・東京地判平成11年1月28日判時1677号127頁  スーパーラップ型キャディバッグ事件。  原告(ハラダゴルフ)は、被告(シチズン商事)が販売するキャディバッグの形態が原 告が販売するキャディバッグの形態を模倣したものであり、被告商品の販売は、不正競争 防止法2条1項3号に該当するとして、販売の差止め、および損害賠償を請求した。  原告商品は、アメリカのゴルフ用品メーカーである訴外会社がその形態を考案したもの であるところ、原告は、その訴外会社との間で、同社の全商品を日本国内において独占的 に販売する旨の契約を結び、右契約に基づいて同社が製造した原告商品を輸入するととも に、同社の許諾を得てみずからも原告商品を第三者に製造させ、これらを日本国内で販売 していたが、判決は、以下のように述べて、原告は不正競争防止法2条1項3号によって 保護された「営業上の利益」を有せず、同号に基づく差止め請求権および損害賠償請求権 の主体とはなりえないとして、原告の請求を棄却した。  「(一)不正競争防止法によれば、不正競争行為により、営業上の利益を侵害され又は 侵害されるおそれがある者は、侵害の停止又は予防を請求することができ(同法3条1 項)、営業上の利益を侵害された者は、これによって生じた損害の賠償を請求することが できる(同法四条)ものであるが、不正競争防止法2条1項3号に規定する不正競争につ き差止請求権及び損害賠償請求権を有する主体は、同号の規定によって保護された『営業 上の利益』を有するものである。  (二)不正競争防止法2条1項3号の趣旨につき考察するに、他人が資金・労力を投下 して開発・商品化した商品の形態につき、他に選択肢があるにもかかわらずことさらこれ を模倣して自らの商品として市場に置くことは、先行者の築いた開発成果にいわばただ乗 りする行為であって、競争上不公正な行為と評価されるべきものであり、また、このよう な行為により模倣者が商品形態開発のための費用・労力を要することなく先行者と市場に おいて競合することを許容するときは、新商品の開発に対する社会的意欲を減殺すること となる。このような観点から、模倣者の右のような行為を不正競争として規制することに よって、先行者の開発利益を模倣者から保護することとしたのが、右規定の趣旨と解する のが相当である。  (三)右によれば、不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為につき差止めない し損害賠償を請求することができる者は、形態模倣の対象とされた商品を、自ら開発・商 品化して市場に置いた者に限られるというべきである。」  「…また、原告は、…旧法1条1項1号又は2号に関する裁判例の理論を現行の不正競 争防止法2条1項3号の場合に類推すべきである旨を主張するが、旧法1条1項1号及び 2号は現行の不正競争防止法2条1項1号に対応する規定であり、商品の出所又は営業の 主体を示す表示として周知なものにつき出所や主体の混同を生じさせる行為を規制する趣 旨のものであるから、右の不正競争行為に対する差止請求や損害賠償請求の主体について は、当該商品表示又は営業表示が何人のものとして取引者・需要者の間で周知になってい るかによって判断されるべきものであるのに対し、同法2条1項3号の趣旨は前記1(二) のとおりであり、差止請求や損害賠償請求の主体についても、前記1(三)のとおり右旧 法1条1項1号及び2号の場合とは異なる観点から判断されるものであるから、原告の右 主張も、また、失当というべきである。」