・京都地判平成13年12月20日  コルチャック先生事件T:第一審(京都地裁平成11年(ワ)第111号)  本件は、原告が、「戯曲『コルチャック先生』ある旅立ち」と題する戯曲が原告の 著作物「コルチャック先生」(朝日新聞社)の翻案であり、また、本件戯曲中の個々 の翻訳が原告著作物中の翻訳の著作物の複製であるとして、著作権法112条1項に 基づき、本件戯曲の複製、出版又は頒布の停止を求め、また、民法709条、719 条に基づき、著作権侵害による損害賠償として1000万円等の支払を求めた事案で ある。  判決は、「本件戯曲と原告著作を全体として対比すると、原告著作における資料の 取捨選択及び文章表現の工夫の結果としての創作的な表現の本質的な特徴と本件戯曲 の劇的効果の観点から工夫された表現の間に同一性があるとはいえず、本件戯曲に接 する者が原告著作の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるということは できないから、本件戯曲が原告著作の翻案であると認めるには未だ十分ではないとい わざるを得ない」などとして、原告の請求を棄却した。  なお、判決は、「本件戯曲は、原告著作の翻案であるということはできないが、本 件戯曲中の翻訳には原告著作中の翻訳文のほぼ複製といってよいものがあることから、 争点(2)について検討することとする」として、争点(2)(原告は被告らに原告著作の 利用を許諾したか)についても検討したうえで、「翻訳部分の使用も含めた包括的許 諾がされたものと認めるのが相当」とした。 (控訴審:大阪高判平成14年9月18日) ■争 点 (1) 本件戯曲は原告著作の翻案に当たるか、また、本件戯曲中の個々の翻訳が原告著 作中の翻訳の複製権侵害に当たるか。 (2) 原告は被告らに原告著作の利用を許諾したか。 (3) 被告らに損害賠償義務が認められた場合、賠償すべき額。