障害学会第10回大会(2013年度)報告要旨


福田 暁子(フクダ アキコ)  

□共同報告者

北村 弥生(キタムラ ヤヨイ)  国立障害者リハビリテーションセンター研究所

■報告題目

呼吸器利用・電動車いす利用で単身生活を行う難病盲ろう者の自助による災害対策

■報告要旨

1. はじめに
 東日本大震災では、障害者手帳保有者の死亡率が住民死亡率の約2倍であり、電気を使用する医療機器利用に関する課題が表面化した。そこで、本稿では、人工呼吸器を使用する重度の重複障害者である報告者による自助体制と課題を紹介し、共助と公助で補うことが期待される内容を明らかにする。

2. 対象と方法
 報告者から提示された資料を、第二著者が整理し、報告者が修正して原稿を完成させた。資料及び草稿は電子ファイルとして、メールに添付され、第一著者は携帯点字端末ブレイルセンスオンハンド(エクストラ社)で修正作業を行った。資料提供は2012年に、原稿修正作業は2013年行われた。

3 結果 
3−1.  報告者の障害
 報告者は先天性網膜症のために弱視であり、高校生の時に多発性硬化症を発症し、調査時は、視力(視力:右0、左:手動弁)、聴力(右124dB、左135dB)、肢体不自由(上肢下肢、ともに身体障害者1級)で電動車いすを、呼吸機能障害に非侵襲型の人工呼吸器を、嚥下障害に胃ろうを使用する他、膀胱機能障害では膀胱留置カテーテルを使用していた。コミュニケーションは、情報の受信は主に触手話・指文字で行うが、必要に応じて手書き文字・点字・指点字を使用した。発信は発声もしくは触手話・指文字・指点字で行った。また、携帯点字端末も利用し、メールの送受信をした。

3−2.  災害準備
 報告者は、災害準備のうち、「備蓄」と「情報収集・連絡方法」は、自助によりほぼ対応ができたが、「火災・建物の崩壊時の避難、電源の喪失時の対処、外出時の対処、清潔な水の確保(飲み水というより医療機器の洗浄用)、ヘルパーの確保、円滑な医療連携」は、解決策が確定していなかった。

(1)マンションからの避難
 報告者はマンションの5階に住むため、エレベーターを使えない場合の避難方法は確定していなかった。救急車で運ばれた際には、報告者の身体を担架に側臥位に数か所固定してレスキュー隊3名で抱え、救急隊員2名が呼吸器などの医療機器を操作し搬送した。大災害時にこの体制がとれるとは想像し難いため、報告者は海外の避難用品を検索し、候補品の試用を希望した。
 1階に下りてからの移動手段の確保も課題であった。チルト・リクライニング機能がある車いすに身体にあわせた座位保持装置を載せる必要があるが、災害時目的という理由では車いすの複数交付助成は認められなかった。そこで、報告者は以前に使用していた簡易電動車いすの部品を使用した手動車いすを設計し自費で購入した。

(2) 人的資源の確保
 報告者の自宅から徒歩圏にヘルパーは1名いたが、居住地が被災地の場合にはヘルパーも被災者であり、支援を受けられる可能性は低いことを報告者は懸念した。報告者の家から徒歩圏に住む通訳・介助者はいなかった。しかし、触手話で、地域の登録手話通訳者に通訳を依頼できることから、報告者は市登録の手話通訳者の派遣も平時から依頼して、自分の存在をアピールしていた。また、電源がない場合に、点字を知らない人と会話する方法として点字文字盤(自己作成品)を、報告者はいつも持ち歩いていた。

(3)停電への対策
 人工呼吸器の日中の有効蓄電時間は7時間であり、その日のうちに電源を確保しなければならなかった。電源確保の方法は、外部バッテリーの追加、近隣の非常用電源がある場所への移動、外部バッテリーを非常用電源がある場所で充電することの3つが挙げられた。

(4)外出先での避難
 外出先で災害に遭った場合に、2階以上にいれば建物からの脱出は自宅からの避難と同様に困難であった。外出時の単独移動は少ないため、同行するヘルパーや通訳・介助者は、「報告者取扱いマニュアル」を参考にして、報告者が移送に必要な人員と方法を調整する補助が期待された。

(5)清潔な水の確保
 報告者は自宅には医療用(主に人工呼吸器の加温加湿器用)に使用できる精製水と飲料水を備蓄し、外出時には20mlの蒸留水、500mlの飲料水と300ml相当の氷(体温調節が難しいので、体温を下げるために使う)を携帯する。医療用に使用する蒸留水一日1リットルは避難した場所で供給されることを報告者は希望した。

(6)円滑な医療連携
 平時は、かかりつけ医、訪問看護ステーション、薬局、呼吸器業者等の複数の医療サービスと福祉サービスを、報告者自身がコーディネートしていた。しかし、災害時に連絡が取れない場面で、代替えのサービスが提供されるかについて、報告者は不安を抱えていた。

6.考察
 本稿では、人工呼吸器を利用する重度重複障害で単身生活を送る報告者による自主的な災害時準備を紹介した。報告者自身も回答したように解決に至っていない「2階以上からの避難」「電源の確保」「人的資源の確保と調整」について、共助と公助による対策がどのように達成されるかは、次の課題である。