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目的

クラウスら(1960)によって提示された「運動不足病」という概 念は、機械化・省力化の進んだ現代社会において「安楽な生活」 を余儀なくされる人々に対して、「身体運動」の必要性を認識 させる役割を果たした。それは1970年代に相次いで策定された 「運動処方」の理論的基盤となり、体育学における研究目標の 一つになっていたとも言える。ところが、このような「運動奨 励ムーブメント」が推進されたことによって人々の運動習慣が 改善されたかというと、必ずしもそうとはいえない。アメリカ では1980年に「健康国家アメリカ」という施策の下で定期的運 動実践者・頻度の増大が図られたが目標には到底およばなかっ たし、日本においてもこの20年間で定期的運動実践者の比率は 増えてはいないのであるgif。このことは、同ムーブメントに効果が無 かったということよりは、ますます急激に変化する社会環境の 変化に適応を迫られる現代人が、「運動習慣」という選択肢を 新たに獲得することが困難になっていることの現れなのではな いかと考えられる。

ところで、この間の社会環境変化をただ単に「機械化・省力化」 という視点だけから特徴づけることは拙速である。近年の通信 網の拡張ならびにコンピュータの普及は、人々を情報の波に曝 すとともにその処理能力を要求している。つまり、「情報化」 という視点を抜きにして近年の社会変化を語ることはできない。 コンピュータ通信網(インターネット)が拡張する時代には、 「情報化社会への適応」が人々の新たな課題となるのである。 我々体育学者はこれまで、「省力化」への適応戦略として「運 動不足病」を中心概念とする健康増進活動を推進してきたわけ であるが、これからの「情報化社会」に対してはまた別の適応 戦略が必要とされるに違いない。

そこで、本研究では、現在既にコンピュータ技術を修得し、イ ンターネットに順応している人々が、どのような生活状況(身 体運動実践度を含む)にあり、また、どのような健康観を抱い ているかを調査し、インターネット適応者たちの特徴を抽出す るとともに、「情報化社会」への適応戦略ならびにその中での 「運動奨励ムーブメント」のあり方を探ろうとしている。



Yoshio Nakamura
Mon Dec 27 10:02:29 JST 1999