優れたドキュメンタリー映画を観る会 vol.33

インタビュー飯田光代さん、特集「夏の嵐のあとに」について語る
「原点をもう一度、見つめ直そうと思いました。」

 

 「優れたドキュメンタリー映画を見る会」vol.33"夏の嵐のあとに" 「優れたドキュメンタリー映画を見る会」も、皆さんに支えていただきながら、回を重ねること33回。出発点は、映画を共に観ることを通じて、障がいを持つ子供たちを身近に感じ、支え合うきっかけになっら。。。ということでした。
  今回のチラシに主宰の飯田さんは、「かけがえのない人生で、それぞれのいのちが輝いている。命に優劣なんて、ない。」という言葉を掲げています。
  改めて、特集「夏の嵐のあとに」に込めた思いと、上映される12本の映画の魅力を、一本につき128文字以内で語ってもらいました。

飯田光代さん

 

 

 

 

飯田光代さん


今回は、いつにも増して「安心して暮らすってどういうことだろう? 福祉って何だろう??」と考えさせられる作品がキラ星のようにラインナップされていますね?

飯田:昨年7月に起きた相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」の事件は、ほんとうに衝撃的でした。容疑者の主張はむろんですが、ツイッターなどでそれに呼応するかのような意見が若者たちから出されたのもね。
けれど、その前年には、老人介護施設で職員が入所しているお年寄りを幾人も突き落とした事件があり、入所者に対する虐待の報道は後を絶ちません。
  21世紀になって15年以上経つわけですが、ハコが増えても、制度が整備されても、介護のメソッドが開発されても、それだけじゃ、何の解決にもならないんだよなあーって、改めて感じるんです。お膳立てだけでは、ダメだって。
  やっぱり大切なのは、人と人、心と心とを通わせ合う介護なんですよ。
  とはいえ、介護の現場では、看る方も看られる方も大変で、時にはバトルになります。けれど、それが良いエネルギーの対流になるには、何をどう考えて、どうしたら良いのかな、と。
  人と人、心と心とを通わせ合う介護の在り方を考えることが、「優ドキュ」の原点の一つでもあったし、今のわたしたちにとっても改めて大切なことなんじゃないかと思っていたら、今回のラインナップになりました。
  どの作品も、いのちの輝きに満ちています。この後、私なりの見どころをご紹介します。


ラインナップ作品、おすすめポイント


「人生フルーツ」
映画の実際の映像はカラフル。なのに、観終わって思い出そうとすると、白黒なんです。「ああいう暮らし、理想だな」と思うけれど。。。登場するお二人の、意思の強さこそが宝石ですね。映画の作り方も、対象との距離感がきちんとあって、近年稀に見るシックな映画です。

「LISTENリスン」
映画製作のすべてを、聾の人たちだけで行っています。テーマは「聾と音楽」。登場する男性が、「音楽の授業が大嫌いだった」と語っていますが、それは健常者の音楽に無理矢理引き寄せようとする教育だったから。健常者の方が歩み寄る音楽教育について考える契機になります。

「ダンスの時間」
ともかくねえ、主人公がチャーミングなんですよ。ダンスの女神そのものなんです。暮らしの中にダンスがある、生きていること自体がダンスと切り離せないとは、こういうことかって。「ダンスが生きることを肯定する」なんて言うとちょっと難しいけれど、観てもらえば一目瞭然!

「カレーライスを一から作る」
タイトル通りの中身なんですけど、市場経済で麻痺した感覚をぐっと揺さぶられます。今回は、聴覚障がい者向けバリアフリー字幕上映を行うので、ぜひご利用戴きたいですね。それから、観終わるとどうしようもなくカレーを食べたくなります。書いてる間にも食べたくなってきた!

「ぴぐれっと」
「なおちゃん」の後、伊勢真一監督が撮った作品。親御さんたちが、作業所「ぴぐれっと」を作り、次はグループホームも創ろう!と奮闘するまでが描かれています。今でこそグループホームは当たり前の存在ですが、草創期、どんな思いが撚り合わさって出来たのかがよく分かります。

「クワイ河に虹をかけた男」
戦争責任の取り方について、静かに問い直してくる作品です。このところ、戦争責任というと国家間の問題という報じられ方をすることが多いけれど、この映画では、たった一人の元通訳さんが被害者の元を訪ねることから、その心が周囲に波及し、国家を動かすまでが描かれます。

「見世物小屋」
この映画祭を支えてくれた故大原清秀さんが、リクエストし続けていた作品でした。「見世物小屋」を滅びゆく伝統芸能としてではなく、障がい者と健常者とが生きるために支え合う場として描いています。「医者も福祉も俺たちにゃいらない」と言う主人公の心意気を、観に来てください。

「きらめく拍手の音」
ご両親が聴覚障がいを持っておられる、その娘さんが撮った作品です。ご両親がまあ、実にパワフルでピュア、魅力に溢れたカップルなんです。観ているうちに、こちらがどんどん癒され、励まされ、暖かく愉快な気持ちに満たされて来る。上演当日は、韓国から監督さん、来ます。

「ここに居るさ」
出演者は全員、独居老人。飛騨高山の限界集落で、老人同士が互いに介護し合う、もしかしたら、未来を先取りした展開が描かれています。雪の無い時はバラバラに暮らし、豪雪になるとホームに集まって住むんです。驚くべきことに、アルツハイマーを患うメンバー、なんとゼロなんです。

「オキュパイ・シャンティ」
大塚にあるカレー店「シャンティ」の日本人店主が逃げ出した! 勤めていたパキスタン人・バングラデシュ人・インド人は、棲むところも追い出され、途方にくれるのですが、お店に籠城して作戦を開始します。これぞ逆境の中で、立ち上がり、支え合う姿から目が離せません。

「夜明け前の子どもたち」
1966年に設立された「びわこ学園」は、西日本初の重症心身障がい者施設。そこでは、看る者と看られる者との壮絶なバトルが繰り広げられました。あれから施設も制度も整ったけれど、見失ったものもあるのではないか。。。人が人に向き合うことの意味を、根底から問い直されます。

「赤い大地の若たち」
ブラジルの農地で佐々木神父はハンセン病の療養所と作業所を設立しました。一人の意思は多くの人々と対流し、その輪を拡げていきます。「優ドキュ」常連の岡村監督の作品は朝の時間帯の上演でしたが、今回は、最終日の大トリです! 併せて「佐々木神父と農学校」も放映します。