2005年12月 1日 思い違いに注意しよう 目次 >>


 
● 思い違いをしている単語


 今回は、思い違いをしている単語について述べていこう。まずは具体的にどのような例があるかみていこう。

 
 (i) 思い違いをしている単語の具体例

下の各単語・表現の意味を答えて欲しい。

(1) garden (2) trainer (3) highway (4) downtown (5) inflammable

(6) car pool (7) driveway 

さっそく解答していこう。(1) - (2) は日本語との違いに注意する問題。(3) - (7) は単語の意味を類推することができるかどうか、という問題である。

(1) は日本語にすると 「庭」 である。しかし、英英辞典や英和辞典を調べると、単なる家の隣の土地部分だけではなく、「菜園」 を意味していたり、「菜園」 部分も含んだ家の周りの土地全体を表すときがある。例えば、Longman Dictionary of Contemporary English 4th ed. では、"garden" の項目に、"the area of land next to a house, where there are flowers, grass, and other plants..." とある。だから、この単語がどんな文脈の中で使われたのかよく考えて、どの意味なのか判別しなければならない。

(2) は洋服の ト レーナー ではない。trainする者、すなわち 「 コーチ 」 とか 「調教師」 のことである。洋服の ト レーナー は、英語では、"sweatshirt" になることに注意しておこう。

(3) も ついつい 「高速道路」 としてしまうが、実際には、「幹線道路」 のことである。

(4) も 「下町」 と解釈してしまうかもしれない。しかし、正しくは、「町の中心街」 である。

(5) これは、接頭辞の知識があることを逆手にとったひっかけ問題である。接頭辞 in を、「不...., 無.....」 と類推すれば、「不 + 燃えることができる」 となり、「不燃性の」 という訳を思いついてしまうであろう。ところが、これは正反対の 「可燃性の」 という意味になる。

(6) この表現も、類推すると、「駐車場」 という解釈ができるかもしれない。しかし、「(経費削減のための)通勤・通学での相乗り」 という意味である。

(7) 「道路や車道」 ではなく、「(公道から玄関口や車庫までの)私道」 の意味になる。

さて、どれだけ正解できたであろうか。次の セクション ではこういった単語に出会ったときにどうするか心構えを述べる。

 
   (A) 思い違いを無くす方法

 では、具体的にどうすれば思い違いを無くすことができるのだろうか。ここでは、2 通りの方法を提案しておく。

a. 辞書を積極的に引こう

  思い違い防止の1 つめの方法は、辞書を積極的にひくことである。英語の文章を読んでいる場面で、少しでも 「文意が通じないな」 と感じたら、自分が考えていた単語の意味の他にも、別の意味があるのではないか、と考えて素直に辞書をひくべきである。辞書をひけば単語の意味だけではなく、例えば、上記 (1) なら、単語の使い分けが記載されていたり、(『 ルミナス 英和辞典 第2版』)、(7) なら、図が載っている場合がある (Oxford Advanced Learner's Dictionary. 6th ed. "house" )。

  これには反論があるかもしれない。例えば、辞書を引いていたのでは、文章を読む時間がそれだけ余分にかかってしまうという反論である。しかし、間違った解釈のままでいくら文章を読めても、それは文章を読んだことにはならないだろう。むしろ、辞書を引く機会がそれだけ得られて、その分だけ辞書をひく手間も短くなり、抵抗感もなくなっていく、と前向きに考えよう。そうでなければ、思い違いを正す機会がなくなり、実用の英語は身につくはずがない。

  また、別の反論として、今まで学校教育の中で、「なるべく辞書を使わないで英文を読みなさい」 という指導を教師から受けた人もいるかもしれない。これは、学習者に単語の意味を類推させる力を養わせたいとか、入学試験や定期試験では、辞書を使えないので、その状況に合わせた勉強をさせたい、という意図による指導と考えられる。類推する力を養成するのは結構であるが、もともと限られた知識しかないのでは、正しい類推や判断ができるとは限らない。実際、上記 (5) の問題のように、類推したがために間違える場合もありえる。さらに、私たちは試験のために英語を勉強しているわけではない。実際の コミュニケーション の場面で使うために英語を勉強しているのだ。実際の場面で、辞書を自由に使える環境ならば、辞書をよく引いて自分で学習する力をつけるようにする方がより重要ではないだろうか。

  辞書は、自分で英語を勉強するときの家庭教師である。大いに利用して学習を助けてもらうべきであろう

 
b. ありのままを受け入れるよう

  思い違いを直す2 つめの方法は、ありのままを受け入れる、ということである。例えば、上記 (1) や (2) のような問題を、日本語と異なっていて覚えるのがわずらわしい、と思うかもしれない。また、(5) のように類推するとかえって不正解になる問題に対して、理不尽であったり、腹立たしい気持ちになるだろう。学校で習ったことは何だったのか、とむなしくなるかもしれない。しかし、これらの感情をのりこえて、なるほど 「こんな意味があるのか」 とか 「こんなふうに英語で表現できるのか」 といった発見の驚きや喜びこそ実用英語を学ぶうえで重要なことなのである。ぜひ、これからは辞書をひいて皆さんそれぞれの様々な驚きや喜びを体験してほしい。

さて、次回は、単語を学習する上での重様な 2 つの点、接頭辞・接尾辞について、と コロケーション について言及する。次回もどうぞお楽しみに。

▼ 参考文献
 『社会で役立つ英語習得のテクニック』、篠田義明、研究社、1994年、pp. 17 - 19
記述箇所を再構成し一部の記述を書き加えました。

『 シ゛ーニアス 英和辞典 第3版 』大修館 

『 ルミナス 英和辞典 第2版』研究社

『 ルミナス 和英辞典 第2版』研究社

Longman Dictionary of Contemporary English. 4th ed. Pearson Education.

Oxford Advanced Learner's Dictionary. 6th ed. Oxford UP.




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