早稲田大学(教育学部)に入学される皆さんへ

        ☆「むずかしい」ロシア語?☆

ロシア語担当教員  桑野隆

 

昔も今も、ロシア語を学ぶ人の数は、日本ではそう多くありません。これにはいろいろな理由が考えられますが、おそらく、ロシアに関する情報の乏しさ、それに「ロシア語はむずかしい」との誤解、この二つあたりがおもな理由になっているものと思われます。
  前者に関していえば、政治的な背景もあって一挙に好転するとはとても思えませんが、ロシア側が日本に寄せる関心の高まりには、昨今著しいものがあります。とくに若者はそうです。ロシアのインターネットのサイトでは、アニメや漫画も含めた日本文化の紹介が盛んですし、経済・文化面での交流の活発化もあって日本語学習熱も高まっています。またモスクワでは、日本料理店が急速に増え、その数500近くに達しているとも言われています。こうした雰囲気は、いずれ、私たちの側からの活発な応答ももたらすかもしれません。
  後者、つまり「ロシア語は他の言語にくらべてむずかしい」に関していえば、みなさんの先輩にたずねてみればすぐにわかりますように、誤解です。この一因は文字がローマ字ではなくギリシア文字に近いことにあると思われますが、それもすぐ慣れます。とくに日常生活レベルでのロシア語は、文法もそうむずかしくありません。たとえばЭто дом.という文は「これは家です」という意味で、「工一タ・ドーム」と発音します。英語と違って、a,theのような冠詞もなければ、is,am,areのようなbe動詞現在形も使いません。疑問文にするときは、語順はこのままで、ピリオッドを疑問符に代えるだけです。
  また、ロシア語は19世紀初頭からほとんど変化をしていないので、現代ロシア語を学べば、ドストエフスキイ、トルストイ、トゥルゲーネフなどの小説も読めます。
  ちなみに、ロシアではこの200年余り、文学が社会のなかできわめて大きな役割を果たしてきました。ロシア人としてのアイデンティティをロシア文学に求める人も少なくありません。またそれとも関連して、ロシア語に対しても愛着が強く、たとえばトゥルゲーネフなども、「疑い惑う日にも、祖国の運命を思い悩む日にも、お前だけが、わたしの杖であり柱であった。おお、偉大にして力強く、真正にして自由なロシア語よ!」とうたっています。
  また、18世紀のある学者は、「ロシア語には、スペイン語の壮麗さ、フランス語の溌刺さ、ドイツ語の堅牢さ、イタリア語の優美さ、さらにはギリシア語とラテン語の豊かさ、表現の力強い簡潔さが」兼ね備わっているとまで述べています。ここまでくると眉唾物のきらいがなくもありませんが、そのくらい自分の言葉が誇らしいのでしょう。
  さあ皆さん、「謎の国」ロシア、「むずかしい言語」ロシア語が実際にどのようなものであるか、みずから確かめてみませんか。








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