作品短評 SIGGRAPH99

草原真知子(メディアアート・キュレーター)


On SIGGRAPH 99 Artworks by Machiko Kusahara



 今年のアートショーは昨年に比べると古典的で小粒な印象を免れない。意図的に画廊の雰囲気を狙ったのか、会場に入るなり壁面にずらりと平面作品が並ぶ。全体に上品な趣味でまとめたためか意外性のある作品はなく、やや均質な感じがするし、これだけ並ぶと互いに相殺してしまい、それぞれの作品は悪くないのだがあまり印象に残らない。
 岩井俊雄の作品をはじめとするインタラクティブ・インスタレーション(半数以上が日本からだった)に人気が集まるのは当然だっただろう。一方、大学や企業の研究所からの展示を中心に、VRなど最先端技術の応用を見せるEmerging Technologiesは、今年はかなりアート寄りの展示で、ソムラー/ミニョノー、レベッカ・アレンなどのアーティストもこっちに出ている。
 インパクトがあったのはMIT Media Labの石井裕の研究室で、全体に昨年に続き、日本とMIT Media Labが目立った。


1. 岩井俊雄 Composition on the Table

 今回のアートショー最大の話題で、4つのテーブルは常時人に取り囲まれ、来場者からは、楽しくて技術的にもユニークで、しかも確かにアートと言える作品が存在することに嬉しい驚きを覚えた、という声が少なくなかった。
 SIGGRAPHという場の雰囲気もあって、来場者が協力しあいながら作品を楽しんでいる光景が見られ、岩井の作品が持つコミュニケーションの場としての特質がよく発揮されていた。


2. 石井晴雄「ハイパー・スクラッチ」

 作者が長年にわたって進化させてきたシステムを使っているだけに、完成度の高い作品になっている。何も装着しなくていい空間インタフェースと、むしろベーシックな光源と音源を組み合わせ、指さしたり手を振るだけで暗闇のその方角に草むらの蛍のように光が点滅し、音が鳴る。繊細な美しさが印象に残った。  奥まって気づきにくい場所にあったことと、初期の作品から続いている名称がこの作品には合っていないのが惜しまれた。

3. Jean-Pierre Hebert 他  Sisyphus/Ulysses

 木枠に砂を敷き詰めた上を鉄の球がゆっくり転がって、幾何学模様を砂の上に描いていく。木枠の下に磁石が隠されているのだ。軌跡はプログラムによってパソコン画面上で指定されるので、来場者が図形を決められるインタラクティブなバージョンもある。
 今までだれも思いつかなかったのが不思議なくらいシンプルな原理だが、まるで竜安寺の石庭のような起伏がゆっくりとできていく様子もシンプルで美しく、見飽きない


4. 石井裕 MusicBottles

 香水の瓶をあけたとたんに漂う香りのように、びんのふたを取るとチェロやパーカッションの音が流れ出してアンサンブルを奏でる。明快なメタファーと直観的なインタフェースが身近なものの形をとって実現し、Tangible Bitの具体的イメージが見えてくる。
 入選・展示した他の4つの作品も、透明プラスチックのブロックや巻き尺など、一見シンプルなインタフェースにきわめて知的な役割を与え、今後の応用の可能性を感じさせる。


(InterCommunication 掲載)


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