『ガリア戦記』(1.1.6)

(テクスト)

(1.1.6) Belgae ab extremis Galliae finibus oriuntur; pertinent ad inferiorem partem fluminis Rheni; spectant in septentrionem et orientem solem.

(読み)

ルガエ・ブ・エクストーミース・ッリアエ・フィーニブス・オリントゥル.ルティネント・ド・インフェリーレム・ルテム・フーミニス・ーニー.スクタント・ン・セプテントリーネム・ト・オリンテム・ーレム.

(語彙)

(1.1.6)

(以下,セミコロンによって3文に分けて考える)

第1文

 Belgae:複数で用いられる第1変化・男性名詞 Belg-ae, -arum, f.「ベルガエ族」の主格
 ab:奪格支配の前置詞「〜から」
 extremis:第1・第2変化形容詞extrem-us, -a, -um「端の,最も遠い」(英語のextremeの語源)(元来は第1・第2変化形容詞exter, extra, extrm「外側の」の最上級)の男性(ただし修飾している「領土」が女性名詞でもありうる上に,形容詞の複数の与格と奪格は三性ともに同じ形になるので,「女性」でも良い)・複数・奪格
 Galliae:第1変化・女性名詞Galli-a, -ae, f.「ガリア」の単数・属格
 finibus:第3変化・男性(または女性)名詞 fin-is, -is, f.「終わり,境界,(複数で)領土」の複数・奪格
 oriuntur:第4活用の形式受動相動詞orior, oriri, ortus sum「起きあがる,生起する,生じる,発する,日が昇る」の直説法・受動相(意味は能動)・現在・3人称・複数.主語は「ベルガエ人(の住む地域)」

 
第2文

 pertinent:第2活用動詞pertineo, pertinere, pertinui, -「達する,伸びる,延長する,属する」の直説法・能動相・現在・3人称・複数
 ad:対格支配の前置詞「〜へと」
 inferiorem:第1・第2変化形容詞infer-us, -a, -um「低い,下の,下方の,下流の」の比較級inferi-or, -us「より下の」の女性・単数・対格
 partem:第3変化・女性名詞pars, partis, f.「部分,地方」の単数・対格
 fluminis:第3変化・中性名詞flummen, fluminis, n.「河」の単数・属格
 Rheni:第2変化・男性名詞Rhen-u, -i, m「レヌス(レーヌス)河」の単数・属格

第3文

 spectant:第1活用動詞spect-o, -are, -avi, -atum「見る,眺める,眺望する,向いている,位置している」の直説法・能動相・現在・3人称・複数
 in:対格支配の前置詞「〜(の方)へと」
 septentrionem:第3変化・男性名詞septentrio, septentrionis, m.「(通常は複数で)北斗七星,大熊座→北,北方」
 et:接続詞「そして,〜と」
 orientem:第4活用の形式受動相動詞orior, oriri, ortus sum「起きあがる,生起する,生じる,発する,日が昇る」の現在分詞・男性・単数・対格.「昇る太陽」は「太陽の昇る方=東」.oriensだけでも東を意味することができる(英語のorientの語源)
 solem:第3変化・男性名詞sol, solis, m.「太陽」の単数・対格

(試訳)(訳ではセミコロンはカマと同じ扱いにした)

 ベルガエ人の住む地域はガリアの境界地域から始まり,ライン河の下流の地域に達し,(ガリアから見ると)北東方面に位置している.