フィレンツェだより
2008年1月20日



 




マスコットつき,バーチのチョコレート
日本に連れて帰る予定あり



§まだまだ・・・


まだまだ - その1
 イタリア滞在もあと1週間ほどで残り2カ月となる.帰国間際はさすがに慌しくなるので,国内でまだ行っていないところへ旅するのも最終チャンスを迎えつつあるといえる.

 実は,年が明けてから1週間ちょっとの間に,当初は行かないはずだったヴェネツィア旅行,シチリア旅行が矢継ぎ早に決まった.ヴェネツィアは,今回は下見を兼ねたカーニヴァル見物といったところで1泊2日の予定だが,シチリアはさすがにそうもいかず,1週間の旅になった.予算はギリギリのところで何とかなるのではないかと思っている.

 これでもう2度とイタリアに来られないというわけでないので,ともかく無理をしない計画をたてたい.フィレンツェ近郊,もしくはトスカーナ州内で,再度訪れたいところや,新たに行きたいところも検討しているが,これも気力,体力,予算と相談しながらということになる.


まだまだ - その2
 予算と言えば,さすが外国にいるので,日本に荷物を送り返すのが大変だ.もちろん買った本には愛着があるので,郵送費用は予め計上している.

 日本から来るときは本2箱,衣類2箱送るのに10万円近くかかった.こちらに来て,本は何倍かに増えているので,日本に郵送するのに,たっぷり,その3倍は費用がかかると見込んでいる.安くすませる方法もあれこれ探したが,手間隙と安全を考えて腹をくくった.

 廉価版の本を喜んで買って,送料がかかる,こういうことを繰り返して来た人生なので,仕方ない.世紀の古典というわけでもないのに,本に対する愛着が捨てきれない.蔵書家で,自らも大変な数の著作を残したキケロですら,暗殺されたときは身一つだったのに.

 いつかは思い切らなければならないが,今はまだ,それができない.


まだまだ - その3
 サルディの巷で成果があげられないまま,日は経って行きつつある.このままバーゲン・シーズンも終わってしまいそうだが,それはそれで良し,昨日,今日と晴れの日が続いたので街に出た.

 今日はまた,ペルゴラ劇場にアテーネウム・ベルリン弦楽四重奏団,リリヤ・ジルベルシュタイン(と表記するのが普通のようなのでこの表記)のコンサートを聴きに行った.

 関西在住の時は,シンフォニー・ホールにアルバン・ベルク四重奏団,いずみホールにメロス四重奏団を聴きに行き,関東にもどってからは東京まで出なくても与野(現・さいたま市)の彩の国さいたま劇場にアルバン・ベルク四重奏団が来るので聴いた.わりに弦楽四重奏曲は好きだ.

 今回聴きに行った団体は名前も初めて聴くが,多分ベルリン・フィルのメンバーによって構成される四重奏団と推測している.

 演目は,メンデルスゾーン「弦楽四重奏のための4つの小品」,「弦楽四重奏曲第3番ニ長調」,タネーエフ(タニェエフだと思っていたけど,ロシア語を知らないので,日本語版ウィキペディアの表記に従う)の「ピアノ五重奏曲」で,あまり期待していなかったが,これがまたすばらしかった.4つの小品の最初の音でもう今日は良い演奏会になると確信した.この確信がよく外れるが,今日は当たりだった.

 ともかく4つの小品がすばらしく,3番がまずまずで,タネーエフでピアニストが加わり,最高潮に達した.個人的には最初の曲が良かったが,最後の曲に対する拍手が熱かった.

 ジルベルシュタインは1966年ロシア生まれ,1986年のブゾーニ・コンクール優勝者とのことなので,イタリアとは縁が深いと言えるだろう.この人の若い頃の演奏を妻が東京で聴いたそうだが,私は名前も初めて知った.立派なピアニストだ.

 今日は特に左側パルコ(ボックス席)3階の席だったので,手がよく見えた.ピアノを弾いたことのない私がピアニストの手が見えても仕方がないといつも思っていたが,あの柔らか手首の動きは見ているだけでも惚れ惚れする.



 セルゲイ・タネーエフと言えば,ギリシア悲劇のアイスキュロス『オレステイア三部作』を原作とするオペラを書いた人だ.

 私はこの曲の全曲盤CDを持っているが,旧ソ連時代のメロディアから出た古いCDなので歌詞解説もない.あってもロシア語わからないので,どうしようもないが,どこかで英語訳か何か手に入らないものかと思っているうちに時間だけが経っている.英語字幕のついたDVDとか出ないだろうか.

 タネーエフはチャイコフスキーとニコライ・ルビンシテインの弟子で,自分もモスクワ音楽院の教授となり,弟子にはスクリャービンやメトネルがいる(他にもラフマニノフ,プロコフィエフと綺羅,星の如くだ)ので,ロシアのピアノ音楽の伝統を支えた人だろう.


まだまだ??
 ペルゴラに向かう途中,ドゥオーモの前で福山さんに会った.ワセダの別の学生さんも一緒だった.もしかしたら初対面ではないかも知れないとも思ったが,「僕の授業出てたよね」と聞いて,「いいえ,全然出たことありません」と言われ,ばつの悪い思いをすることも一再ならずあるので,今日は何も言わず会釈するだけにした.

 ペルゴラの後,最近行っていないので,滞在10カ月目突入祝いを前倒しして李慶餘飯店に行った.

 途中,ヴェンティセッテ・アプリーレ通りの古本屋に寄り,ティトゥス・リウィウス『歴史』第30巻(ミラノ,1986年),キケロ『老年論』(トリノ,1961年),サルスティウス『カティリーナの陰謀』(フィレンツェ,1984年),『マルティアリス詩選』(トリノ,1930年)の注釈書,ポンターニ『ギリシアの小叙事詩』(フィレンツェ,1973年)を購入.計22ユーロだったが,例によってシニョーラがニッコリ笑って20ユーロにまけてくれた.

写真:
本日の成果


 李慶餘飯店でまたフォーチュン・クッキーをもらった.帰宅後に食べて,中に入っていたご託宣は,私は「今年は今までよりもずっと多くの旅をするでしょう」,妻は「重大な発見をすることになります」だった.

 出不精の私が,去年は今までの一生分以上の旅をしたが,それよりも多く旅をするとは,すごいご託宣だ!





フォーチュン・クッキー
本日のありがたいご託宣