・東京地判平成11年8月27日判決速報294号9016  「出版社システム」事件。  原告(株式会社システムヤマト)は、コンピューターソフトウエアの開発、製作、販売 等を目的とする株式会社であり、日本語データベースソフト「NOA2000R」上で作 動する、出版社の業務を管理するためのアプリケーションソフトである「出版社システム」 (以下「本件ソフト」という。)の著作者である。なお、訴外落合毅(以下「落合」とい う。)は、システムエンジニアであり、平成三年八月まで、原告において、本件ソフトを 含むコンピューターソフトウエアの開発等に従事していた。  被告(システム工房寿こと辻寿保)は、平成三年一月ころから同年八月ころまで原告に 勤務し、営業を担当していた。被告は、原告を退社した後、落合に発注して、NOA20 00R上で作動する、出版社の業務を管理するためのアプリケーションソフトである別紙 目録記載のソフトウエア(以下「被告ソフト」という。)を製作し、販売した。  本件は、原告が、「被告ソフトは、被告が本件ソフトを無断で複製して内容に一部変更 を加えて販売しているものである。」と主張して、被告ソフトの複製等の禁止を求めた事 案である。  判決は、両者を比較したうえで下記のように述べて、原告の差止請求を認容した。  「以上述べたところに、右1で認定した事実と弁論の全趣旨を総合すると、被告ソフト のうち本件ソフトを複製改変した部分は、本件ソフトを複製又は翻案したものであると認 められる。  (二)前記第二の一2及び4のとおり、(1)被告ソフト及び本件ソフトが、いずれも 日本語データベースソフトであるNOA2000R上で作動するものであること、(2) 被告ソフト及び本件ソフトは、いずれも出版社の業務管理用のソフトウエアであることか らすると、被告ソフトと本件ソフトとでは、類似する点が存することを避けることができ ないが、右1で認定した被告ソフトと本件ソフトとの共通点は、右の意味における類似に とどまらないというべきであるから、右(1)(2)の事実は、右(一)の認定を覆すに 足りるものではない。」