天栄米あれこれQ&A


「天栄村元気プロジェクト」の村外メンバーが、復興イベントなどで、天栄米の販売のお手伝いをする機会がありました。
そうしたとき、お客さんから質問されて困らないように、天栄米栽培研究会事務局長・吉成邦市さんのご協力を得て、天栄米を知るための「いろは」をまとめ、共有することにしました。
 このほかにも質問があれば、ぜひ、お寄せください。村の方々に伺って、アップいたします。

天栄村について

Q.天栄村ってどこにありますか?

A.福島県の中通りの南部、白河から車で20分ほどに位置しています。東北新幹線なら新白河駅、東北本線ならば鏡石駅、矢吹駅などを利用して行くことができます。東西の距離が36キロもあり、村の西端は会津地方に隣接しています。

Q.広さや人口などは?

A.広さは、225.56平方キロメートル。天狗のお面みたいな形をしています。人口は、2015年4月現在で、5772人です。昭和30年の昭和の大合併により牧本、広戸、大里、湯本の4村が合併して、村の中央にある天栄山から名前を取って、「天栄村」となりました。合併当初は1万人の人口でしたが過疎化が進み、今後このまま進むと2040年には4千人になると言われています。

Q.主な産業は?

A. 農業を基幹産業とした農村地帯です。工業団地もわずかではあるが立地しています。また、観光も大きな産業の一つであり、羽鳥湖を中心として、湯本温泉、二股温泉、ペンション村、レジーナの森、ブリティッシュヒルズが宿泊出来る施設となっております。高原の立地を生かしたゴルフ場が2箇所、スキー場が2箇所、オートキャンプ場、国体を開催したテニスコートと施設も充実しています。

Q.東日本大震災および原発の事故の被害状況についても教えてください。

A. 東日本大震災の震度は6強でした。全壊家屋172棟を始め、大きな被害を受けました。その後東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の被害を受けました。当初の空間線量は5.3マイクロシーベルトあり、全ての村民が大きなショックを受けました。現在の空間線量については原子力規制委員会「放射能モニタリングポスト」(村内18箇所の測定数値がリアルタイムでご覧になれます)をご参照ください。

天栄米について

Q.天栄村の農業の環境は?

A.村には大きな川が3本流れています。釈迦堂川、竜田川は阿武隈川に支流で東側の農地を潤す川です。西側には阿賀川の支流鶴沼川が流れており、これを堰き止めてできたのが羽鳥湖です。いまや観光スポットとして有名ですが、この羽鳥湖は日本海に流れる水を太平洋側に流し白河、矢吹、鏡石、須賀川の水田で利用されています。
 村の中央の鳳坂峠822mには分水嶺があり、阿武隈川の源流地域です。東西に36キロもあることと同時に、大きく標高差があることも大きな特色です。

Q.主な作物は?

A.米、きゅうり、なす、ニラ、ヤーコン、ネギ、インゲンなどの他多くの野菜ができる地域です。果樹についてはりんご、桃があります。

Q.天栄米の特色は?

A.天栄村は典型的な中山間地域(平野の外縁部から山間地を指します。山地の多い日本では、このような中山間地域が国土面積の73%を占めています。)です。
 天栄村の水田は、標高200mから600mまでの山間高冷地で、収量は多くはありませんが良質米のできる条件、水や粘土質などが揃っています。しかし、米の食味よりも収量を重視する考え方が中心だったこともあり、県内でも「天栄村のお米が美味しい」という評価はまったくありませんでした。「自称うまい米」でした。
 美味い米作りに挑戦できる、こうした好条件を本格的に活かそうと、2007年2月に「天栄米栽培研究会」(会員21名)が発足し、農家同士の情報交換を積極的に行って、チーム力による米・食味分析鑑定コンクール国際大会7年連続にわたって金賞を受賞しています。
 現在では、毎年、村内でも国際大会と同じ方法で、天栄米・食味コンクールを開催しています。米農家さんたちは、村内と国際大会の両方にエントリーして、切磋琢磨しています。

Q.「天栄米」というのは、具体的に、どういう種類がありますか?

A.「漢方栽培」、「特別栽培」、「有機栽培」の三種類です。
 まず、
  「漢方栽培」とは・・
漢方薬の煎じ滓を完熟肥料として使用しています。通常の栽培の5倍近い金額の肥料代がかかります。そして、収量は、通常の半分程度です。
  「特別栽培」とは・・
農林水産省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に従い,化学肥料、農薬を慣行栽培の半分以下にすることで栽培される方法で栽培された米で「特栽米」とも言います。村内では120haが栽培されています。
  「有機栽培」とは・・
JAS法が出来てから、「JAS有機」認証を受けた栽培法で作られたものを、こう呼びます。一定の農場で3年間以上、農薬や化学肥料を全く使わずに栽培したもの、さらに、その生産から最終包装に至るまで、有機性が侵されることのないよう厳しく第三者認定機関(国内67機関)の検査されたものに限り、JASのマークとともに有機又はオーガニックの表示が認められることになりました。天栄村では、3名の農家さんが現在1haほどの面積を行い取り組んでいます。
  いずれの農法においても、「土作り」に徹底してこだわり、良質な有機質をいれ生物多様性を育む「生物のゆりかご」となるよう、つとめています。天栄村の田んぼは、田植えの前に水を張った途端に、カエルが大合唱を始めます。タニシやミズスマシをはじめ、ホタルやトンボがいっぱいです。

Q.「天栄米」の農作業で、ことに気を使っている点は?

A.さまざまにありますが、「草刈り」と「収穫の時期」は重要ですね。
 「草刈り」は、害虫の発生を防ぐ上で、重要な作業ですが、管理の中でも特に労働力がかかります。なので、除草剤を使うことが多かったのですが、そうすると稲への影響も大きく、畦畔が崩れやすくなります。「天栄米」の田んぼでは、除草剤を使わず、農家さんが「草刈り」を行っています。
 「収穫」は、出穂からの積算温度を目安に行いないますが、ここが農家の見極めどころで、稲の色や水分などを判断して刈り取り適期を探します。刈り取った後ですが、美味しく食べていただくためには、「保存」も重要です。5月の連休までは通常の保管となりますが、気温が15度を超える頃から低温貯蔵庫を利用して保管しています。保存状態が良いと、新米よりも古米の方が美味しいこともあります。新米の時は香りは良いが熟成されていません。有機を多く含んだ肥料で栽培されることにより、アミノ酸体窒素を取り込めるようになり、このアミノ酸を含んだ成分が寒に当たるときに凍らないようにするために糖分へと分解する。雪下野菜なども同じ原理です。

Q.「米食味・分析鑑定コンクール国際大会」について教えて下さい。

A.まず、規模ですが、現在世界最大規模のコンクールでありその数は4000点を超え、年々増加しています。このコンクールには北海道から九州まで、ほとんどの県から出品されており、海外からもアメリカ、中国、台湾、ベトナム、韓国、タイなどから出品され、文字通りの国際コンクールです。
 「評価基準」ですが、1次審査(静岡正規の食味計)2次審査(東洋ライスの味度計)、最後に官能審査(審査員による実食審査)により決定しています。「美味しい米」とは、香り、艶、食感、甘みのバランスが良いお米のことです。最終審査の中から審査員の投票により上位10名に選ばれ、「金賞」を受賞します。

Q.「世界一のお米」と言っても、1kg1000円って、高くないですか?

A.あるとき、東京の有名百貨店のバイヤーさんから、「美味しいけれど売れないというのは、原発事故のせいじゃなくて、高すぎるからじゃないんですか?」とジョークを言われて、こちらが目を丸くしたことがあります(笑)。この値段にしたのは、次のような理由です。最初の年に、無農薬で、通常の5倍の良質な有機肥料を厳選して使用し、ミネラル分や微量要素(苦土、鉄分、カルシウム等)にも気をつけて、できることはみんなして「天栄米」を拵えたときに、収量はそれまでの半分しかできませんでした。つまり、肥料代が5倍で、収量が半分ですから、それまでの10倍の経費ということになりますよね。それで価格を割り出し、これ以下では無理だというところで設定したのが、この価格でした。これ以下の値段だと、利益が出ないよねということで。以後、手を抜かず、色んな工夫をして、少しずつ利益を出す努力をして、今日に至っています。

Q.どこで買えますか?

A.直接お求めになられる場合は、天栄村の道の駅と地元百貨店(郡山市うすい百貨店)に常時、おいています。
 ネットでの購入も出来ます。農家さんで直接販売をしている人もいます。著名な銀座の料亭や、作家さん、歌舞伎役者さん、俳優さん方からご注文を頂戴していますね。

Q.美味しいお米の炊き方は?

A. もちろん薪で炊きあげるカマドにはかないません。強い火力で短時間に炊き上げるのが、美味しさのポイントです。しかし、ご家庭の炊飯器でも、洗米、浸水時間にこだわることにより美味しく炊くことが出来ます。昔は、お米を強く研ぎましたが、今は精米技術が進んだので、押し付けて研ぐ必要はありません。かえってお米が割れることになるので、優しく洗米した後、40分、ざるに上げておく。その後、40分浸水時間を置いた後、炊飯する。やってみてください。

原発事故後の対応について

Q.やはり気になるのは、原発事故が「天栄米」に及ぼした影響なのですが?

A. まず、放射能による土壌汚染に関してですが、当初1148ベクレル(以下bqと表示)という発表でありましたが、場所によって違いがありました。天栄米栽培研究会で測定した場所でも、多いところでは3000bq、少ないところで700bqぐらいの差はありました。
天栄米栽培研究会では、事故後の3月30日に会議を行って、できる限りの対策をとった上で、休耕することなく、稲作を続けようということになりました。その取り組みは、DVD『米の放射能汚染ゼロへの挑戦』(DVDチラシ.pdf『米の放射能汚染ゼロへの挑戦』)および長編ドキュメンタリー映画『天に栄える村』にまとめていただきましたのでご参照ください。当時の状況下で、いち早く市町村が農家と連携して、独自に対策を講じて動いたという点で、独自性があると自認しています。
 放射能汚染対策の三本柱は、プルシアンブルー、カリウム、ゼオライトの使用です。
 プルシアンブルーに関しては、初年度は散布を試みたこともありましたが、以後は、不織布をプルシアンブルーで染めたものを、用水路に設置することで効力を発揮することが分かったために、使用後は回収しており、農作物に与えるリスクはありません。 
 カリウムは、2014年までは分蘖期(稲の株数が増える時期)に一番カリウムを必要とするのでそれに合わせて散布していたが、ゼオライトの散布を終了したために、元肥と一緒に散布することにしています。ゼオライトは春作業の最初に水田に散布していましたが、2014年で終了しました。
 天栄村ではカリウムもゼオライトも、米の食味を考慮して、2011年度から重ねてきた実験に基づき、最低限の数量を散布しています。

Q.現在の天栄村の農作物の状況について教えてください。

A.「天栄村役場の測定器による農作物モニタリング検査結果について」といった記事(「広報 てんえい」に掲載)をネット上でもご覧いただくことができます。ちなみに2015年3月15日現在()では、コシヒカリやこがねもちが
ND(未検出)のほか、ジャガイモ、白菜、ホウレンソウ、フキノトウもND(未検出)と報告されています。

Q.これからの「天栄米」について教えてください。

A.「美味しい米を作ろう!」という取り組みを本気で始めるまでは、天栄村は無名の地域だったと思います。地域が一体となって協力して、コンクールで金賞を受賞し始め、3回連続受賞を成し遂げたころには、日本全国の多くのお米屋さんから受注いただくようになりました。お米とともに村の名前も覚えてもらおうという夢が叶うかもしれないと思った矢先に、東日本大震災とそれに伴う原発事故が起こり、事故を境に、お米屋さんからは全く引き合いがなくなりました。震災前には台湾に販売網が出来て、現地でも評判のお米となりましたが、震災以降は輸入禁止措置が続いており、残念ながら未だに、再開のめどは立っていません。
 とはいえ、一年後に米の安全が確認されてからは、多くの方々から支援をいただいて、現在に至っています。農家の皆さんの頑張りで、金賞の連続記録も更新中です。現在は、各地で開催される復興イベントで直売会を行う、天栄米栽培研究会のメンバーが講演をする、映画『天に栄える村』の上映会をするなど、努力を重ねていますが、日本全国の方々にこれまで以上に、天栄村の取り組みを知っていただきたいなと思っています。
 それには、実際に村に足を運んでいただき、村の環境の素晴らしさや、食に対する安心・安全の取り組みを体感していただけたら嬉しいですね。

追記

「ND(Not Detected)」「不検出」
その器械の測定能力の限界で以下だったときに使用します。
 たとえば10bq以下のND。(測定器械が10bq間での性能で之を下回った場合。「検出限界以下」(微量だが摂取することのリスク)とは、NDと同じく検出限界=機械の性能、これ以下で測定に確信がないときに使います。

「放射能汚染ゼロへの挑戦」のタイトルにもなっている、ゼロの意味について、よく質問を受けます。
これは、「実際にゼロにする」という行為を指すのではなく(自然界で厳密な意味でゼロということはあり得ない)、「限りなく少なくゼロを目指す」という取り組みに関する姿勢のことです。実際に長時間測定すれば1bq以下までは計測出来ますが、機械ですのでゼロは測れません。数値があればこそはかれるというのが現実でしょう。しかし、原発事故以前の田畑や作物の数値がわからない以上、「限りなくゼロを目指す」ことが「元通りになる」ことと思って取り組んでいます。