研究内容の紹介
沿岸域の自然災害から人々の暮らしを守る
沿岸域は地震による津波や台風来襲時に発生する高潮などの自然災害にさらされています.特に日本の沿岸は台風の常襲地帯のため,高潮に対する備えは常に必要です.この他にも台風や低気圧が日本近海に接近すると高波が海岸に押し寄せ,海岸侵食が起こり,大切な国土が失われていきます.これらの災害に対してはそのメカニズムを力学的に解明するだけではなく,どうやって人々の生命や財産を守り抜くかについての対策を考えることが必要になります.私たちは現地海岸での観測、水理実験室での室内実験,スーパーコンピューターを用いた数値シミュレーションなどの方法を使って,その対策を提案しています.
内湾における水質・生態系動態の解明,予測と環境再生
かつて内湾は豊かな恵みの海でした.しかし経済発展に伴って富栄養化や化学物質による汚染がすすみ,水質・生態系の劣化が深刻化しています.そして現在は地球環境の時代です.世界のどこで何が起き,私たちにどのような影響を及ぼすのか予測のつかない時代です.だからこそ身近な環境を大切にし,食糧を含めた望ましい地域内の物質循環系を再生していくべきではないでしょうか.私たちは身近な東京湾を対象とし,現地観測やスーパーコンピューターを駆使して環境の再生戦略を練っています.
藻場の保全・修復に関する研究
多種多様な生物が生息する沿岸域の藻場,干潟,サンゴ礁などが,海洋汚染,埋立および港の整備などによって消失しています.特に藻場はここ十数年の間に6400ha(全体の3%)も減少しており,その保全や修復が求められています.私たちは潜水による現地調査や室内実験,数値シミュレーション手法を用い,海藻草類の生育に適した環境条件を解明し,藻場の保全や修復を目指す研究を行っています.
建設社会学を応用した建設,環境システムの提案
ポストモダンの技術者には,防災,環境などに対する正しい理解の他に,技術者以外の専門家や一般市民とともに建設物を作る協調性や共生力,倫理性が求められます.また,途上国の開発と環境の調和を考える際には,その国の社会システムのあり方を理解する必要があります.私たちは建設社会学の枠組みを用いて,ポストモダンの技術者社会のあり方,途上国の環境問題の解決方法などを提案しています.