対談:天栄・“人”を語る

文責…小須田 真輝・土屋 遥一朗

土屋:あまり遅くなるから、それじゃ…
小須田:よろしくお願いします。
土屋:マサキくんは三回目の天栄村だったわけだけど、どうでした?
小須田:新しい天栄村と、新しい人に出会えました。
土屋:新しい、というと…
小須田:緑色じゃない田んぼとか、ブルーベリーとか、きのことか、あと木工とか…
土屋:ああ確かに、田んぼの風景もそうだけど、今回は色んな新しいものに出会えた旅だったね。じゃ、そこでの出会いが「新しい人」との出会いってことか。
小須田:はい、とくに木工職人の矢板さんと話したことを覚えてます。僕がバンドをやってるって話をしたんです。そしたら矢板さんが「おれもバンプ好きなんだ」って話をしてくれて…。
土屋:へぇー、なんかおすすめの曲とか教えてもらったり?
小須田:何曲かおすすめされたんですけど、「『fire sign』だけは聴いて!」って言われました。なので、家帰ってすぐ調べて聴いてみました。「風を知って 雨と出会って 僕を信じて燃えてる」って歌詞があるんですけど、そこがすごくいいな、って思いました。
土屋:うんうん、矢板さんに教わったその曲が、お気に入りの一曲になったんですね。なるほど、それはマサキくんらしい話ができたね。
小須田:はい、他にオススメされた曲も聴いてます。ところで、土屋さんが今回のツアーで印象に残ったことはなんでしたか?
土屋:そうだねぇ…稲刈り、新米、高速人間コンバインとかいろいろあるんだけど、あれかな。僕はいちおうブンガクやってるってこともあって、「言葉」を探す旅にしようと思ってたんですね。いろんな人からいろんな言葉が聞けたらいいなあと。
小須田:完全にコンバイン化してましたね(笑)…それで、どんな言葉を?
土屋:豊作ですよ(笑)まず、一日目の懇親会で前野さんとお話したんだけど、会って早々「覚えてるよー!」って言ってくれて。これは嬉しかったですね。それから、前野さん自身の移住体験を話してくれました。それで一番良く覚えてるのが、「ここはそれぞれの人に、それぞれの姿をみせてくれる村だ。ほんとうに、『天に栄える村』なんだよ」って言葉です。つまり、ここに来る人それぞれの求めるものや、見たものによって、その人だけの素晴らしい姿を見せてくれる村なんだ、ってことです。それだけ色々なものや、風景や、人がたくさんある、「天栄村」なんだよ、と。これはまさに!と思いましたね。これまでのツアーで仲間たちの書いた文章を読ませてもらったり、話をしたときに、ほんとにそれぞれがそれぞれの天栄村を見てるなあ、って思ったのと重なりました。
小須田:僕も村の人に「おかえり」と言われてニヤケてしまいました(笑)
土屋:あーそうなんだ(笑)でも、それほんと嬉しいよね。前野さん、「こんど来るときは電話しなー!」って言ってくれたり、「次は『ただいま』だな!」って言ってくれて!
小須田:おおー。
土屋:ね、嬉しいでしょ!いやぁー、これが人を受け入れる「人の力」なんだなって思いました。他の色んな人からも、「移住するときに大事なのは、そこの『人』とどう関わるかってことだよ」というお話が聞けたなあ…。
小須田:でも移住って、住む環境も人も変わるので、大変そうなイメージもありますよね。
土屋:うんうん、確かに冬は雪も降るそうだし、大変なこともあると思う。その辺りは、ブルーベリー農家の上野京子さんの言ってたことが印象的だったかな。
小須田:へえ、それは…?
土屋:「雪を楽しくする」。雪はたしかに大変だけど、雪かきを毎朝の楽しみにしてる、ってのを聞いて、そういう風に考えればいいのか!って感心しました。それから、ヒロロのミノづくりを通して村の人たちと交流を深める、という風にいろいろなことを楽しみに変えたり。これも生活の知恵だなあ…。
小須田:ですね。普段の生活でも、大変なことは考えを変えて、楽しみにするというのは参考になりますね。ところで、今回の懇親会では村の人と話をする以外にも朗読劇や歌の発表をしましたね。
土屋:うんうん。その節はお聞き苦しい朗読を…(苦笑)あ、それから音声さんありがとうございました(笑)朗読の後で、作者の後藤さんがおっしゃったことにグッと来ました。「自分が書いたものが上演されるって経験がなかったので、すごく恥ずかしかった。けど、今日読んでくれたのを見て思ったのは、舞台ってのは、演じる技術などはもちろんだけども、なにより大切なのは『人が演る』ってことなんだなあと、あらためて実感しました。」というような言葉でした。
小須田:おおー。
土屋:正直、泣きそうになりました。自分が演ったものが届いたってのもそうなんですけど、本場で経験を積んだ人から、こういうお話を聞けたことに感動しました。『人がやる』ってのは、舞台に限らず、なにか表現をする上では忘れちゃいけないことなんだ、と。これから何か書くとか表現するときは、まずこの言葉を思い出すようにします。それにしても、後藤さんのあのときの表情、良かったなあ…。
小須田:何かが相手に届いたときの、相手の表情をみるのはいいですよね。
土屋:ほんとね!…あ、最後にひとつ、これは番外編なんだけど…。どうしても忘れられない言葉があるんです。シイタケ農家の大野さんが昔を振り返って思わず漏らした、「東の空見て笑いが止まんねがったぁ!」…いやあさすが農業十傑!って感じでした(笑)。それに、こういう言葉こそ、素直な感情がこもった、生きた言葉なんだなあって。本当に文学的な言葉ってのは、こういう言葉なんじゃないかなって思うんです。…いつかはこういう一行、書けるようになりたいです。
小須田:頑張ってください(笑)
土屋:頑張ります(笑)…というわけで、だいたい言いたいことは言えたかな?いやあ、今回の旅も楽しかったです。前野さんの言ったとおり、次はぜひ「ただいま!」で帰りたいと思います。それから、「おばんでございます」も言ってみたいな。…マサキくん、どうもありがとうございました。
小須田:ありがとうございました。次行くときは、僕もただいまで帰ります!

 

   
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