作品短評 Ars Electronica99


草原真知子(メディアアート・キュレーター)


 今年は、インタラクティブ部門の受賞・入選作品がOK Center(リンツ市の現代美術ギャラリー)、テーマ関連展示がブルックナーハウス、AEC、市の広場で展示された。今回のテーマがライフ・サイエンスだったため(応募は特にテーマにこだわる必要はないのだが)考えさせる、あるいはユニークな作品が多く、また惜しいところで選に漏れた作品のほとんどがテーマ関連で招待されたので、質・量ともに見応えがあると展示と評価が高かった。

1. Difference Engine #3 リン・ハーシュマン、リサ・ゴールドマン

ZKMとリンツを結んで展示された。来場者の顔がビデオカメラで撮影され、ID番号が付けられる。来場者はこのID番号を使い、自分の写真をアヴァターとしてVRMLでZKMの中を歩き回り、ZKMの来場者と会話できる。額に番号をつけた写真は本人が死んだ後も永久にウェブ上のデータベースに残る。仮想空間におけるアイデンティティについて考えさせられる。作者が70年代から展開してきた"Roberta"などのコンセプトの発展形と言えよう。


2. Systems Maintenance ペリー・ホバマン

キッチュな色の実物大の家具と、回転台に置かれたミニチュアのビデオ映像と、CGによるバーチャルな模型の3種類が、同一画面上に重ねて表示される。観客はそれぞれを勝手に動かして遊ぶが、時々メンテナンス要員が出現し、それらの位置を元通り一致させるべく望みのない作業に精を出す。画面上ではさっぱり区別がつかないので、動かしてみないとわからない。現実空間と仮想空間との関係をユーモラスに提示する作品。

3. Die DeCartes...(デカルト、あるいはインタラクティブ・スカルプチュアの孤独)   Beate Garmer

両端にプラグのついたコードが壁のコンセントに差してある。それだけだ。このスカルプチュアはインタラクションを求めている。そしてプラグに触れれば瞬時にインタラクションは起こる。が、同じ瞬間にそのインタラクションの認識及び認識の主体が消滅する(要するに感電死する)ため、デカルト的にはインタラクションは存在し得ずに終わる。哲学的思考の強いドイツらしい、コンセプチュアルかつユーモアのセンスのある作品。

(InterCommunication 掲載)


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