◆贈衛八處士( 衛八處士に贈る ) 杜甫◆



人生不相見 (人生相見ず | この人の世、一度別れると再会は難しい)

動如參與商 (動もすれぱ參と商とのごとし | それはちょうどオリオン座とさそり座のようだ)

今夕復何夕 (今夕は復た何の夕べぞ | 今晩は何という晩だろうか)

共此燈燭光 (此の燈燭の光を共にす | 君とこの蝋燭の光を共にするとは)

少壯能幾時 (少壯能く幾時ぞ | 若い時代は瞬く間だ)

鬢髮各已蒼 (鬢髮各已に蒼し | お互いにもう白髪まじりではないか)

訪舊半為鬼 (舊を訪へば半ばは鬼と為る | 旧友のことを尋ねれば半分は亡くなっている)

驚呼熱中腸 (驚呼して中腸熱す | 声を上げて驚き、胸が熱くなる)

焉知二十載 (焉ぞ知らん二十載 | ああ、二十年もたって)

重上君子堂 (重ねて君子の堂に上らんとは | また君の家にあがろうとは)

昔別君未婚 (昔別れしとき君未だ婚せず | 昔別れたときは君は未婚だった)

兒女忽成行 (兒女忽ち行を成す | それがどうだ、男の子と女の子が列を成す)

怡然敬父執 (怡然として父の執を敬し | 笑顔で父親の友を敬い)

問我來何方 (我に問ふ何れの方より來たると | どこから来たのかと尋ねてくれる)

問答乃未已 (問答未だ已むに乃ばず | その問答もまだやまないうちに)

兒女羅酒漿 (兒女酒漿を羅ぬ | 子供さんらがお酒を並べ出す)

夜雨剪春韭 (夜雨に春韭を剪り | 夜雨の中をわざわざ韮を剪りに出て)

新炊間黄粱 (新炊黄粱を間ふ | 炊きたてのご飯に香りよい粟をまぜてくれる)

主稱會面難 (主は稱す會面は難しと | 君は言う、会うのはなかなか難しいと)

一舉累十觴 (一舉十觴を累ぬ | 一気に十杯の酒をやり取りする)

十觴亦不醉 (十觴も亦た醉はず | 十杯飲んでも酔えない)

感子故意長 (子が故意の長きに感ず | 君の変わらぬ友情がうれしい)

明日隔山岳 (明日山岳を隔てなば | 明日、山岳を隔ててしまえば)

世事兩茫茫 (世事兩つながら茫茫たらん | その後はお互いどうなるかも分からない)



乾元二年(759年)春の作

評釈:この漢詩のさわり(一番いい所)はどこだろう? 江田は「夜雨に春韭を剪り/新炊黄粱を間ふ」だと思う。その次は冒頭の二行だろう。

以上は江田の試訳。専門家の現代語訳は、松枝茂夫編『中国名詩選(中)』の361-364頁のものが優れる