研究は人類の作りだした知識の堆積物の上に新たな知識を加える作業です。
リ・サーチと言うように堆積した知識を改めて吟味して研究テーマを決めてチャレンジします。
研究テーマは生きています。1つの研究がまとまれば次の研究テーマが現れます。
未踏のテーマに本質的な視点でチャレンジすることが大学の研究の役割と考えています。
研究は1人1テーマで行いますが、全くバラバラでは全体としては高い研究成果を生むのは困難です。
関連したテーマをチームで研究して高い成果を生み出す方式をとっています。
そのために研究テーマは原子炉設計と粒子法(革新的数値計算法)の2グループになっています。
この方法は成功し、いずれも世界をリードする成果につながっています。
研究テーマが2つしかないのではなく、これらの大テーマに関連させて様々なテーマの研究を行うことができる、
行っていると考えてください。研究テーマは研究室配属後相談して決めています。
原子核データ評価から医療用原子炉や確率論的安全評価まで広範な研究経験がありますのでいろいろ相談に応じます。
外部の委員会や評価委員、審査委員等の経験で得た知識も生かしています。
研究者になる方を除いて卒論と大学院での研究は人生で研究を経験できる貴重な機会です。
自分で考え、まとめる経験はその後の人生にとって貴重なものとなり、あなたを磨いてくれることは間違いありません。
楽しみつつ、しかし真剣にこの機会を生かしましょう。
早稲田大学はグローバル企業の経営者数を指標とする世界大学ランキングで第4位にランクされています。
元気のある学生を待っています。一緒に、楽しくやりましょう。
1.原子炉設計/2.粒子法
必要なスキル/履修しておいた方がよいと思われる科目/「軽水冷却スーパー高速炉に関する研究開発」プロジェクト/
国際的ネットワーク/科学技術利用と社会との関係の理解/
就職先と日本の原子力産業について/早大共同原子力専攻の特徴:世界で最も進んだ原子力教育研究
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1.原子炉設計
考案した超臨界圧軽水冷却炉の概念は第四世代原子炉に選ばれて国際的研究開発が行われています。我々の設計をスーパー軽水炉、スーパー高速炉と呼んでいます。炉心、燃料、プラント動特性と制御、安全設計・解析、起動、安定性など広範な分野を数値解析により設計研究しています。建設されたことのない新しい原子炉型なので、建設するときに試行錯誤しなくてよいように、その最適な姿を設計研究で探求するのが目的です。数値解析で設計案を定量化して性能や安全性の要求を満たすかどうか調べます。単純な設計から検討し、目標を満たさないときは次に単純な設計を検討します。実験項目の優先度も数値解析結果から決めることができます。これはこの研究が生み出した原子炉開発の新しい効率的な方法です。この原子炉は原子力発電の主流の軽水炉と似ていますが少し違うので自作と工夫が必要です。高温なので高速炉の経験も参照します。原子力発電の主流の軽水炉との関連が多く、研究を通じて学んだことが就職後も仕事で大いに役に立つでしょう。
具体的なテーマは例えば、
(1)スーパー軽水炉、スーパー高速炉の炉心設計
(2)熱中性子・高速中性子結合炉心とその解析法の研究
(3)安全系の設計と安全解析
(4)プラントの制御、安定性、起動・停止などです。
「もの」は「作れる」、「作れた」だけでは世間で利用されません。経済性の厳しい壁を突破できたものが実用の域に到達します。研究では経済性は直接扱いませんが常に念頭に研究を進めます。
2.粒子法
粒子法[MPS法]は計算格子ではなく計算点を用いて微分方程式を離散化します。実用上重要な非圧縮性連続体[水や固体など]の分裂・飛散を計算できる世界で最初の粒子法です。1995年に東大での共同研究者の越塚誠一先生によって開発されました。世界に拡がり原子力のみならず、船舶海洋、土木、生体、映像、ゲームなど多くの分野で利用されています。原子力分野でも溶融・凝固、沸騰、凝縮、流体・構造連成など応用問題多数あります。原子力分野の問題を対象に研究しますが、成果は広く他分野にも適用できます。原子炉事故時の溶融炉心の挙動解析などが具体的なテーマです。
| MPS法による連続体の支配方程式の離散化 | 自由液面の計算手法比較 |
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必要なスキル、履修しておいた方がよいと思われる科目:
原子力を事前に知らなくてもOKです。全員が知らない状態で研究室に来ています。たとえば物理・応用物理系の科目で関連が深いと思われるのは原子核物理学、流体力学、熱力学、力学、微分積分方程式などでしょう。機械工学系では熱力学、伝熱工学、流体力学、構造力学、制御工学等でしょう。電気工学系では電力工学、制御工学等でしょう。計算機やプログラム言語の勉強も研究室配属後でも差し支えありません。
原子力発電所は人類が作る最も巨大な人工物です。工学のあらゆる分野が関係します。原子力専門家だけで作るわけではなく応用物理、機械、電気、土木・建築、情報・応用数学等の専門家が協力して作ります。学部でどの分野を学んできても原子力で役立つでしょう。
東大の研究室との交流:
粒子法と原子炉設計などの研究を通して東大のもとの研究室の教員や研究室と交流があります。
産業界や研究開発機関との連携と交流:
実習やインターンシップを全員の院生が経験します。講演会、その講師を囲む懇親会、見学会などを多数開催しており、産業界などの現場の最新の情報や経験にふれる機会が多くあります。おそらく日本で、もしかしたら世界でも最も多いです。
「軽水冷却スーパー高速炉に関する研究開発」プロジェクト:
代表者として他大学や他機関と一緒に研究開発を行っています。第四世代原子炉に選ばれて国際的な研究開発に発展しており、研究室にとどまらない国際的な研究活動を展開しています。研究室の内外のポスドクや研究員、教員と交流できます。
第1期 平成17年~21年度(東大、九大、日本原子力研究開発機構、東京電力)を引き継いで、第2期(発展型)、平成21~23年度(早大、東大、九大、日本原子力研究開発機構、東北大、テプコシステムズ、産総研)を実施中です。中国や韓国のポスドクが滞在しています。学生の研究がプロジェクトと並行して進みます。
大型競争資金のプロジェクトは年度ごとの契約で初期の目的を計画通り100%達成することが求められます。
実験は実績のある大学や研究開発機関に再委託して実施しています。ポスドクや研究員が参加して研究開発しています。
これに対し、卒論や大学院生の研究はプロジェクトのテーマそのものではなくそれより先の未解明な部分のあるテーマ、試行錯誤が必要なテーマを選んで実施しています。
これでうまく行けば将来のプロジェクト化が可能です。プロジェクトは「開発」であり、研究室での学生院生のは「研究」であるといえるかもしれません。
国際的ネットワーク
これまでプロジェクトに参加した外国人ポスドクはじめ、東大時代の多くの留学生は帰国後その国の主要な原子力関係の大学や研究開発機関の教員や研究員になっており
、国際的なネットワークが形成されています。早稲田大学にも留学希望が多く寄せられています。これまで第四世代原子炉国際フォーラム、
グローバルCOEプログラム、米国原子力学会理事、日本原子力学会会長などとして多くの国際活動を行ってきたので、さらに広い国際的なネットワークもあります。
日本の原子力は国際化というパラダイムシフトが生じており、国際的に事業や研究開発活動を展開できる人材が求められています。
人のつながりと信頼関係の構築はつねに最も重要です。そのためのネットワークを形成できる体制が研究室に整っています。
インターネット利用の遠隔テレビ会議システムも研究室と専攻に常備されており移動に時間を使わない情報交換が可能になっています。
科学技術利用と社会との関係の理解
東大でグローバルCOEプログラム「世界を先導する原子力教育研究イニシアチブ」(平成19年度~23年度)の最初の3年間を代表者としてプログラムを進めました。
欧米や中国・韓国の原子力関係の主要大学を訪問し若手ワークショップなども多数開催しました。
国際政治学、公共政策学、原子力の人文社会科学など文系含む全学的な活動を東大が行っています。
早大でも希望する方はディアコミュニケーションなど原子力の人文社会的側面を理解し、訓練も経験できます。
社会との関係は科学技術利用にとって不可避な課題です。原子力では他の分野よりはるかに以前からそれを先鋭的に経験してきています。
しかし、例えば国民理解の点では原子力安全は食品の安全性や医療の安全性と共通の課題です。核不拡散は重要ですが、国際政治学の1つのテーマです。
原子炉の安全確保のための国の安全規制や地方振興の問題は公共政策学の1テーマです。これらは理工学のテーマというよりは文系のテーマですが、
理工系の専門家としてこれらをいかによく理解できるかが重要です。
これは教育の課題と言ってよいと思います。例えば原子力技術者はこれまで原子炉の安全性を一生懸命公衆に説明してきたのですが、
「安全」の説明は心理的には「リスク」の説明の裏返しで、心理的には「危ない」と言っているのと同じであることに永い間気づいていませんでした。
これも科学技術に携わる者が文系あるいは世間一般の理解の仕方、考え方を理解しておくべき教訓として挙げられるかと思います。
ちなみにOECD諸国の原子力発電利用で原子炉の事故によって死亡した公衆は何人いるでしょうか。
答えは「ゼロ」です。しかし原子力は極めて危険と思われていますね。
なお、原子炉の安全設計基準や規制は合理的で明確で透明でなければならないことや、原子力発電所の運転管理はつねに安全第一であるべきことは言うまでもありません。
研究室ではこれら科学技術利用と社会との関係についても理解を深めることができるでしょう。
なお早稲田大学は総合大学ですので理工学部でもメディアコミュニケーション等の講義が行われており、
それらを通じて理解を図ることもできるでしょう。
共同原子力専攻とは:
授業を東京都市大学と分担し共同で行っています。早大担当科目と東京都市大担当科目があり、授業は曜日によって東京都市大の渋谷サテライト教室(渋谷駅徒歩5分)か西早稲田キャンパスで行われています。
早大の入試を受けて合格した学生は早大の学籍を持ち、西早稲田キャンパスにある早大の共同原子力専攻教員の研究室に配属され修士論文や博士論文の研究をおこないます。
研究室に配属されるためには早稲田大学の入試を受けて合格する必要があります。
就職先と日本の原子力産業について:
電力安定供給と地球温暖化防止における原子力の役割の増大と日本の原子力産業の国際展開などもあり、
企業の原子力関係の求人数は全国の大学の原子力関係専攻・学科の卒業生数を大幅に上回っています。
原子力を学んだ優秀な人材は企業からひっぱりだこです。
原子力発電所は人間が作るもっとも巨大で複雑な工業製品です。
これを作って運転できるのは重電、重工業、電力会社などいわゆる大企業で、就職先です。
複雑で巨大な原子力発電所を納期(計画)どおり作ってきたのは世界で日本の企業だけです。
日本人の能力が発揮されている分野といってもよいと思います。
さらに研究開発でも日本原子力研究開発機構、高エネルギー加速器研究機構、放射線医学総合研究所、
電力中央研究所など大きい研究開発機関があり、博士課程修了者の就職先も多いです。
なお国際原子力機関(IAEA)など国際機関で働くとき博士号は必須で役立ちます。
早大共同原子力専攻の特徴: 世界で最も進んだ原子力教育研究
(1)原子力発電と加速器・放射線応用の中核分野に集中
原子力発電と加速器・放射線応用の中核分野に焦点をしぼった教育研究を行っています。
原子力発電では原子炉物理学、原子炉熱流動工学などを基礎とする原子炉設計、解析、運転管理、原子炉安全などの分野です。
原子力産業の中核分野と対応しています。
教員数は少ないのですが、教育研究は原子力の2大産業分野の多くをカバーしています。
(2)産業界との密接な連携
専攻設立に際して産業界等との連携、現場に役に立つ教育を挙げました。
産業界の非常勤講師による講義、多数の講演会などを通じて実際の産業現場の情報が教育と研究に反映されています。
インターンシップや見学会をつうじて学生がそれらに接する機会も極めて多いです。日本の原子力技術は世界一ですが、
それを取り入れた世界で最も進んだ原子力教育研究が早稲田大学共同原子力専攻でおこなわれているといっても過言ではないと思います。
(3)現場に役に立つ教育
専攻設立に際して産業界等との連携とともに、現場に役に立つ教育を掲げています。
現場に役に立つ教育とは単に産業現場の問題を知っている人材を育成するということではありません。
原子炉物理学や原子力熱流動工学等の基盤科目をきちんと習得し、
原子炉での中性子の振る舞いや伝熱や冷却材の流動の振る舞いを問題に応じてさまざまに描ける能力を持つことを目ざした教育(実際にはこのレベルには大学で基盤科目をきちんと勉強したうえで、
就職して何年か経って到達できます。現場の実際の問題は応用問題で、その対症療法だけをいくら勉強しても、過去に経験していない問題も多く、それは基礎から考えられないと対処できません)。
これにくわえて産業界の実際の問題、最新の技術動向、原子力発電の各分野に触れる教育を、産業界講師による講義のほかに見学会、講演会研修、実習、インターンシップなどにより様々に行っています
[実際の問題の範囲や周辺との関係を俯瞰できる能力や経験も問題解決に必要ですので。]
(4)優れた教科書による教育と研究指導
作成を東大で主導しオーム社から原子力教科書シリーズとして出版されている原子力教科書は日本の原子力の実力を反映した世界で最も進んだ原子力関係の教科書です。
英訳され、国際原子力機関を通して世界で用いられようとしています。これらをもとに教育が行われています。
スーパー軽水炉、スーパー高速炉や軽水炉技術の進歩の英語教科書も出版されています。
東大での原子力専門職大学院と原子力国際専攻の教育や諸活動の経験がカリキュラムや教育内容に反映されています。
| 原子炉の設計と解析の教科書 | 軽水炉技術の進歩の教科書 |
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なお「軽水炉技術の進歩」の教科書は2009年夏に開催した原子力発電国際サマースクールの産業界の講師の協力を得て作成したものです。
研究でもこれら著者・編者となって作成した教科書を活用し、理解を図ることができます。
なお熱力学、伝熱工学、制御工学、流体力学、構造力学など原子力の理工学基礎分野の理解はたとえばJSME(日本機械学会)テキストシリーズの教科書で図ることができます。
研究の基礎となる原子炉物理学、原子炉動特性と制御、原子炉設計、原子炉熱流動、原子力安全、数値流体力学・粒子法、
原子力プラント工学、原子炉燃料、原子炉構造力学・材料力学、原子力保全工学などの講義の理解のために、
分野ごとの教科書・参考書についてまとめましたので参考にしてください。
教科書・参考書紹介
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スーパー軽水炉の概要(PDF)
スーパー高速炉プロジェクト(22-24年度)
粒子法ムービー
・水柱の崩壊(右の壁が堅い場合)