「種まき」の記(2015・4・11、金井景子)

 夜中まで一緒に「廣戸川」を飲んでいた岡部さんが、
「明日はゆっくりでね、8時半に来て下さい」
と言い残して帰られてからも、嬉しくなって前野さん(いつも、宿泊のお世話になっているマッサージ治療院のゴッド・ハンドの持ち主です)と明け方4時までおしゃべりに興じていた私。
楽しく飲むと、一升瓶空けても残りませんね。

 岡部さん、前野さんともに、64歳とは思えぬ元気な御二人にパワーを頂戴して、今年も「種まき」に参加してきました。

 篠つく小雨でしたが、これくらいならば雨天決行!
積み上げられたバット(種が育つベッド)の横には、仲間の農家さんで共有しているベルトコンベア(土・種・土・水の順で落ちてきます)がセットされ、すでに作業は始まっていました。
 6人ばかりのメンバーが、バットを設置する、土や種を足す、機械を調整する、出来上がったバットをトラックの荷台に揚げるなどの仕事をこなして行きます。
 去年はこのしごと、初参加で、バットを置くしごとを主にさせていただきましたが、今回の前半は、出来上がったものをトラックの荷台に移すパートを主にしました。

 写真はそのしごとを一緒にした、大輔くん(岡部さんのお孫さん)の勇姿です。この春から中学生、野球部に入ったそうです。

 しごとを一緒にすると、そのひとがほんとうによく見えますよね。大輔くん、無駄がない上に、周囲がよく見えていて、私という闖入者をさりげなく気遣ってくれていました。ありがとう!
また来年一緒にしごとができたら幸せだなあと思いました。

 バットは1枚、6キロ弱あって、岡部農園では今期、1350枚作ります。この日はその約半分弱くらいを作りました。1枚だけだとまあ、何てことはないけれど、2枚となるとグッと来ます。傾けたり乱暴に扱うと土や種が寄ってしまうので、大切に扱います。

 「最近はみんな機械化されているから、農業も楽になった」

とは農家さん自身もよく口にされることばですが、実際の作業に参加すると、20?25キロの土や種の袋を、胸よりも上に持ち上げて機械の中に入れる(その袋が倉庫の横手に山積みです)といった作業や、荷台に積まれたバット10個を動かす(50キロ以上)といった作業は、地味に人間がやっています。
 我々都会人とは鍛え方が違う農家さんではありますが、まったくもって「楽」じゃありません。

 作業の後半には、大きなビニールハウスの中に、出来上がったバットを並べて行く作業のお手伝いをしました。これはトラックの荷台から並べる位置まで、手から手へ、はしごみたいなローラーの道を作って転がし、最後はやはり手で、ぴっちりと並べて行きます。

 あまりにも綺麗に白いビニールシートで覆われていた場所があり、てっきりこれからバットを並べる場所だと思ってスタスタ歩いてしまったら、
「センセイ、踏んでっぱい(笑)」
と清水さん(農家さん)に教えられて青くなりました。そこはすでに作業が終わっていたところだったんです。慌ててシートをめくって足跡を消そうと思ったら、そのままにしておけとのこと。ちょっと発育が遅くなっても追いついて来るんだそうです。

「妊娠8ヶ月でも、このしごと、したよ。置くときにお腹、つっかえてねー(笑)」
「昔はこのバットが木箱だったから、もうほんと、重かったね」

 作業の合間に聞かせて下さる話、沁みました。からだを動かす中で、思い出されてくるものを、からだを動かしている耳で聴くと、忘れないだろうと思います。居間や教室で聞くと、説教や愚痴、自慢に聞こえるものの多くも、「場」を共有して届けることで、きっと違って受け止められると思いました。

 「結い」でするしごとには、瞬発力が要されるものと持続性を要するもの、複雑なものから繰り返しのもの、ほんとうに色々あります。流れを良く観て、自分に合ったしごとを見つけて、邪魔にならないようにできると、嬉しいですね。

 きっと来年には、野球部で足腰を鍛えられた大輔くん、ひょいっと25キロ、持ち上げるんだろうなあ。私も徐々に身体改造中ですから、1、2袋は何食わぬ顔してやってのけ、自己満足したいものです。