【戯曲】 星空、その下で/後藤 伸太郎

  東北地方の田舎町。
   初夏、うだるような昼の暑さはまだ残っているが、日はすでに暮れている。
   明かりのない山道を分け入るように上ってくる一台の車。

ハルト まだかな?明かりがなくなってからだいぶ経つ気がするけど。
ユウキ 着いたよ。

  車から降りるハルト。

ハルト ここかあ。ほんとになんにもないね。
ユウキ ライト消すよ。いい?

  辺りは真っ暗。満天の星空。

ハルト うわあー…こりゃすごいな。
ユウキ 都会じゃ見られないかな。
ハルト 無理だね、街の明かりが明るすぎるし、スモッグもかかる。
ユウキ そうか。こっちじゃこれが当たり前だけどね。
ハルト すごいな…ほんと。感動だよ。ありがとう、こんないい場所を紹介してくれて。
ユウキ 全然いいよ。そんなにいいの?ここ。
ハルト うん。鹿児島とか長野とか行ったけど、それとおんなじくらいすごいよ。俺将来は天文をや りたいんだけど、そのきっかけが長野で見た星空でさ。
ユウキ そうなんだ。
ハルト うらやましいな。
ユウキ 俺は都会暮らしの方がうらやましいけど。
ハルト そうなの?ああ、チャットでも言ってたっけ。
ユウキ やっぱり思い出しちまう時もあるし。
ハルト 思い出す?
ユウキ あの時は電気も全部止まったし。暗くなったらやることねえから星を見るか寝るしかない。
ハルト そうか。大変だったよね。
ユウキ ああ、そういうつもりで言ったんじゃないけど。

  星空を見上げる二人。

ユウキ けどまあ、地上で何かが起こっても、星には関係ないんだよね。
ハルト 確かに。星から見れば、ユウキの住んでるこの場所も俺の住んでる場所も、同じようなもんだしね。
ユウキ そうか、それは言えてる。あ!

  その時、空に一筋の流星

ユウキ …見た?
ハルト 見えた。すっごいはっきり見えた。
ユウキ あんなのは初めて見た。…そろそろ、行く?

  車に乗り込む二人。

ハルト 何か、願い事とかした?
ユウキ それって、誰かに言うと効力なくなるらしいよ。

  エンジンをかけ、ライトを点ける。
  星明かりは小さくなる。

―完―

   
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