・東京地判平成11年7月23日  「Cutie」事件。  原告(竹井機器工業株式会社)が、被告(コダック株式会社)が被告標章「Qt」を付 したレンズ付フィルムを製造、販売する行為が、原告が原告商標「Cutie」について 有する商標権を侵害すると主張して、原告が被告に対し、損害賠償を請求した事案である。  判決は、以下のように述べて、両者は類似しないとして、その請求を棄却した。  「被告標章は、前記のとおり、欧文字の『Q』及び『t』との印象を与える図形から構 成されるが、それぞれの図形は、一部に奇抜な形状を用いたり、水玉や縞模様による装飾 を施したりして、全体としては、やや統一性に欠け、多様性を重視したような図柄が選択 され、そのために、『にぎやか』、『はなかや』あるいは『雑然とした』印象を与え、主 に若者に対し、強い訴求力を持つものとなっている。  そうすると、本件登録商標が、さほど特徴があるとはいえない欧文字の『Cutie』 からなるのに対し、被告標章は、前記のような特徴を備えた特有の図形からなるものであ り、両者は、その外観において著しく異なり、前記取引、広告等の状況等を考慮すると、 一般消費者が、商品の出所について、誤認混同する恐れはないと解される。したがって、 被告標章は本件登録商標と類似しない。  確かに、被告標章からは『キューティ』の称呼が生じ、被告標章と原告登録商標とは称 呼において類似するといえるが、両者の外観における相違点が著しい点に照らすならば、 称呼が類似する点を考慮してもなお商品の出所の誤認混同を来すことはないと解され、し たがって、前記の判断を左右するものとはいえない。  また、被告は、被告商品の広告において、装飾を施さない欧文字『Qt』を用いたりし た例があるが、この点も、格別、前記の判断を左右するものではない。さらに、被告は、 被告商品の広告において、『キュートな』との点を強調している例があるが、そのような 修飾語が付加されたとしても、被告標章に『キュートな』との観念が生ずるとまではいえ ない。したがって、このような事情も、前記の判断を左右するものとはいえない。」