【随想】 都会と田舎。ある村と天栄村。/山田 花

私はアイスクリームが好きだ。牛乳たっぷりのアイスクリーム。もったりしていて、一口でいっぱいに広がる、濃厚な甘さ。そんなアイスクリームが好きだ。
シャーベットはあまり食べない。オレンジとかリンゴとかの果汁でできている。シャクシャクしていて、あまり甘くない。いまいち、シャーベットでは物足りないのだ。どれを食べても同じ感じがする。
じゃあ、アイスクリームは私のことどう思っているのだろう。アイスクリームは溶けやすい。すぐ液体になってどこかへ行こうとしてしまう。しかも、溶けたアイスクリームはベタベタしていて、手にでもつけばすごく嫌な感じがする。それが嫌なら急いで食べろと、急かして来るのだ。それに、アイスクリームは甘すぎて、一つしか食べられない。主役でなければならないし、他と違う、大きな何かがないといけないと思っている。アイスクリームは特別扱いが好きなんだ。アイスクリームは私のことはあんまり好きじゃないみたい。
私だって、一度食べたらしばらくは食べたくない。しつこいんだもの。
じゃあシャーベットはどうか。まず、牛乳が入ってないから溶けにくい。食べるのが遅い私を待っていてくれるみたい。だからそもそもあんまり手につかない。それに、シャーベットは甘すぎないから、一つだけと言わず二つ三つ食べられる。シャーベットはちょっと控えめだ。私のことも迎えてくれる。
でもシャーベットは何を食べても同じ感じがする、…に違いない。あんまり食べないからわからない。でも、好意的なシャーベットをほったらかしにするのも申し訳ない。好意には応えるべきだろう。だから昨日食べてみた。なるほど、違う味だった。当たり前といえば当たり前なのだが、柑橘系の爽やかなオレンジと、甘くてくっついてくるくせに、スッと引くリンゴは、思ったより印象が違った。しかも、食感が全然違う。オレンジはちょっと固め、リンゴは口の中ですぐに溶ける。シャーベット、全然同じじゃないじゃないか。あ、また食べたい。
そうか、天栄村はシャーベットだ。

   
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