フィレンツェだより
2007年6月24日


 




花火の打ち上げを待つ
サン・ニッコロ門



§サン・ジョヴァンニの祝日

6月24日はフィレンツェの守護聖人「洗礼者ヨハネ」(サン・ジョヴァンニ・バッティスタ)の祝日である.


 旅行用ガイドブックによれば,古式サッカーの試合をはじめ様々な行事が催され,夜には打ち上げ花火もあるとのことなので,ここ数日はこれにあわせて体力の温存をはかっていたが,連日の猛暑のせいで,関連行事をすべてチェックして見に行くまでの元気はなかった.

 「古式サッカー」(カルチョ・ストーリコ)は,昨年は怪我人が出るなどの騒ぎで中止になったそうだ.インターネットをはじめ,どこにも開催に関する情報が掲載されないので,今年も中止だろうなと思いながら,納得するために,サンタ・クローチェ広場に盛り土してあるかどうか確かめに行った.

 盛り土はなかった.やはり今年も無いのだと納得して,日曜のミサの最中のサンタ・クローチェ教会に入り,ツーリスト入場可のところだけ見て,チョンピ広場で月1回開かれる「のみの市」をひやかして帰宅した.



 チョンピ広場は中世の大事件「チョンピの乱」が起きた場所で,今はヴァザーリの「魚の開廊」があることで知られるが,今回は良い写真が撮れなかったので,紹介はまたの機会にする.

 チョンピ広場の「のみの市」で購入した本は

 Paolo D'Ancona, Mantegna, Milano, n.d.
 Giancarlo Vigorelli, Giotto, Firenze, 2003

 の2冊で,前者はPiccola Silvanaというシリーズの第4巻で,少し汚れた本だが珍しいかもしれないと思って買った.思ったよりも高かった.マンテーニャの作品はウフィッツィで見ている.

 後者はジョットに関する小型の美術書だ.ジョットに関する本はこちらでは美術館で日本語版も売られているが,この本は写真がきれいで,新しい本だが正価の半額だったので買った.

 デル・サルトや,こちらで知った宗教画作家のモノグラフなども出ていて,欲しかったが,大きい本は日本で古本屋(美術愛好者が多いので,神田を歩けばけっこう手に入るかも)かインターネットで買おうと思って控えた.2冊で10ユーロ.

 ジョットの本は表紙が「最後の晩餐」だった.若いヨハネがキリストにもたれかかり,キリストはユダにパンを渡している.食卓を囲んで後ろ向きの人物もいる.ユダは同じフレスコ画の後の部分に見られる「ユダの接吻」の場面と同じクリーム色の衣を着て,わりに端正に描かれている.パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂にある大作の一部だ.ジョットの絵を見にパドヴァとアッシジに行かなければ.

 「のみの市」ではアンティークのアクセサリーなどに良いものがあるようだったが,良いと思われるものは値段もそこそこ以上に高い.これからも何度か訪れる機会はあるだろうから,じっくり見て,手ごろなものがあれば買うかもしれない.



 「古式サッカー」はなかったが,夜の花火打ち上げは見に行った.ミケランジェロ広場で10時から打ち上げというので,9時過ぎに寓居を出たが,水面に映る花火を見るためか,アルノ川沿いは大変な人出で,立錐の余地も無いとはこういうことかと思った.

 ミケランジェロ広場は登坂禁止になっていたので,私たちは麓のサン・ニッコロ門の下に陣取った.ここもほぼ満杯状態で,たくさんの人が花火に期待しているようだった.『最新完全ガイドブック フィレンツェ』に拠れば(p.212),キリスト教以前の時代に,かがり火を焚いた夏至の行事に由来する古くからの風習ということだ.


日本の仕掛け花火に比べれば素朴だが,
それでも近くで轟音が響き,連発で打ち上
げられた様々な色の花火がサン・ニッコロ
門の向こうで光を放つと,幻想的な風景に
思え,観客からも,何度も拍手が送られた.
私たちも大いに満足して,帰路についた.


 「古式サッカー」は中止で残念だが,この暑さと,乱闘事件に発展してしまう近年のエスカレートぶりを考えるとやむを得ないだろう.午前中に中止を確認するために行った,古式サッカーの会場になるはずだったサンタ・クローチェ広場を,花火の帰りも通った.




夜のサンタ・クローチェ広場