『アエネイス』講読 (第1巻200-207行) |
(テクスト)
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(語彙) |
200行 (テクストへ) vos:2人称・複数の人称代名詞vos「あなた方,お前たち」の主格 et:接続詞「〜と,そして」.もう一つのetまたは-queと連動するときは「〜も,〜も」.前後の接続ではなく,単独で使われるときは「〜もまた,〜ですら」 Scyllaeam:第1変化・女性名詞Scyll-a, -ae, f.「(海の怪物)スキュラ(スキュレ)」から派生した第1・第2変化形容詞Scyllae-us, -a, -um「スキュラの」の女性・単数・対格.カリュブディスと対にされることが多い,海の難所の神話的表現.オウィディウス『変身物語』には美しい乙女だったスキュラがなぜ怪物になったかが物語られている.『オデュッセイア』では12巻でキルケの説明の中に(73行以下)に登場し,オデュッセウスの報告の中でも語られている(222行以下).また『アエネイス』では3巻でヘレヌスの忠告の中(420行以下)で語られており,実際のアエネアスの難所通過の体験報告としても物語られている(548行以下). rabiem:第5変化・女性名詞rabi-es, -ei, f.「狂気,狂乱,激怒,凶行」の単数・対格.「スキュラの凶行」とは,脚は12本,首が6つの怪物がぎっしりと詰まった歯で,暗い洞窟の中で,通りかかる者を食い殺してしまうことを指す penitusque:副詞penitus「奥深くで」+後接の接続詞-que「〜と,そして」 sonantis:第1活用動詞son-o, -are, -avi, -atum「響く,音をたてる」の現在分詞・男性・複数・対格.次行のscopulosを修飾 |
201行 (テクストへ) accestis :第3活用第1形動詞accedo, accedere, accessi, accessum「行く,来る,近づく,敵対する,立ち向かう」の直説法・能動相・過去完了・2人称・複数accesistisの古形.完了語幹に-v-が出てくる場合によく-v-と次の母音が省略されるが,v完了以外での省略は古典期では珍しい.4巻の606行でもextinxissem(接続法・過去完了・1人称・単数)がextinxemの形で使われている.4巻605行にはimplessemという形が出てくるが,こちらはimplevissemの別形で,省略されているのは-vi-なので,古典期でもよく見られる形(ウィリアムズを参照して敷衍した) scopulos:第2変化・男性名詞scopul-us, -i, m.「岩,崖,断崖」の複数・対格 vos:2人称・複数の人称代名詞vos「あなた方,お前たち」の主格 et:接続詞「〜と,そして」.もう一つのetまたは-queと連動するときは「〜も,〜も」.前後の接続ではなく,単独で使われるときは「〜もまた,〜ですら」 Cyclopia:第3変化・男性名詞Cyclops, Cyclopis, m.「(一つ目巨人)キュクロプス」から派生した第1・第2変化形容詞Cyclopi-us, -a, -um「キュクロプスの」の中性・複数・対格.saxaを修飾.Cyclope-us, -a, -umもあり,その場合はキュクローペーアと「ペ」は長音になるが,この場合はキュクローピアとなって「ピ」は短音 saxa:第2変化・中性名詞sax-um, -i, n.「岩,石」の複数・対格」.「キュクロプスの岩」のもとの話は『オデュッセイア』第9巻105行以下にある.『アエネイス』でも3巻569行で「キュクロプスたちの岸辺」に到着して,691行まで関連の物語の報告されている |
202行 (テクストへ) experti:第4活用の形式受動相(能動相欠如)動詞experior, experiri, expertus sumの完了分詞・男性・複数・主格で.sum動詞の直説法・能動相・現在・2人称・複数estisが省略されているが,直説法・受動相(意味は能動)・完了・2人称・複数になっている revocate:第1活用動詞revoc-o, -are, -avi, -atum「呼び戻す,思い起こす」の命令法・能動相・現在・2人称・複数 animos:第2変化・男性名詞anim-us, -i, m.「魂,精神,活力,元気」の複数・対格 maestumque:第1・第2変化名詞maest-us, -a, -um「悲しい,陰鬱な」の男性・単数・対格.timoremを修飾 timorem:第3変化・男性名詞timor, timoris, 「恐れ,恐怖」の単数・対格 |
203行 (テクストへ) mittite:第3活用第1形動詞mitto, mittere, misi, missum「送る,送り出す,捨てる」の命令法・能動相・現在・2人称・複数 forsan:副詞「おそらく」 et:接続詞「そして,〜と」 haec:形容詞的にも用いられる指示代名詞hic, haec, hoc「これ,この」の中性・複数・対格 olim:副詞「かって,以前,いつの日か,将来」 meminisse:完了形が辞書登録形となる動詞memini, meminisse, -「覚えている,思い起こす」の不定法・能動相・完了 iuvabit:第1活用動詞iuv-o, -are, -avi, -atum「喜ばせる,助ける,手伝う」の直説法・能動相・未来・3人称・単数 |
204行 (テクストへ) per:対格支配の前置詞「〜を通じて,〜を通って,〜じゅう」 varios:第1・第2変化形容詞vari-us, -a, -um「様々な」の男性・複数・対格 casus:第4変化・男性名詞cas-us, -us, m.「事件,出来事,偶然,場合」の複数・対格 per:対格支配の前置詞「〜を通じて,〜を通って,〜じゅう」 tot:不変化の形容詞「これほど多くの」 discrimina:第3変化・中性名詞discrimen, discriminis, n.「間隔,距離,相違,区別,危険,危機」の複数・対格 rerum:第5変化・女性名詞res, rei, f.「もの,こと,(複数で)万物,森羅万象,めぐり合わせ」の複数・属格 |
205行 (テクストへ) tendimus:第3活用第1形動詞tendo, tendere, tetendi, tentum「延ばす,広げる,差し出す,向ける,向かう」の直説法・能動相・現在・1人称・複数 in:対格支配の前置詞「〜(の中)へと」 Latium:第2変化・中性名詞Lati-um, -i, n.「ラテン人の住む地方,ラティウム」の単数・対格 sedes:第3変化・女性名詞sedes, sedis, f.「座所,住所,住まい」の複数・対格 ubi:関係副詞「〜の所に」.先行詞はLatium.英語のwhereと同じで,関係副詞としても疑問副詞としても使われる fata:第2変化・中性名詞fat-um, -i, n.「運命,宿命,定め」の複数・主格 quietas:第3活用第1形動詞quiesco, quiescere, quievi, quietum「休む,休ませる」の完了分詞からできた第1・第2変化形容詞quiet-us, -a, -um「静かな,安らかな」の女性・複数・対格.sedesを修飾 |
206行 (テクストへ) ostendunt:第3活用第1形動詞ostendo, ostendere, ostendi, ostentum「示す」の直説法・能動相・現在・3人称・複数.主語は前行のfata illic:副詞「そこに」 fas:不変化の中性名詞「神聖な掟,合法性」の主格.「fas est+不定法」で「〜することは正しい,正当である,神の意にかなう」 regna:第2変化・中性名詞regn-um, -i, n.「王権,王国,支配」の複数・対格 resurgere:第3活用第1形動詞resurgo, resurgere, resurrexi, resurrectum「再び起き上がらせる,再建する」の不定法・能動相.現在 Troiae:第1変化・女性名詞Troi-a, -ae, f.「トロイア」の単数・属格 |
207行 (テクストへ) durate:第1活用動詞dur-o, -are, -avi, -atum「固くする,確固たるものとする,確かなしめる,継続させる」の命令法・能動相・現在・2人称・複数 et:接続詞「〜と,そして」 vosmet:2人称・複数の人称代名詞vos「あなた方,お前たち」の対格+代名詞の対格にしばしば付加される,まったく意味が無く語調を整えるか,ある程度の強調を意味する-met rebus:第5変化・女性名詞res, rei, f.「もの,こと,(複数で)万物,森羅万象,めぐり合わせ」の複数・与格 servate:第1活用動詞serv-o, -are, -avi, -atum「保つ,保持する,大事にする,仕える」の命令法・能動相・現在・2人称・複数 secundis:第1・第2変化形容詞secund-us, -a, -um「第2の,順調な」の女性・複数・与格.rebusを修飾 |
(試訳)
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