『ガリア戦記』(1.2.5) |
(テクスト) (1.2.5) Pro multitudine autem hominum et pro gloria belli atque fortitudinis angustos se fines habere arbitrabantur, qui in longitudinem milia passum CCXL, in latitudinem CLXXX patebant. |
(読み) プロー・ムルティトゥーディネ・アウテム・ホミヌム・エト・プロー・グローリアー・ベッリー・アトクェ・フォルティトゥーディニス・アングストース・セー・フィーネース・ハベーレ・アルビトラーバントゥル,クィー・イン・ロンギトゥーディネム・ミーリア・パッスウム・ドゥーケンタ・クァドラーギンター,イン・ラーティトゥーディネム・ケントゥム・オクトーギンター・パテーバント. |
(語彙) (1.2.5) pro:奪格支配の前置詞「〜のために,〜ゆえに,〜のわりには,〜にしては」 multitudinem:第3変化・女性名詞multitudo, multitudinis, f.「多さ,多数」 autem:文頭には来ない接続詞「しかし,一方,ところで」 hominum:第3変化・男性名詞homo, hominis, m.「人,人間」の複数・属格 et:接続詞「〜と,そして」 pro:奪格支配の前置詞「〜のために,〜ゆえに,〜のわりには」 gloria:第1変化・女性名詞glori-a, -ae, f.「栄光」の単数・奪格 belli:第2変化・中性名詞bell-um, -i, n.「戦争」の単数・属格 atque:接続詞「〜と,そして」 fortitudinis:第3変化・女性名詞fortitudo, fortitudinis, f.「強さ」 angusutos:第1・第2変化形容詞angust-us, -a, -um「狭い」の男性・複数・対格 se:再帰代名詞「(主動詞の主語と同じ)自分自身」の単数(複数も同形)・対格.この対格は「対格+不定法」構文の不定法の主語 fines:第3変化・男性名詞fin-is, -is, m.「境界,限界,(複数で)領地,領土,国土」の複数・対格.この対格は「対格+不定法」構文における不定法の目的語 habere:第2活用動詞habeo, habere, habui, habitum「持つ」の不定法・能動相・現在 arbitrabantur:第1活用の形式受動相動詞arbitror, arbitrare, arbitratus sum「思う,考える,判断する」の直説法・受動相(意味は能動)・未完了過去・3人称・複数.主語はヘルウェティイー族 qui:関係代名詞qui, quae, quodの男性・複数・主格.先行詞は「領土」 in:対格支配の前置詞「〜へと」だが,「長さ」は「広さ」と結びついて,ここでは「長さ〜(くらい,ほど)」,「広さ〜(くらい,ほど)」を意味する longitudinem:第3変化・女性名詞longitudo, longitudinis, f.「長さ」 milia:単数では不変化の中性名詞(と形容詞)mille「千」の複数・対格.複数はmili-a, -iumと第3変化になる.「〜千の・・」と複数で数えるときには,名詞「・・」が複数・属格形におかれる(もちろん完全にパラレルではないが英語の「thousands of ・・」を思わせる).この対格は「延長の対格」で,長さや広がりを表す passuum:第4変化・男性名詞pass-us, -us, m.「歩→間隔」(1マイルの「マイル」にあたる)(「歩幅」を意味する長さの単位が「千」集まると1マイル.「マイル」はラテン語の「千」が語源) CCXL:ローマ数字は右に加算していくのが原則で,4,9にあたる部分は一つ引いたことを明示するため左側に書く.Cは「百」なので「二百」は単純加算でCC,「五十」Lから「十」引いたのが「四十」なのでXLと表記,これを単純加算してCCXLは「二百四十」になる,ducenta quadraginta(不変化の数形容詞)で「千」を修飾,「24万歩」は「240マイル」 in:対格支配の前置詞「〜へと」だが,「長さ」は「広さ」と結びついて,ここでは「長さ〜(くらい,ほど)」,「広さ〜(くらい,ほど)」を意味する latiitudinem:第3変化・女性名詞latitudo, latiitudinis, f.「広さ」(幅),ここでは「長さ」,「広さ」(幅)は「縦」,「横」(英語のlength, breadthに対応:ここのラテン語in longitudinem / in latitudinemが英語のin length / in breadth に対応する) CLXXX:「百」(centum)+「八十」(octoginta)(50+10+10+10)(不変化の数詞).ここではmilia passuum(マイル)が省略されている patebant:第2活用動詞pateo, patere, patui, -「延びる,広がる,(長さ,広さが)〜である」の直説法・能動相・未完了過去・3人称・複数 |
(試訳) 一方で,彼ら(ヘルウェティー族)は(自分たちの)人口の多さ,戦争の栄光と強さのわりには,自分たちは狭い領土を持っていると思っていた.その領土は長さ240マイル,幅180マイルの広さであった. |