フィレンツェだより
2007年4月17-19日



 




糸杉,オリーヴ,その他の木々
中央の建物はサン・ミニアート・アル・モンテ教会



§暮らしの中で

ここ数日,私は仕事,妻は学校の日々が続いて,観光は少しお休みした.


 妻の学校は結局クラス替えがあったが,期待に反して,スペインからの会話達者な人たちと同じクラスに入れられ,苦闘の日々が続いているようだ.おかげで私も勉強になる.先生が配布するプリントも星座の話とか健康のための生活法とか,意表をついたものが多く,これをいきなり読まされて話題をつくるのは,確かに辛いだろう.

 機関銃のように話すスペイン人,あまり話さない日本人に,英語でよく質問する香港出身の若者が加わり,一層複雑な構成になってかなり大変なようだ.適当に体を休めながら頑張って勉強していくのが正解だろう.健康を損ねては何にもならないし.スペイン語話者の若い女性がさらに加わったが,クラスにいるスペインの人たちは幸いなことに良い人ばかりで,親切とのことである.


植生について
 イタリアについて,自分の専門外でも興味のあることが幾つもあるが,植生については,古代と現代の違いはあるにせよ,古代ローマ文学の作品に出てくる葡萄,オリーヴ,糸杉,ポプラ,プラタナス,その他の木々がどのように生い茂り,様々な花がどのように咲くのかを見たいので,専門と全く無関係ではない.

 しかし,文学作品に出てこないものでも,動植物がどうなっているのかを,気づいたところから少しずつ観察してみたい.木々の若芽が日々に緑濃くなって,花々の咲き始めるこの季節は,日本もそうだが,イタリアもやはり美しい.




ボーボリ庭園の巨樹




ミケランジェロ広場からの風景




合理的なしくみ
 先日,中央郵便局に行って感心したのは,何の用事があるかで順番待ちの番号札が異なり,それを現在どの窓口で扱っていて,自分の順番があとどのくらいかが電光掲示でわかる仕組みになっていることだ.日本も大体そうだが,日本の場合よりもさらに工夫してあるように思えた.

 合理的といえば,スーパーで,キロいくらで売られている野菜や果物を買うときに,同じ種類のものをビニール袋に入れて秤のところに持っていって,品物を乗せ,その品物の絵(字も書いてある)を押すと,重さに合わせた値段が表示されたバーコードつきのラベルが出るようになっている.多くの体験記や案内書に書いてあったので知識としては知っていたが,これにも感心した.

 2ユーロのコインを入れるとチェーンがはずれてカートが利用でき,カートを返すと,コインがもどってくる仕組みも,大きなカートを整理するにはよくできているやり方だと思う.

イタリア人というと,仕事よりも人生を優先する人たち,という先入観があり,それはそれで間違っていないのだろうが,私が見た限りは働き者が多いように思える.


 これは去年の9月にローマに来たときもそう思った.もちろん,EU拡大や通貨統合,移民や外国人労働者が増えたという様々な時代背景もあるのだろうが,長い伝統を持つ民族がそんなに簡単には変わらないだろうから,根っこの部分には勤勉な精神のようなものが以前から確かにあったのでないだろうか.

 ゴミ収集の仕組みにも感心した.

 基本的にゴミは毎日出せる.街路に大きなゴミ箱が置いてあり,青い蓋のものが一般ゴミ,同じ形で黄色い蓋のものが書類やダンボールなどのまとまった量の紙ゴミ,大型で全体が青く,上部にやや小さな投げ込み口があるのがビンなどの割れ物回収用という区別がある.

 一般ゴミの箱はあちらこちらに設置されているが,黄色い蓋のは少なく,多分オフィスや学校に近いところにあるのかなと推測している.割れ物用は一般ゴミほどではないが,まずまず見かける.

 日曜を除いて毎日回収しているようだが,どのようにして持っていくのか関心があった.先日ピッティ宮殿の前で現場を見たので,思わずカメラに収めた.大きなゴミ箱には下に車輪がついていて,それを2人がかりで転がし,回収車にセットして中のゴミを集めていくようだ.




     作業員が,ゴミ箱を手で押して
回収車の後ろに移動させる




回収車がゴミ箱を持ち上げて中身を空ける.



 一日の仕事を終えた男性たちが街路に集まって交歓している風景をよく見かけるが,そのとき吸ったたばこの吸殻はそのまま道に捨てられる.育ちの良さそうな坊ちゃん,嬢ちゃんの大学生も平気でたばこを捨てるので,道には吸殻がよく落ちているが,翌朝,清掃車が大きな音をたてて掃き清めて行く.

 ゴミ収集にはかなりコストがかかっているのだろうが,住んでいる者にとっては毎日ゴミが出せるのは大変助かる.フィエーゾレのゴミ箱は違うものだったので,自治体が違うとゴミ収集の仕方なども違うのかも知れない.



 犬の散歩をよく見かけるが,犬の落し物や鳩の落し物が少なくない.私たちは「チ・ソーノ・モルティ・バッチーニ」と冗談を言いながら避けて通っている.歩道を歩くときは多少の注意が必要かもしれない.日本と違い外を歩いた靴を脱がずに家に入っていくわけだし.

 街を歩いていて,店先で日本だとガチャポンとかガシャポンという名前だった思うが,コインを入れてプラスチックのカプセルに入ったマスコットが出てくる自動販売機をよく見かける.それに何が入っているかはまだ確かめていないが,店で売っているキャラクターものはディズニーが多いようだ.日本のものでは「ルパン3世」をわりによく見る.目抜き通りの一つカヴール通りの店に立派な「タイガーマスク」のフィギュアが飾ってあったのには目を見張った.

 土産物屋にはよくピノッキオのマスコットが売っているが,作者のコッローディはフィレンツェの生まれ(「コッローディ」はお母さんの出身地からとったペンネーム)で,最初に掲げた写真に小さく写っているサン・ミニアート・アル・モンテ教会にお墓があるそうだ.今度お参りして来よう.





ドォーモ
ピッティ宮殿より