ここじゃなくちゃだめだ。/山田 花


田舎は別に好きじゃない。虫は嫌いだし、重労働は苦手だ。天栄村は私の故郷でもないし、知っている人もいない。田舎はどこにでもある。田植え体験だってどこででもできる。別に天栄村じゃなくたってよかった。
 帰りに、「早く帰ってきてねー!」って村のおばちゃんがこちらに手を振っていた。帰る?どこに?ここに?
 きっかけはいろいろだった。田植えへの興味、福島への関心、天栄米作りへの興味、誘われたから。何でもよかった。いや、だからよかった。いろいろな理由できたたくさんの人たち。小さい子どもからおじいちゃんまで、男も女も、天栄村の人もそうでない人も。
 米はうまい。山は美しい。でもなにより、人がいい。米を熱く語ってくれる人がいる、失敗も笑ってくれる人がいる、帰って来いと言ってくれる人がいる。かっこいいではないか。あたたかいではないか。
出会いは一期一会だという。でも、あそこには、待っていてくれる人がいる。新しい出会いもある。
田舎は別に好きじゃない。虫は嫌いだし、重労働は苦手だ。天栄村は私の故郷でもないし、知っている人もいない。田舎はどこでもある。田植え体験だってどこででもできる。でもあの人たちは天栄村にしかいない。あの人たちとは天栄村でしか出会えなかった。ここじゃなきゃだめだ。

   
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