・東京高判平成13年5月29日  「タカラ本みりん入り」事件:控訴審。  控訴人・原告(宝醤油株式会社)は、被控訴人・被告(寳酒造株式会社)が被控訴人の 業務に係る商品である「だし」、「つゆ」(被告商品)に、「タカラ本みりん入り」の表 示がある原判決別紙第1ないし第3目録記載のラベル(被告各標章)を付して販売する行 為が、控訴人の有する本件各登録商標(指定商品を「醤油」、「だしつゆ」等とし、「宝」、 「TAKARA」、「タカラ」等の標章からなる原判決別紙商標公報記載のもの)と類似 の商標の使用に当たり、控訴人の本件各商標権(原判決別紙商標権目録記載一ないし九) を侵害し、かつ、控訴人の周知の商品表示である本件各登録商標と類似の商品表示を使用 した商品の譲渡に当たり、不正競争防止法2条1項1号に該当すると主張して、商標権及 び不正競争防止法に基づいて、被告商品の販売の差止め並びに損害賠償金及びこれに対す る本件訴状送達の日の翌日から民法所定の遅延損害金の各支払を求めた。  原判決は、被告各標章における「タカラ本みりん入り」の表示部分の表示態様や被控訴 人が被控訴人の業務に係る商品である「本みりん」に使用している「タカラ本みりん」の 商標は、「本みりん」に関するブランドとして、日本国内において著名である事実等を認 定した上で、被告各標章における「タカラ本みりん入り」の表示部分は、専ら本件の被告 商品(「だし」、「つゆ」)に「タカラ本みりん」が原料ないし素材として入っているこ とを示す記述的表示であって、商標として自他商品の識別機能を果たす態様で使用された ものではなく、商標ないし商品表示の使用に当たらず、また、上記の表示は、原材料を普 通に用いられる方法で表示する場合(商標法26条1項2号)に該当するので、本件各商 標権の効力が及ばないと判断し、控訴人の本訴請求はいずれも理由がないとして棄却した。  本件判決は、「被告各標章中の「タカラ本みりん入り」の表示部分は、専ら被告商品 「だし」、「つゆ」に「タカラ本みりん」が原材料として入っていることを示すものであ ることは明らかであるというべきである。被控訴人の商標「タカラ本みりん」が商品「本 みりん」につき著名であることから、「タカラ本みりん入り」の表示部分が被告商品「だ し」、「つゆ」について顧客吸引力を有しているとしても、この表示部分自体は、被告商 品「だし」、「つゆ」の原材料として被控訴人の「タカラ本みりん」が用いられているこ とを表示する態様のものであり、その原材料に関する顧客吸引力を利用するにすぎず、そ れを超えて商品「だし」、「つゆ」について、その出所を表示し、自他商品の識別機能を 果たす態様では使用されておらず、商品「だし」、「つゆ」に係る商標ないし商品表示に は当たらないと解されるのである。」として、控訴を棄却した。 (第一審:東京地判平成13年1月22日)