「電球の球」 「三日の日」 「赤い色」 のように、一つの文に同じ意味の語句が重複していると、無教養のそしりを まぬがれない。
[ 例 1 ] 当店の コーヒー は炭火焼 コーヒー を使用しております。香ばしい風味を
御賞味下さいませ。(掲示)
「当店の コーヒー は炭火焼 コーヒー」 では 「コーヒー」 の無用の重複だから 「当店の コーヒー は」 を 「当店では」 とするとよい。「香ばしい風味」 も相性が合わない。「香ばしい」 は においがいいことを意味し、「風味」 は舌の感覚を表わすときに用いるからだ。「香ばしい かおりと コク のある味を ご賞味下さいませ」 とでも直すとよい。
[ 例 2 ] 核子、核子の励起状態、π 中間子などが お互いに相互作用をしながら混在した
状態になっていると考えられる。(研究誌)
「お互いに」 は 「相互作用」 のことだから不要。「混在する」 は 「状態」 だから 「状態」 も不要。最後の部分は 「...などが相互作用をしながら混在しているらしい」 でよい。「考えられる」 も多用される不要語の一つである。
[ 例 3 ] この パートン (クォーク) の質量は たかが数 MeV という ごく軽いものである
ことが判明してきたことである。(研究誌)
「たかが」 と 「ごく」 が重複しているので、どちらかを削除する。
[ 例 4 ] ごく自然な考えは、クォーク 間の相互作用そのものが エネルギー を生み出す
という考えである。(研究誌)
「考え」 が重複している。後を 「...こと」 にするとよい。
[ 例 5 ] この ミュオン 触媒核融合反応の研究は三十年余の研究の歴史を持っている
が...。(研究誌)
後の 「研究の」 が不要。
[ 例 6 ] また、記念講演は "INS の理念と役割" を主題に電電公社副総裁・北原安定氏
の講演であった。(新聞)
「講演」 が重複している。後半を 「...北原安定氏が行った」 とするか、「また、記念講演もあった。電電公社副総裁・北原安定氏が "INS の理念と役割" という主題でおこなった」 のようにする。
[ 例 7 ] やせる薬というのがある。広告には 「私は この薬の おかげで体重が 10 キロ も...
今は感謝の気持ちでいっぱいです」 などとある。(小冊子)
「...など」 を多用する人がいるが、必要と思うところ以外は使用すべきでない。ここでも 「など」 は不要。
[ 例 8 ] ボク は 結構 料理が好きなほうで、どの位 好きかといえば、履歴書の趣味の欄に
「料理、将棋」 と書く位の好きさ加減。(書評)
こんな短い文に、「好き」 を三度も使っている。また、「結構 好きなほうで」 も 「結構すきで」 か 「好きなほうで」 が すっきりしてよい。そこで、「ボク は料理が好きなほうで、履歴書の趣味の欄に、『料理、将棋』 と書くほどである」 でよい。
▼ 参考文献
「コミュニケーション 技術」 (篠田義明、中公新書) から転載引用しました。