風呂(幻燈機)
風呂(幻燈機)
光源と2枚のレンズにより、ガラス板(種板)に描かれた絵を前方の画面に映写する
写し絵の映写器(幻灯機)は風呂と呼ばれ、桐または杉で作られる。軽く、熱を伝えにくいから、手に持って操作することができる。 桐は特に軽く、しかも燃えにくい。
光源として灯明(簡単なオイルランプ)を使う。
それを抱え、和紙で作ったスクリーンに投影した。
画面は、モザイク画のように幾つもの絵を同時に投影し、一つの画面を構成した。
例えば、山の遠景、家を囲む塀、屋敷、登場人物が二人、という画面を作る場合、背景をそれぞれ映すために3台、登場人物それぞれを動かすために2台、計5台の「風呂」によって、一場面を構成する。背景用の風呂は手持ちでなく、台の上に置く。
幻灯器(ヨーロッパ)
ふつう、幻灯機は金属製で、台に置いて投影する。これは20世紀初頭に広く使われたフランス製のモデル (MAZO製)で、重さは5kg以上、上映中はとても熱くなる。
写し絵用風呂
玉川文楽が使用していたもので、これが本来の形。文久年間制作と伝えられる。
光源はランプ。
写し絵用風呂(上演用)
上演用に復元したもので、電灯を光源に使用している。
みんわ座所有
写し絵用風呂(上演用)
みんわ座で開発したもので、金属製。大きめの背景などを映写する時に固定して使用する。
一方、西洋の幻燈は、金属製のギアやシャッター、2段重ね(バイユニアル)や3段重ね(トライユニアル)の大型幻燈機、ライムライトなど強力な光源の開発、8cm x 8cm あるいは 8cm x 10cm という大きなガラススライドの採用によって、一人のショーマンがすべて操作して劇場を埋めた観客に幻燈ショーを見せる方向へと発達した。映画は、このような幻燈の発展に支えられて生まれた。
それに対して、日本の写し絵は、小型で光度の低い幻燈機を使いながら、チームワークと手さばきの技でスクリーンいっぱいのリアルタイムアニメーションを実現した。その仕掛けは家元によって伝えられる秘伝だった。
それは、日本の文化のあり方からすれば必然的な方向だったのかもしれない。写し絵は高い完成度に到達したが、そこから映画は生まれるはずはなかった。
風呂の筒先に取り付けた黒い布切れを動かすことで、映像を瞬間的に出したり消したり、稲妻などの特殊効果をあらわすことができる。 さらに、「風呂」を抱えた使い手がスクリーンの背後で動くと、映像の大きさや位置を自在に変えられる。さらに2台の風呂の映像を同じ位置に合わせるなど、手と身体の動きとチームワーク、 そして種板(スライド)の仕掛けによって、フェードイン/フェードアウト、/カットイン/カットアウト、オーバーラップ、ズームアップ等、今日使われる映像技術を、すでに駆使していた。