㈽.文献注の表記法



文献注は,他者が論文に書かれている内容を追試・再検討する際に参照するものであるから,誰が読んでも,どの文献の,どの箇所かが確定できなければならない.そのためには書名,論文名,著者名,巻数,発行年月,出版社名などは,必ず記載しなければならない.また,混乱を避けるために記載順序や記号等の使い方も決っているので必ず遵守しなければならない.なお,文献注の表記法には大きくわけて2通りの形式がある.㈽−1,㈽−2を理解したうえで,㈽−3の形式を読むこと.

以下では,横書の文献注の場合を示す.縦書の場合は,発行年,ページを漢数字にすればよい.また,卒業論文の末尾に掲げる文献目録の場合も,これに準ずるが,異なる形式もあるので,㈽−3を参照せよ.

㈽−1 日本語文献

㈰単行本

a.その書籍を初めて記載する場合には,以下の形式で記載する.

著者名+『+書名+』+出版社名+読点+発行年+読点+引用ページ+句点
[例]
二階堂副包『現代経済学の数学的方法』岩波書店,1960年,p.192.

b.著者が複数の場合,著者名と著者名の間に中グロ(・)を入れる.

[例]
鈴木光男・武藤滋夫『協力ゲームの理論』東京大学出版会,1985年,p.149.

c.翻訳書の場合,訳者名+訳を著者の後に入れる.

[例]
K・J・アロー,長名寛明訳『社会的選択と個人的評価』日本経済新聞社, 1977年,p.94.

d.書籍が複数巻の一部の場合,当該巻数あるいは巻名を書名の後に入れる.

[例]
O・ランゲ,竹浪祥一郎訳『政治経済学』第㈼巻,合同出版,1962年,p.57.

e.当該巻が叢書などの一部の場合,書名の後に〈叢書名〉.

[例]
石川経夫『所得と富』〈モダン・エコノミックス〉13,岩波書店,1991年,p.51.

f.編集された書籍の場合,著者名の代わりに編者名+編.

[例]
小宮隆太郎・奥野正寛・鈴村興太郎編『日本の産業政策』東京大学出版会, 1984年,p.215.

g.同一の書籍を第2回目以後の注で利用する場合.

 i) 同一の書籍の注が連続していない場合.

著者名+読点+前掲書+読点+ページ+句点
[例]
二階堂副包(1960年a),前掲書,p.195.
(注意)同著者の同年の著書が複数ある場合には,()内のように年やa,b,cで区別できるようにしておく.

 ii) 同一書籍を連続して記載する場合.

[例]
同書,p.201.

㈪論文・定期刊行物

a.その論文・定期刊行物を初めて記載する場合には以下の形式で記載する.

 i) 雑誌論文の場合には以下のように記載する.

著者名+「+論文名+」+括弧開け+『+雑誌・定期刊行物名+』+巻数+読点+号数+読点+発行年+括弧閉じ+読点+ページ+句点
[例]
酒井泰弘「寡占,情報および厚生」(『筑波大学経済学論集』第20号,1988年),p.23.
奥村宏「新しい企業像のために」(『世界』1992年2月号),p.29.

 ii) 編著書中の論文

論文著者名+「+論文名+」+括弧開け+編者名+編+『+書名+』+出版社名+読点+発行年+括弧閉じ+読点+ページ+句点
[例]
稲田献一「社会的福祉とは何か」(熊谷尚夫編『経済政策の目標』日本経済新聞 社,1972年),p223.

b.同一の論文・定期刊行物を第二回目以後の注で利用する場合

 i) 同一の論文・定期刊行物の注が連続していない場合は,単行本【㈰のgのi) 】 と同じ.

[例]
稲田献一(1972年a),前掲論文,p.227.
(注意)同著者の同年の論文が複数あるときは,()内のように年やa,b,cで区別できるようにしておく.

 ii) 同一の論文・定期刊行物を連続して記載する場合は,単行本【㈰のgのii) 】 と同じ.

[例]
同論文,p.228.

㈫新聞等

『+新聞名+』+発行年月日+朝刊・夕刊の別+句点
[例]
『日本経済新聞』1992年6月23日朝刊.

㈽−2 外国語文献

㈰全般的注意

・a.著者名は,

姓+コンマ+1字空け+イニシャル+ピリオド+1字空け
ただし,著者が複数のときには2人目以降を次のように続け,最後の著者名の前ではand,それ以外の間ではコンマを入れる.
イニシャル+ピリオド+1字空け+姓
[例]
Kihlstrom, R. E., A. E. Roth and D. Schmeidler

・b.書名はイタリックで書く.ただし,タイプ書きするときはイタリックの代用としてアンダーラインを用いる.

・c.㈵−2の㈪も参照せよ.

・d.ページが複数にわたる場合には,pp.を用いる.

[例]
pp.25-38.

・e.名称の長い書籍の場合,1回目に断わりをつけて,2回目以降は略称を用いる.

[例]
Papers Relationg to the Foreign Relations of the United States[以下FRUSと略] →(2回目)FRUS

㈪単行本

a.初めて単行本を記載する場合.

著者名+コンマ+書名+括弧開け+出版地+コロン+出版社+コンマ+発行年+括弧閉じ+コンマ+ページ+ピリオド
ただし,版名を入れる場合は,書名の後.[例](5th ed.)
[例]
Luce, R. D., and H. Raiffa, Games and Decisions,(New York: Wiley, 1957),p.123.

b.編集された書籍の場合,著者名の代わりに編者名+ed.(編者が複数の場合, ed.の代わりにeds.)

[例]
Avineri, S., and A. de-Shalit eds., Communitarianism and Individualism, (New York: Oxford University Press, 1992), PP.53-55.

c.同一の単行本を第2回目以後の注で利用する場合

 i) 同一の単行本の注が連続していない場合

著者名+コンマ+op.cit.+コンマ+ページ数+ピリオド
[例]
Luce, R. D., and H. Raiffa〔1950a〕, op.cit., p.95.
(注意)同著者の同年の書籍が複数ある場合には,〔 〕内のように年やa,b,cで区別できるようにしておく.

 ii) 同一の単行本を連続して記載する場合,Ibid.を使用する.

[例]
Ibid., p.98.

㈫論文・定期刊行物

a.初めて論文・定期刊行物を記載する場合

 i) 雑誌論文

論文著者名+コンマ+”+論文名+”+雑誌名+コンマ+巻数+コンマ+号数+コンマ+発行年+コンマ+ページ+ピリオド
[例]
Sen, A.K., "Social Choice Theory: a Re-examination" Econometrica,
Vol.45, 1977, pp.53-89.

 ii) 編著書中の論文

論文著書名+コンマ+”+論文名+”+in+編者名+ed.+書名+括弧開け+出 版地+コロン+出版社名+コンマ+発行年+括弧閉じ+コンマ+ページ+ピリオド
[例]
Machina, M. J., "Dynamic Consitency and Non-expected Utility," in
Bacharach, M., and S. Hurley, eds. Foundations of Decision Theory, (Oxford: Basil Blackwell, 1991), p.55.

b.同一の論文・定期刊行物を第2回目以後の注で利用する場合

 i) 同一の論文・定期刊行物の注が連続していない場合,op.cit.を使用する.

[例]
Sen, A. K.〔1970b〕, op.cit., p.78.
(注意)同著者の同年の論文が複数あるときは,〔 〕内のように年やa,b,cで区別できるようにしておくこと.

 ii) 同一の論文・定期刊行物を連続して記載する場合,Ibid.を使用する.

[例]
Ibid., p.81.

㈽−3 文献注の諸形式

ここでは引用文献,出所文献および文献目録等に関する諸形式について説明する.しかしながら,この項を読むにあったては,前もって㈽−1,㈽−2を十分に理解する必要がある.以下では,主だった形式について解説する.

㈰㈽−1,㈽−2のように引用文献注,出所文献注のところで引用文献・出所文献に関する著者名,著書名,出版社,発行年等を完全な形ですべて記載する形式.

㈪引用文献注,出所文献注のところで引用文献・出所文献に関する著者名,著書名,出版社,発行年等を完全な形ですべて記載するのではなく,巻末の文献目録のどれかを指定するような形式.これには,さらに,巻末文献目録に番号をつけ,その文献目録番号で指定する方法と,著者名,発行年,a,b,cなどで指定する方法がある.

[例1]
本文中で,
塩野谷祐一〔1984b,39ページ〕による効用概念とは,…
「古典学派の理論の欠点は,……基づくにすぎない.」(ハロッド〔1939a, 25ページ〕)
「……経験したのである」(7)
引用注中で,
(7)J・ヒューズ〔1977c〕,373ページ.
文献目録で,
塩野谷祐一(1984b)『価値理念の構造−効用対権利』,東洋経済新報社
R・F・ハロッド(1969a),清水幾太郎訳『社会科学の方法』岩波書店.
J・ヒューズ(1977c),角山栄ほか訳『世界経済史』マグロウヒル好学社.
(注意)このような形式では,発行年は概して著者名の直後に付ける.

[例2]
本文中で,
榊原・薬師寺の言う予測とは(15)
引用注中で,
(15)榊原・薬師寺〔8〕,138ページ.
文献目録で,
〔8〕榊原英資・薬師寺泰蔵『社会科学における理論と現実』日本経済新聞 社,1981年.


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