2004年度 よむよむ座 第三回
 
響きで聴く<古代>――「日本」が出来る前のリズム

パフォーマーと演目の解説


者紹介:
松本直樹。早稲田大学教育学部国語国文学科教員。

6月23日のよむよむ座は、上代文学がご専門の松本直樹先生に、「出雲風土記」(いずもふどき)より"国引き神話"の部分の解説と朗誦をしていただきます。

――「出雲風土記」の特徴について教えてください。

「風土記」は、もともと地方の物産や土地の報告を、たとえば土地がどれくらい肥えているかなどを、報告させるために大和朝廷が作らせたものです。和銅六年に官命が出ました。それと同時に、その地方に伝わる地名起源神話や、古老の伝える神話伝説を大和朝廷に報告させる目的もありました。これは大和朝廷にとっては全国のイデオロギーを支配するためには必要だったわけです。
「出雲風土記」は、国造(こくぞう、=昔からその土地を支配している在地の首長)である出雲の大臣(おみけ)が作り上げた神話が収録されている点に特徴があります。つまり、「古事記」や「日本書紀」とは違った神話の主張が「出雲風土記」に記述されているということです。
天皇支配の影響を受けた神話、たとえば、天皇が行幸してきてその土地の地名をつけた、といったことは「出雲風土記」にはありません。出雲独自の地方色豊かな神話がある、そういう「風土記」です。

――今回取り上げる"国引き神話"とはどういった神話でしょうか。

 「出雲風土記」の"国引き神話"の部分には、本来口承されていた神話の「……國の余りありやと見れば、國の余りあり」といった言葉の繰り返しがあり、口承神話のスタイルを踏襲しています。言葉のリズムがある部分です。
"国引き"とは、出雲の国は小さい、でも新羅(朝鮮)に土地の余りがあるので、そこへ綱を投げて引っ張って出雲の国にくっつける。他に北陸地方にも土地が余っているからまた綱に引っかけてくっつける。引っ張ってきた時の綱が海岸線になったり、その綱を結び付けている杭が山であったり、……というように、四回にわたって現在の島根半島を出雲に縫い付けたという神話です。具体的な地名や場所については当日解説します。

松本先生はこの後、江戸時代の版本の「出雲風土記」を見せてくださいました。みなさんも、いったいどのように"国引き"が行われたのか、想像してみませんか。6月23日、ぜひ聴きにいらしてください!