わが国の経済は、基本的には市場の働きによって民間の経済活動が調整される資本主義経済システムだが、政府のさまざまな活動が補完的な役割を果たしている。ところが近年になって、政府の経済活動の見直しが重要な政治経済的テーマとなってきた。市場がうまく機能しない公共領域であるために政府活動が要請されたにもかかわらず、政府もまた失敗してしまったからである。
公共経済学は、このような公共領域を分析の対象とし、厚生経済学、財政学、一般均衡理論、情報の経済学などを母体として発展してきた経済学の新しい領域である。この講義では、「厚生経済学の基本定理」に結実した市場メカニズムの理想状態での特性を明らかにするとともに、市場の失敗に潜む論理を解き明かし、市場の失敗を解消するためのメカニズムの設計可能性について論じる。市場が存在しない、あるいは市場機構が良好に動作しない状況こそが、私的領域と区別された公共領域の特徴であり、そこでの社会的意思決定や資源配分・所得分配・費用負担の方式を考察すること、個人の自己利益追求と社会厚生の追求との対立を解明すること、市場の失敗の解消や制度設計のために要求される価値基準(効率性、衡平性、正義など)を構築すること、などが公共経済学の課題となる。個人的合理性(個人にとっての自己利益の追求)と社会的合理性(社会にとっての善の追求)との対立を解明することから始め、市場の失敗の解消や新しい制度設計のために要求される正義原理を考察する。そして、できるだけ多くの現実の問題(環境、年金、介護、福祉など)に触れながら、公正な社会経済システムの構築可能性について検討する。
定期試験によって評価点を決める.レポートの提出を求める場合もある.
過去の中間試験試験問題を掲載しますので、参考にしてください。中間試験は6月7日2時限です。
1.第2章の講義用スライド(改訂版)29-39ページを参考に、添付の問題を解きなさい。 なお、第2章の講義用スライド(改訂版)はホームページにアップロードしています。アドレスは http://www.f.waseda.jp/ksuga/ です。 レポートの形式は問いません。コースナビで提出してください。提出締め切りは5月14日です。
2.配布した第3章のスライド23ページに示した「もう1つの可能性」の議論を完成させなさい。ただし、<ステップ1>の後半から<ステップ6>までと同じ論理展開を正確に記述すること。提出締め切りは5月21日です。
次は、就職活動で授業に出席できなかった人、アローの不可能性定理に興味を持った人のための「追加問題」です。
アローの不可能性定理を、2人3選択対象の場合で考える。今度は無差別を許すとして、授業で説明した方法で示しなさい。提出締切りは5月31日です。
注:ここでは、「パレート原理」は次のような強い意味で用いるとします(この方が議論が簡単になる)。すなわち、すべての個人が x を y より悪くはないと判断し、さらに x を y より厳密に望ましいと判断する個人が存在する場合、x は y より社会的に厳密に望ましい、とする。また、「独裁者」とは、任意の x と y に対して、その個人が x を y より厳密に望ましいと判断するならば、x は y より社会的に厳密に望ましいと判断されるといった条件が成立する個人のことです。したがって、独裁者が無差別ならば、どのような選好も許されるとします。
メールの添付書類として提出してください。