勝藤研究室
Katsufuji Lab.       早稲田大学 先進理工学 物理学科width="100%"

トップページ  はじめに  研究内容  Member  卒論・修論・博士論文  Publication List 実験室紹介  学部生向け 研究室紹介動画 Link  
 ■Ti3O5の光誘起相転移における選択則
Ti3O5は室温から温度を上げていくにつれて、β相→λ相→α相と2度の構造相転移を起こし、ナノ結晶にパルスレーザーを照射するとβ相からλ相への永続的な光誘起相転移が起こることが知られている。我々は、Ti3O5単結晶のパルスレーザーを用いたポンププローブ分光測定を行った。その結果、ac面にa軸偏光のパルスレーザーを入射した場合は、β相からλ相への相転移は起こらず、β相内に留まっていることが明らかになった(図2右)。こうした結果は、Ti3O5がβ相からλ相へ相転移をする際、c軸の格子定数が5 %程度という大きな変化を示すこと、レーザー光の径が1 mm程度であるため、レーザーを照射した面内方向に格子定数の変化が大きいc軸があると、1 mmの5 %の変化、すなわち数10 μm程度の変位を起こす必要があり、結果として10-12 s程度の時間スケールでは格子定数の変化は起こり得ず、相転移が抑制されるためであると考えられる。
一方、ab面にパルスレーザーを照射するとc軸方向のサイズは光の侵入長の100nm程度に留まり、5%の変化を起こすことは容易であるため、光誘起相転移が起こる可能性がある。図2左に示すように、ab面にa軸偏光のパルス光を照射すると光誘起によるスペクトル変化はβ相からλ相へのスペクトル変化と一致し、光誘起相転移が起こっていることが明らかになった。これらの結果は光誘起相転移における自明でない選択則としては初めて見出されたものであり、相転移に伴うマクロな歪とレーザーによる照射部分のサイズという光誘起相転移特有の要素との関係によって生じる。またナノ結晶ではこうしたマクロな歪は起こりえないことが、Ti3O5ナノ結晶において永続的な光誘起相転移が起こることと関連していると考えられる。






図2 上:Ti3O5の光誘起スペクトル変化(赤線と青線)と通常の相転移に伴う反射率変化(黒点線)の比較。
下:上の2つの光誘起スペクトル測定それぞれの光の入射方向、偏光方向と相転移に伴う歪の模式図



T. Saiki, T. Yoshida, K. Akimoto, D. Indo, M. Arizono, T. Okuda, and T.Katsufuji,
“Selection rule for the photoinduced phase transition dominated by anisotropy of strain in Ti3O5”,
Phys. Rev. B 105, 075134 (2022).

<<  研究内容に戻る


Copyright © Katsufujji Lab., All rights reserved