2005年12月 1日 ワンワート゛/ワンミーニンク゛ (「...的」 という接尾辞) 目次 >>


 
● ワンワ-ト゛/ワンミ-ニンク゛ (one word/one meaning) [ 「...的」 という接尾辞 ]


 大石初太郎は 「文章批評」 (筑摩書房) で、あい昧な用語として 「...的」 「...性」 をあげ、「われわれはうっかりすると、このような接尾辞を使って造語しがちだ。『...的』 『...性』 は使わないように気をつけたい」 と述べている。

 「...的」 という接尾辞は、「貴族的」 「悲劇的」 のように、「...のような性質を有する」 「...らしい」 の意味や、「科学的」 「教育的」 のように 「...に関する」 「...についての」 「...の方面にかかわる」 のような意味をもつ。重宝だが、「テレヒ゛ 的会議」 「長期的見通し」 のような造語は あい昧だ。「テレヒ゛ を利用した会議」 ならば、「テレヒ゛ 会議」 でよいし、「長期の見通し」 ならば、「長期見通し」 でよいだろう。

 [ 例 1 ] 神戸港が開かれて百十年がたつ。国際貿易都市として、人びとは世界の
      人間・文物と接してきた。日常の生活の中で、国際感覚的な精神を身につける
      ことになった。(新聞)

 [ 例 2 ] ここではここ数年来行われて来た軽 イオン による分解反応の実験的結果と
      その理論的取扱いについて紹介する。(専門誌)

 [ 例 3 ] 原子核の殻模型や格子に働く核力について直接的な情報が得られる。(専門誌)

 [ 例 4 ] 衝突二核間での核子移行の流れが、準弾性散乱では一方向的であるのに
      反し、深部非弾性散乱では双方向的である。(専門誌)

 [ 例 5 ] 細胞全載標本では、その厚みのゆえに、超薄切片に比べ解像力が低いと
      いう欠点があり、技術的改良が必要である。(専門誌)

 
 [ 例 1 ] の 「国際感覚的な精神を身につける...」 は 「国際感覚を身につける...」 がよい。  [ 例 2 ] の 「理論的取扱い」 はよいだろうが 「実験的結果」 は 「実験結果」 が普通である。 [ 例 3 ] では、「直接的な情報」 がわからない。「情報が直接得られる」 ことのようだ。 [ 例 4 ] では 「一方向的」 と 「双方向的」 は、それぞれ 「一方向」、「双方向」 がよい。 [ 例 5 ] の 「技術的改良」 は 「技術改良」 でよい。

 この辺で、前回にあげた研修生の手紙に戻らなければならない。他の個所もひどいからだ。
 研修生の手紙を以下に再録する。

 [ 例 ] 篠田先生へ
     次回の科学工業英語の研修まで、しばらく海外へ出張に行ってきますので、英語の
     宿題の提出が遅れてしまいます。期日が過ぎてたいへんご迷惑の事とは思いますが、
     帰国次第お送りしますので添削をお願いします。
                                             河野太郎

 まず、「海外へ出張に行く」 とは言わない。「海外へ出張する」 だ。しかし、どこへ出張したとて私には関係がないから ここでは書く必要がない。「提出が遅れてしまいます」 は 「提出が遅れます」 でよい。「期日が過ぎて たいへん迷惑の事と思う」 とあるが期日が過ぎれば迷惑をかけるに決っているので、ここで改めて述べることはない。「帰国次第送る」 とは何時ごろになるだろうか。私にはわからないので、あまりにも自分勝手だと解釈せざるをえない。そこで、次のように用件だけ書いてはどうだろう。

  突然の出張のため、宿題が期限内に提出できません。帰国次第お送りしますので、
  ○月○日頃まで ご猶予ください。

 
▼ 参考文献
 「コミュニケーション 技術」 (篠田義明、中公新書) から転載引用しました。




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