『ガリア戦記』(1.6.1) |
(テクスト) (1.6.1) Erant omnino itinera duo, quibus itineribus domo exire possent: unum per Sequanos, angustum et difficile, inter montem Iuram et flumen Rhodanum, vix qua singuli carri ducerentur; mons autem altissimus impendebat, ut facile parpauci prohibere possent: |
(読み) (1.6.1)エラント・オムニーノー・イティネラ・ドゥオー.クゥイブス・イティネリブス・ドモー・エクシーレ・ポッセント:ウーヌム・ペル・セークァノース.アングストゥム・エト・ディッフィキレ.インテル・モンテム・ユーラム・エト・フルーメン・ロダヌム.ウィクス・クゥアー・シングリー・カッリー・ドゥーケ−レントゥル;モンス・アウテム・アルティッシムス・インペンデーバト.ウト・ファキレ・パルパウキー・プロヒベーレ・ポッセント: |
(語彙) (1.6.1)(コロン.セミコロンで文を区切り) 第1文 Erant:不規則動詞sum, esse, fui, (futurus)「〜がある.いる.〜である」の直説法・能動相・未完了過去・3人称・複数 omnino:副詞「全部で.全体として」 itinera:第3変化・中性名詞iter, itineris, n.「道.旅」の複数・主格 duo:複数のみの数詞(形容詞)「2」の中性・主格 quibus:関係形容詞qui, quae, quodの中性・複数・奪格 itineribus:第3変化・中性名詞iter, itineris, n.「道.旅」の複数・奪格 domo:第2変化の形も含む第4変化・女性名詞dom-us, -us, f.「家.故郷.現住地」の奪格(都市名や島名という固有名詞.および一般名詞でも「家」と「田舎」(rus, ruris, n.)は地格(位格)があり.そうした名詞は前置詞なしの奪格で「分離:〜から」を意味する) exire:不規則動詞exeo, exire, exivi, exitum「出る」の不定法・能動相・現在 possent:不規則動詞possum, possei, potui, -「(+不定法で)〜できる」の接続法・能動相・未完了過去・3人称・複数.「関係詞+接続法」も「目的」.「結果」を意味する.未完了過去は主動詞が未完了過去で副時称(過去時称)なので.主動詞に対して「同時」または「以後」 |
第2文 unum:代名詞型変化をする単数のみの第1・第2変化形容詞(数詞)un-us, -a, -um「一つの.1」の中性・単数・主格.省略されている「道」を修飾.ここでは後出のalterumと対応し「一つの.もう一つの(別の)」となる per:対格支配の前置詞「〜を通って.つっきって」 Sequanos:複数で用いられる第2変化・男性名詞(元来は形容詞)Sequan-i, -orum, m.pl.「セクゥアニー(セークゥアニー)族」の複数・対格 angustum:第1・第2変化形容詞angust-us, -a, -um「狭い」の中性・単数・主格 et:接続詞「〜と.そして」 difficile:第3変化形容詞difficil-is, -e「難しい.困難な.(道が)通行困難な」の中性・単数・主格 inter:対格支配の前置詞「〜の間で.間に」 montem:第3変化・男性名詞mons, montis, m.「山」の単数・対格 Iuram:第1変化・男性名詞Iur-a, -ae, m.「ユラ山脈」(「ジュラ紀」のジュラ)の単数・対格.直前の「山」と同格で直訳は「ユラ山」となるが.「ユラ山脈.山塊」を指す flumen:第3変化・中性名詞flumen, fluminis, n.「河.川.流れ」の単数・対格 Rhodanum:第2変化・男性名詞Rhodan-us, -i, m.「ロダヌス河(現在のローヌ河)の単数・対格.直前の「河」は中性名詞だが.名詞動詞の同格並置で「ロダヌス河」を意味する vix:副詞「かろうじて〜する.めったに〜しない」 qua:関係副詞「そこで(は).そこを通って」 singuli:複数で使われる第1・第2変化形容詞singul-i, -ae, -a「(各々)一つずつ」の男性・複数・主格 carri:第2変化・男性名詞carr-us, -i, m.「荷車」の複数・主格 ducerentur:第3活用第1形動詞duc-o, ducere, duxi, ductum「導く.通らせる」の接続法・受動相・未完了過去・3人称・複数.接続法は「関係詞+接続法」で「目的」.「結果」の意味(ここでは後者).未完了過去は省略されている主動詞(「一つの道」は「〜と・・の間に」「あった」の「あった」(erat)が省略されていて.未完了過去と考える)に対して「同時」または「以後」 |
第3文 mons:第3変化・中性名詞mons, montis, m.「山」の単数・主格 autem:接続詞「しかし.さらに.一方」 altissimus:第1第2変化形容詞alt-us, -a, -um「高い」の最上級・男性・単数・主格 impendebat:第2活用動詞impendeo, impendere(完了形と目的分詞はない)「のしかかる.せまってくる.そびえ立つ」の直説法・能動相・未完了過去・3人称・単数 ut:目的や結果を表す従属文を導く接続詞 facile:第3変化形容詞facil-is, -e「容易な」の中性・単数・対格が副詞化して「容易に」 perpauci:複数で使われる第1・第2変化形容詞perpauc-i, -ae, -a「極めて少ない」の男性・複数・主格.ここでは名詞化して「ごく少数の人間で.ごく少数の者が」 prohibere:第2活用動詞prohibeo, prohibere, prohibui, prohibitum「妨げる.防ぐ.遮断する.通らせない」の不定法・能動相・現在 possent:不規則動詞possum, possei, potui, -「(+不定法で)〜できる」の接続法・能動相・未完了過去・3人称・複数.「関係詞+接続法」も「目的」.「結果」を意味する.未完了過去は主動詞が未完了過去で副時称(過去時称)なので.主動詞に対して「同時」または「以後」 |
(試訳) (1.6.1) その道を通って故郷を出ることのできるような道は全部でも二つだった(二つしかなかった).(そのうちの一つは)セクゥアニー族の中を通るもので.狭隘で通行困難であり.ユラ山塊とロダヌス河の間にあって.そこをかろうじて荷車が1台ずつ通れるだけだった.さらに極めて高い山が迫っていて.ごく少数の者でも容易に防げるほどだった. |