本だが、沖縄の「やぎ汁」について、じつに率直に書いてあるところがポイント。
沢木耕太郎:深夜特急(新潮文庫)
→ はじめて通読したときの興奮はなかったが、体育会系文筆家の、これはやはり最高傑作かも。著者が最近書く小説などと比較したら……。
小田実:なんでも見てやろう(講談社文庫)
→ あまりに有名な旅行記。じつは有名すぎて、手にとらずにいたのだが、最近読んで、けっこういまでも通用するものだと実感。
小田中直樹:フランス7つの謎(文春新書)
→ 経済史家が描きだす謎の究明は、けっしてフランスのみの話ではなく、日本をも照らし出す。仏文科の学生は必読。
西江雅之:風に運ばれた道(以文社)
→ 当方が早稲田に来たときにはすでにおやめになられていたが、この明晰でみごとな文章は、最初の著作『花のある遠景』以来、健在。
西江雅之:異郷をゆく(清流出版社)
→ 上記の本同様、比較的最近の西江著作のひとつ。この美しさは比類ない。
【哲学・思想など】
中村雄二郎+上野千鶴子:〈人間〉を超えて(河出文庫)
吉本隆明+三好春樹:〈老い〉の現在進行形(春秋社)
新宮一成:夢分析(岩波新書)
港千尋:遠心力(白水社)
小泉義之:ドゥルーズの哲学(講談社現代新書)
村上陽一郎:科学の現在を問う(講談社現代新書)
鷲田清一:まなざしの記憶(TBSブリタニカ)
鷲田清一:〈弱さ〉のちから(講談社)
鷲田清一:悲鳴をあげる身体(PHP新書)
【宗教・聖なるものをめぐって】
カトリーヌ・クレマン:テオの旅(NHK出版)
→ クレマンの名は優秀なジャーナリストとして知っていたが、ここにあるのは小説仕立ての宗教をめぐる「旅」、わかりやすい「宗教」入門。
竹下節子:カルトか宗教か(文春新書)
→ ルルドの泉やローマ法王、あるいは聖女伝についてのじつにおもしろい本を書かれる著者が、近年の新宗教などをめぐって提起する問い掛け。
植島啓司:聖地の想像力(集英社新書)
→ 著者の本はそれ自体、けっして何かについて直接に、そして容易に説明・解説してくれはしないのだが、そこがまた魅力な「聖地」論。
山口文憲:日本ばちかん巡礼(新潮社)
→ 日本のさまざまな新興宗教?をめぐってフィールドワークをおこなった本。けっして学問的ではなく、ごくごくふつうの姿勢で「?」を提起するのが魅力。
中沢新一:緑の資本論(集英社)
→ 「9.11」にかかわるイスラムとアメリカ資本主義との対立を中心に、シュトックハウゼンのさらされたボイコットなどにも触れる。
【文学論・言語論】
柴田元幸:アメリカ文学のレッスン(講談社現代新書)
村上春樹+柴田元幸:翻訳夜話(文春新書)
青山南:ピーターとペーターの狭間で(ちくま文庫)
和田忠彦:ヴェネツィア 水の夢(筑摩書房)
池内紀:カフカの生涯(新書館)
中条省平編:三島由紀夫が死んだ日(実業之日本社)
松枝到:密語のゆくえ(岩波)
松枝到:奪われぬ声に耳傾けて(書肆山田)
小森陽一:最新宮澤賢治講義(朝日新聞社)
最相葉月:あのころの未来(新潮社)
西江雅之:「ことば」の課外授業(洋泉社新書)
ガストン・バシュラール:夢想の詩学(ちくま学芸文庫)
ミシェル・トゥルニエ:イデーの鏡(白水社)
【ノンフィクション】
小林照幸:完本 蛇毒(文春文庫)
→ この本を読んで、すっかり小林照幸のファンになった。沖縄における毒蛇への対抗がどのようになされたかが記される、途中でやめられないおもしろさ。
小林照幸:朱鷺の遺言(中公文庫)
→ 天然記念物「ニッポ二ア・ニッポン=朱鷺」をめぐる、ヒトと鳥との、そして時代と美意識との交差が描きだされる。開高健ノンフィクション大賞受賞作。
小林照幸:海洋危険生物(文春新書)
→ 沖縄の海と簡単に言うが、そこにはどんな生物がいるか。けっして「脅し」ではないながらも、海の神秘をさえ具体的なところから喚起する。
小林照幸:大相撲支度部屋(新潮文庫)
→ 特に興味もないような題材なのに、著者の語り口にのって読み終えてしまった。いわゆる相撲の「床山」の一代記。
佐野眞一:東電OL殺人事件/東電OL症候群(新潮社)
→ なぜか「東電OL殺人事件」が気になって、この2冊は手にとってしまったのだが、この事件の背後にある複雑さは、いまもアタマの片隅に残りつづけている。
中村智志:路上の夢 新宿ホームレス物語(講談社文庫)
→ 新宿のホームレスにインタヴューして、その個々人の背後にあるものを浮かび上がらせる。現代日本のひとつの症例?
【音楽】
……音楽の本は難しい。だから、きわめて一部でしかないのだけれど……
野村誠:路上日記(ペヨトル工房)
→ 鍵盤ハーモニカのアンサンブル「P-ブロッ」をやってきた作曲家が、路上演奏で体験したことを記しているのだが、面白く、発見がある。CDつき。
塚田健一:アフリカの音の世界(新書館)
斎藤完:飲めや歌えやイスタンブール(音楽之友社)
小泉文夫:日本の音(平凡社ライブラリー)
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生明俊雄:ポピュラー音楽は誰が作るのか 音楽産業の政治学(勁草書房)
ジェイソン・トインビー(安田昌弘訳):ポピュラー音楽をつくる ミュージシャン・創造性・制度(みすず書房)
ドミニク・ストリナチ(渡辺潤/伊藤明己訳):ポピュラー文化論を学ぶ人のために(世界思想社)
リヒャルト・シュスターマン(秋庭史典訳):ポピュラー芸術の美学(勁草書房)
三井徹編:ポピュラー音楽の研究(音楽之友社)
東谷護編著:ポピュラー音楽へのまなざし 売る・読む・楽しむ(勁草書房)
北中正和:にほんのうた(平凡社ライブラリー)
佐藤良明:ラバーソウルの弾み方(平凡社ライブラリー)
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上尾信也:音楽のヨーロッパ史(講談社現代新書)
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パスカル・キニャール:音楽への憎しみ(青土社)
【美術/アート、など】
天野知香:装飾/芸術(ブリュッケ)
坂上桂子:夢と光の画家たち モデルニテ再考(スカイドア)
酒井健:ゴシックとは何か(講談社現代新書)
ドウス昌代:イサム・ノグチ 宿命の越境者(講談社文庫)
大塚英志+ササキバラ・ゴウ:教養としての〈マンガ・アニメ〉(講談社現代新書)
天野祐吉:広告論講義(岩波)
高山宏:表象の芸術工学(工作舎)
カルヴィン・トムキンス:マルセル・デュシャン(みすず書房)
飯島洋一:キーワードで読む現代建築ガイド(平凡社新書)
平田オリザ:芸術立国論(集英社新書)
佐々木健一:美学入門(中公新書)
三井秀樹:メディアと芸術(集英社新書)
森洋子:子供とカップルの美術史(NHK)
【映画】
四方田犬彦:日本映画史100年(集英社新書)
中条省平:フランス映画史の誘惑(集英社新書)
【文化・文明・社会】
青木保:異文化理解(岩波新書)
青木保:多文化世界(岩波新書)
大澤真幸:文明の内なる衝突(NHK出版)
河原理子:犯罪被害者(平凡社新書)
菅谷明子:メディア・リテラシー(岩波新書)
陳天璽:無国籍(新潮社)
香山リカ+福田和也:「愛国」問答(中公クラレ)
香山リカ:〈私〉の愛国心(集英社新書)
姜尚中+テッサ・モーリス・スズキ:デモクラシーの冒険(集英社新書)
李鳳宇+四方田犬彦:パッチギ!(朝日新聞社)
ダグラス・ラミス:経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか(平凡社ライブラリー)
中林哲:アフガニスタンの診療所から(筑摩)
戸井十月:カストロ銅像なき権力者(新潮社)
西江雅之:伝説のアメリカン・ヒーロー(岩波)
阿部謹也:日本人の歴史意識(岩波新書)
スーザン・ソンタグ:良心の領界(NTT出版)
【エッセイ】
穂村弘:世界音痴(小学館)
岸本佐知子:気になる部分(白水社)
【小説】
池澤夏樹:マシアス・ギリの失脚(新潮文庫)
中沢けい:楽隊のうさぎ(新潮文庫)
堀江敏幸:熊の敷石(講談社)
奥泉光:鳥類学者のファンタジア(集英社)
ニコルソン・ベイカー:フェルマータ(白水社)
ナンシー・ヒューストン:天使の記憶(新潮社)
アレッサンドロ・ボッファ:おまえはけだものだ、ヴィスコヴィッツ(河出書房新社)
ジークフリート・レンツ:遺失物管理所(新潮社)
トレイシー・シュヴァリエ:貴婦人と一角獣(新潮社)
パスカル・キニャール:音楽のレッスン(河出書房新社)
パスカル・キニャール:めぐり逢う朝(早川書房)
中川真+高橋ヨーコ:サワサワ(求龍堂)