講義概要
本講義では、「政治学」の歴史をたどり、一つのディシプリンとしての「政治学」について考えます。ディシプリンとは、今日では専門分化した学問分野を指します。そのように分化した科学として、私たちは「現代政治学」を学んでいます。しかし、「政治学」は、古代ギリシアのポリス(都市国家)に起源をもつ古い学問でもあります。この伝統において政治学は、「人間の生き方についての問い」の中心に位置していました。政治学という学問のあり方が大きく変わったのは、近代のことです。その時、「科学としての政治学」への歩みが始まりました。この転換によって、政治学の何が変化し、何が持続したのでしょうか。この問題を追究するには、政治学をまずその生成に遡って考察する必要があるでしょう。そこで前半は、古代ギリシアに成立した政治学の古典的伝統に焦点を合わせ、そこから政治と政治学の根源に迫り、最後にその近代的転換の始まりに立ち会いながら現代のわれわれにとっての政治学の意義を考えます。
シラバス
講義の後半では、近代国家概念の成立についての、あるいは自由や権力、デモクラシーといった概念の近代的変容についての考察が中心になります。私たちが近代を問題にしなければならないのは、なお近代社会の中に生きているからです。近代社会が目指したことを真に実現してゆくことが、なお今日の課題であると考えるにせよ、あるいは、ポストモダンこそが現代の課題であると考えるにせよ、問題としての近代の重要性に変わりありません。もちろんそうした探求を通じ、現代において近代的な政治の概念はどのように組み換えられなければならないのかという問いに、いつも立ち返ろうと思います。
I 政治理論史へのアプローチ
1.「政治理論史」の課題と方法
2.「政治とは何か」の問い-ポリスと近代国家の間で
II 政治と政治哲学-ポリスの政治とプラトン政治哲学の逆説的関係
3.ポリスと政治学の誕生
4.プラトンのソフィスト批判
5.プラトンの正義論
6.プラトンと哲人王の思想
III 実践哲学としての政治学-アリストテレスと政治学のもう一つの伝統
7.「政治的共同体」と「政治的動物」
8.アリストテレスの「国制論」
9.アリストテレスにおける理論と実践
10.プラントンとアリストテレス-政治学の二つの伝統
IV 近代国家と政治学-近代における政治学の転換
11.「国家」概念の近代性
12.マキアヴェリと新しい政治学
13.マキアヴェリとシヴィック・ヒューマニズム
V 中間考察
14.政治理論史おける「近代」
VI 近代科学と政治学-近代的自然観と政治学の転換
15.近代的な学問の理念と政治学
16.ホッブズ『リヴァイアサン』を読む
17.近代国家と主権の概念
18.近代自然法思想と社会契約説
VII 近代市民社会と政治学-近代自然法と立憲主義の政治
19.市民社会論の系譜
20.ロック『市民政府論』を読む
21.リベラリズムと自由の概念
VIII 政治体制の構想と政治学-共和主義とデモクラシー
22.モンテスキューの政体分類論
23.ルソーの文明社会批判
24.ルソー『社会契約論』を読む
25.主権国家と自由への問い
IX 結びにかえて
26.政治学のパラダイム転換と政治の意味への問い
教科書
特定の教科書は使用せず、次項に掲げる参考文献から、該当参照箇所を指定します。
また古典の基本テキストとして以下を用います。
プラトン『国家』、アリストテレス『政治学』、マキアヴェッリ『君主論』、ホッブズ『リヴァイアサン』、ロック『統治論』、ルソー『社会契約論』(いずれも岩波文庫に収録、その他の版については講義の中で紹介します)。
参考文献
佐藤正志ほか編『政治学講義』(早稲田大学出版部、1989年)。
佐藤正志『政治思想のパラダイム』(新評論、1996年)。
佐藤正志・添谷育志編『政治概念のコンテクスト』(早稲田大学出版部、1999年)。
藤原保信・白石正樹他編『政治思想史講義』(早稲田大学出版部、1991年)。
藤原保信『西洋政治理論史』(早稲田大学出版部、1985年)。
藤原保信・飯島昇藏編『西洋政治思想史』I・II(新評論、1995年)。
小笠原弘親・飯島昇藏編『政治思想史の方法』(早稲田大学出版部、1990年)。
中金 聡・厚見恵一郎編『藤原保信著作集・第3巻、西洋政治理論史(上)』(新評論、2005年)。岸本広司・川出良枝編『藤原保信著作集・第4巻、西洋政治理論史(下)』(新評論、2005年)。
評価方法
論述試験により評価します。期末の定期試験の他、中間試験を実施します。
関連URL http://www.f.waseda.jp/ssato/