2010年 1月16日 書き方の実際への適用 目次 >>


 
● 機械的な省略に注意


 書くときも話すときも、同じ語句の繰り返しは避けるのが普通だが、機械的に省略できなことが多い。たとえば、

  He has always worked hard and always will [ work hard ].
  (彼は、常に一所懸命に働いてきた。これからも一所懸命に働くでしょう)

 の文で、work と worked の形が違っても同じ語を使っているので、角括弧内は省略するのが普通である。

  The kitchen was swept and the dishes are washed.
  (台所が洗われ、皿も洗われた)

 では、dishes are washed と are が必要である。 was の現在形の is を用いて、dishes is では間違いだからであるし、the dishes will be washed も可能だからである。

 しかし、

  I have never done good paintings and probably never will.
  (私には上手な絵が描けていない。これからも描けないだろう)

 では will do としなくてよい。
 機械的な省略が可能かどうか、しっかり見極めよう。

 
● 単文の羅列では伝達できない


 中学校で 3年間、英語を正しく勉強した人なら、文法上のミスは多少あっても、単文でなら英語で表現できる能力はあろう。しかし、文法のミスがない単文でも、それらを論理的に結合しなければ伝達力のある文とは言えない。つまり、単文を羅列しただけでは、それらの内容を読み手は理解できないのが普通なのである。単文を正しく組み合わせて初めて、相手に こちらの思いが伝達できると言えよう。

 英語を勉強した人の多くが、文法上正しい英文なら、相手は理解してくれると思うだろう。正しいに越したことはない。しかし、正しさだけを追求しても始まらない。日本人がコミュニケーション能力に欠けるのは、このへんに理由があると思える。

 たとえば、

  She is tall. (彼女は背が高い)

 と言ったとしても、相手は 「だから何だろう (And so what?)」 と疑うだけだ。この文は、文法上は何ら誤りがないが、これに何かの内容を補足する文がつかなければ、相手には理解できないので、伝達ということを考えると、この文は失格である。会話をしているときは、お互いに、同じ場面にいるので、このように言った人の心境を察して、聞いている人は勝手に理解してしまう。心境を察することができないと、その場で相手に尋ねるおとができるが、書いたものでは尋ねることもできない。そこで、読んでほしいと意図して文を書くのであれば、「だから何だろう」 の文も加える必要がある。

 
● 連結詞が重要


  では、たとえば、She is tall に、She is rich (彼女は金持です) のような単文を 連結して みよう。

  She is tall, and she is rich.
  She is tall, but she is rich.
  Because she is tall, she is rich.
  Though she is tall, she is rich.

 など、すべてが文法上は正しいが、内容の理解ができない。つまり、単文をただ組み合わせても、相互に関係のない文では、構文上は正しくても、こちらの気持を相手に伝達することは不可能である。しかし、She is rich. の代わりに I like her. のような内容の文なら、こちらの気持が伝達できる文になる。しかし、これも、1文ずつ言っても、書いても、正しい伝達はできない。正しく伝達したいのであれば、この 2文を連結詞 (transitional words) で結ばれなければならない。また、用いる連結詞で内容が変わる。
 以下の文を検討してみよう。

  (1) She is tall, and I like her.
  (2) She is tall. Therefore, I like her.
  (3) She is tall; therefore I like her.
  (4) She is tall. However, I like her.
  (5) She is tall; however I like her.
  (6) She is tall, but I like her.
  (7) Because she is tall, I like her.
  (8) As she is tall, I like her.
  (9) Since she is tall, I like her.
  (10) When she is tall, I like her.
  (11) If she is tall, I like her.
  (12) Even if she is tall, I like her.
  (13) Though she is tall, I like her.
  (14) Although she is tall, I like her.
  (15) She is tall though I like her.
  (16) She is tall because I like her.
  (17) She is tall when I like her.
  (18) She is tall if I like her.

  以上は、すべて 文法上は 正しい英文だが、内容上から、受け入れることができない文も ある。

 まず、(1)〜(3) はほとんど同じ内容であり、(4)〜(6) もほとんど同じ内容だが、(1)〜(3) とは正反対の内容になる。(7)〜(9) はほとんど同じ内容だが、(12)〜(14) とは異なる。(10) と (15)〜(18) は内容上おかしい。(11)、(12) は I will like her が普通。

 以上からおわかりのように、内容で論理に合った文と文を適切な連結詞で結ばないと相手にこちらの心情を正しく伝えることができない。これが、会話では相手が目の前にいるので、理解できなければ聞き返せる。しかし、書いた場合は、相手が目の前にいないので、相手にはほとんど理解してもらえないといえよう。連結詞の重要性がここにある。

 
▼ 参考文献
 「社会で役立つ 英語習得の テクニック」 (篠田義明、研究社出版) から転載引用しました。




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