研究紹介

    Siフォトニクス集積波長可変レーザ

    ここ二十年間を振り返ると、インターネットの登場からiPhoneの普及、動画配信サービスやSNSなどのリッチコンテンツの発展に伴い、社会でやり取りされる情報の通信量は爆発的な増加の一途を辿っています。それらをまかなう通信に用いるデバイスに要求される性能は小型で低消費電力、且つ大量生産可能であることであり、Siフォトニクスを用いることでこれらの要件を満たすことができます。Siフォトニクス集積波長可変レーザはリング共振器フィルタとSOA(半導体光増幅器)を組み合わせた光デバイスです。リング共振器フィルタで一つの波長を選択し、その光をSOAでレーザ発振させる構造になっています。

      高速動作する低損失な熱光学位相シフタ

      光通信システムや医療用デバイス、センシングなどの多岐にわたる分野で高速動作する小型な波長可変光源が要求されています。シリコンフォトニクスは信頼性の高い集積光デバイスを大量生産することができるため、今後の技術開発での活躍が期待されています。
      シリコンの変調にはキャリアプラズマ分散または熱光学効果が用いられます。熱光学効果を用いた光デバイスは小型で損失が少ないといったメリットがありますが、動作速度に欠点がありました。本研究ではマルチモード干渉を利用した通電加熱構造を用いることで動作速度を改善し、µsオーダーで動作する低損失な熱光学位相シフタを開発しています。

        量子ドットを用いた二波長可変レーザー

        半導体レーザは特定の波長の光しか増幅することができませんが、量子ドットという小さな閉じ込め構造を作成することにより、それぞれの量子ドットの大きさに対応した様々な波長の光を同時に増幅することができます。
        本研究では2つの波長を同時に発振させるレーザとして、量子ドット光増幅器を用いた回路素子の研究を行っています。2つの波長を持つレーザはフォトダイオードによって周波数差に応じた高周波の電波に変換されます。この技術の応用として、低損失・広帯域な光ファイバの特性を生かした無線高周波信号の長距離伝送が注目されています。

          光負帰還法を用いた狭線幅波長可変レーザ

          光通信において一度により多くの情報を送るためには、光の振幅や位相を何段階かに変調し情報量を増やす必要があります。しかし一般のレーザから出る光には周波数に“ブレ”があり、変調の段階が増加するとそれを正確に区別することが難しくなります。
          本研究では光負帰還法を用いて周波数の“ブレ”を小さくすることで、より高次の変調で情報を送れるようにすることを目指します。光負帰還法では、レーザ装置から出た“周波数がブレた光”をその程度に応じた強さで継続的に装置へ戻すことで“ブレ”が逐次修正されています。

            導波路型光フェーズドアレイ

            光ファイバの通信方式の一つに、複数の光信号を一本の光ファイバの中で同時に伝送させることで大容量の通信を実現する波長分割多重方式(WDM)と呼ばれる光通信技術があります。WDMでは光ファイバの中に波長の異なる光信号が混在しているため、受信側ではこれらの光を波長ごとに分波してから光検出器で信号を受信する必要があります。多くのデバイスでは一次元的に波長を分波して計測していますが、本研究ではより多くの波長を分波するために二次元的に分波可能で、かつ製作が容易な構造のデバイスを開発しています。

              高消光比なシリコンMZ型変調器

              情報を伝送するためには、光の位相や強度を変化させてオンオフを切り替える必要があります。そのためには光変調器が必要で、特にシリコンを用いた光変調器は、コストやサイズの削減という点でアドバンテージがあります。
              その変調にはキャリアプラズマ分散を用いるため必ず損失が生まれてしまいます。上下の導波路で光の強度が異なると消光比が低くなってしまうので、この損失を考慮に入れた割合で光を分波する必要があります。本研究では、より効率的で低損失な分波方法を調べています。

                シリコン導波路デバイスの自動計測技術

                シリコン導波路の伝搬損失を測定する際に、導波路とファイバを手作業で接続すると多大な時間と手間をかけてしまいます。本研究では、この問題を解決するため全ての導波路を自動で計測できる技術を開発しています。具体的にはLabVIEWというプログラミングソフトを用いて、コンピュータ上で実験装置を制御し、ファイバと導波路を接続させます。最終的にはシリコンチップだけでなく、ウエハレベルでの計測を目指します。また、光の反射に要する時間や座標を測定することで、導波路の高さ及び位置を特定するデバイスも開発しています。