文化構想学部 現代人間論系 関係構成論プログラム

関係構成論ゼミ「プラクティカル・エシックス」

ゼミ要項からの抜粋

(1) 授業内容

 私たちは、ともに生きている。すなわち、他の人間と関係をもち、関係を構成しながら生きている。そこに人間関係(自分自身への関係を含む)を規制する行為規範(「きまり」)が生まれ機能することになる。この行為規範に対して問いを向け、その根拠に対して問い抜くのがこのゼミの活動内容である。

 さて、行為規範は日常的には明確に意識されていない。それが意識されるのは、往々にして私たちが自分の生きる社会に道徳的問題を見出したときである。この観点から、行為規範への問いは、「私たちの社会はどうあるべきか」という問いを誘発するだろう。他方、道徳的問題の意識は、そもそも行為規範とは何で、その正当性・妥当性はどうやって保証できるのか、という問いをも生み出す。したがって、このゼミは、一方で、現代社会の固有の性格ならびにその道徳的問題を 的確に把握し、その解決の方向性を目がけて考え抜く研究と、他方で、道徳的問題の抽象的な根拠を考え抜いて、哲学的思惟の蓄積に接続する研究の二面をもつことになる。

 このゼミは、現代社会・現代人を倫理学的に論じる具体性をもつとともに、高度に抽象的な道徳性にまで議論を及ぼそうとするものである。したがって、道徳の名において現代社会・現代人を嘆き断罪するものではない。また、道徳によって社会問題が解決するかのような幻想を紡ぎだすものでもない。むしろ、私たちの社会で「道徳の問題」と言われているものの正体を見定める「道徳批判」を行うという側面をも併せもつものである。まじめな研究・討議のなかに、ポジティヴに考え抜く態度を共有したい。

(2) 主たる参考文献

H・T・エンゲルハートら『バイオエシックスの基礎』東海大学出版会、1988年

K・S・シュレーダー=フレチェット編『環境の倫理』(上・下)、晃洋書房、1993年

P・シンガー『私たちはどう生きるべきか』法律文化社、1995年

越智貢編『情報倫理学入門』ナカニシヤ出版、2004年

浜渦辰二編『<ケアの人間学>入門』知泉書館、2005年

森岡正博編『「ささえあい」の人間学』法藏館、1994年

H. LaFOLLETTE, The Oxford Handbook of Practical Ethics, Oxford University Press, 2003.

その他、倫理学に関連する古典的な哲学書がつねに参照されることになるだろう。