2004年度文学とジェンダー前期第一回

著作権上の配慮から、画像、著作物などは本サイトでは掲載して降りません。当該当物を見聞したい人は金井研究室までおいでください。


(1) 一枚のキルトをめぐるワークショップ
(2) 感じること、考えること、そして伝え合うこと――本講義の基本姿勢について――
(3) 一曲の歌をめぐるワークショップ



(1) 一枚のキルトをめぐるワークショップ

問い:

@「キスをするカップル」のイラストを書いてください。

A次の作品(研究室にあります)を見て、感じたことを自由に綴ってください。

作者情報:

ジーン・レイ・ローリー

アメリカ、カリフォルニア州在住のキルト作家。スタンフォード大学在学中にキルトと出会い、修士研究課題論文の一部として最初のキルトを作る。1982年にQuilters Hall of Fame(キルターの栄誉の殿堂)入りを指定され、1997年、ヒューストンの国際キルトフェスティバルで、Silver Star Award(銀星賞)を授与される。20世紀におけるキルティングの発展と普及に貢献した業績と、21世紀に向けての大きな影響力が高く評価されている。


作品名:

キス・ミー・クイック(すばやくキスして)1997年 61×46

人々が何かを行う態度や方法を観察するのが好きです。この作品は、一目を忍んだキス、つまり、隠されたり秘められたりするキスを題材にしています。各ピースがカップルを描いていますが、そのうちの一人は誰かに見られることを警戒しています。この作品には、ふざけ感覚とまじめな意見表明の両方がこめられています。

(『世界のキルト作家30人展』、2002より)



(2)

感じること、考えること、そして伝え合うこと

――本講義の基本姿勢について――

ジェンダー(Gender)とは何か…

 生物学的性差(=Sex)とは異なり、社会的・文化的に作られた性差のこと。
時代や地域、民族などによって、さまざまに異なる現れ方をする。
例)黒いランドセルは男子向け、赤いランドセルは女子向け、スカートをはくのは誰か、
徴兵制のなかのジェンダー

ジェンダーフリーとは…

男女というジェンダー・コードの段差を発見しこれを平らにする試み。

性別によって隔てられている障壁(バリア)を外すことを示す表現。
「制度や待遇面での男女の不平等の撤廃」を中心テーマにするのではなく、性別に関して人々が持っている「心のありかた」をテーマとするもの。
舘かおる「ジェンダー概念の検討」 (『ジェンダー研究』第1号 1998年)


○私の授業で「ジェンダー・フリー」について、これまでよく寄せられた三つの疑問に答えます。 

Q1、 ジェンダー・フリーって、男らしさや女らしさを否定する運動? 

A1、 男らしさや女らしさっていうのは、それぞれの時代や地域、共同体の中で培 われてきたもので、独自の文化としてさまざまな局面で機能しており、それらを否定 するだけでは何も始まりません。大切なのは、それらが「男はこうあるべきだ」「女 のくせに○○するのはおかしい」といった抑圧や強制を生みやすいということに気づ くことです。ジェンダー・フリー教育とは、一人一人の人間がかけ
がえのない人生に おいて「私の選択」ができるようにするために、さまざまな表象分析やワークショッ プを通して、性別をめぐって「当たり前」と思われてきたことを問い直すレッスンで す。 

Q2、 ジェンダー・フリーの世界って、男と女の区別が全くない、画一的な世界?

A2、 あなたはそんな世界に暮したいですか? 私の考えるジェンダー・フリーの世界は、女、男、男になろうとする人、女を選びなおす、どちらをも往還する人…人生の場面、場面でジェンダーについてさまざまに 考え実践している人々がひしめき合い語り合える、賑やかで多様な世界です。

Q3、 「男らしさ」や「女らしさ」ではなく「自分らしさ」をって言うけれど、型 や枠がないところに「自分らしさ」なんて作れるの?

A3、 おっしゃる通り。努力目標として、社会で通用している何らかの型や枠にあ てはめようと努力するうちに「自分」というものがおぼろげながら見えてくるという のは現実です。でも、そこにはまり切らない「自分」が見えてきたときどうします? その「自分」をダメだと否定するんじゃなくて、大切に思うこと――そのための共通 理解を作っていくために、ジェンダー・フリーの視点を備えたいと思います。


文学作品を通してジェンダーの問題を考察する、本講義のアプローチ…
 
1、

時代を切り開いてきた作家・作品をジェンダーの視点から読み返すこと

2、 同時代に活躍する表現者からジェンダーについてのさまざまなヒントをもらうこと
3、 自分自身のジェンダーに敏感になって、その揺れや戸惑いをことばや声で表現してみること
4、 「ジェンダー・フリー」のための試みを、孤独な営みとしてではなく、相互関係のなかで捉え返してみること


ジェンダーについて学ぶ際に、なぜ「双方向性」が重要であるか…

 自身の在り方を棚上げにして、知識や思考の枠組みだけを学習しても解放には繋がらない→教える側も教わる側も、それぞれのジェンダー意識を検証しつつ、学びを深める必要性がある




(3)一曲の歌をめぐるワークショップ

問い:

@ 「応援歌」と聞いて、思い浮かべたイメージを書いてください。

A 次の曲(研究室にあります)を聴いて、感じたことを書いてください。

『小・中・高・大〜トロフィーをかかげよう』――ウルフルズ「トロフィー」1999(東芝EMI株式会社)より


ウルフルズは「ガッツだぜ」「バンザイ」「明日があるさ」などのメガ・ヒットで一躍国民的人気ロック・バンドとなった。
 90年、シングル「やぶれかぶれ」にてデビュー。コアなロック・ファンからは高い評価を受けていたものの、一般的知名度は今ひとつであった。
 その後、お得意のソウル・フレイヴァーに関西的な人情/面白テイストを付加 ―― 結果、ウルフルズ独自の「ダサかっこいい」お馴染みのスタイルが確立した。
 今回紹介した『トロフィー』 は99年の作品。


作品から受け取るメッセージやイメージについて…

いつ、どこで、だれによって作られた作品であるか考える。

その作品がいつ、どこで、だれによって、どんなメディアを通じて届けられるか考える。
今ここを生きる私自身にどのように響くか考える。




本日のポイント:

作品を通じて照らし返される、わたしたちの「ジェンダー意識」をことばにしてみる

「ジェンダー」の問題は、階層差や民族性、歴史性などが絡まりあっている



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